フィガロの結婚
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30部分:第三幕その七
第三幕その七
「婚礼の時になったら呼ぶがいい」
「わかりました」
伯爵は腹立たしげにその部屋を後にした。クルツィオも彼について場を去る。後は四人とバジーリオだけが残っていたがそのバジーリオも気を利かしてかバルトロにこう声をかけてきたのだった。
「私はこれで」
「何処に行くのだ?」
「急用を思い立ちましたので」
右目でウィンクしてから彼に述べたのだった。
「ではこれで」
「済まないな」
「いえいえ。お気遣いなく」
にこりと笑ってバルトロに言葉を返した。
「それでは」
「うん。それじゃあな」
バジーリオも場を後にすると残るはよ人だけになった。マルチェリーナは四人になると早速バルトロに対して声をかけてきたのだった。
「ねえあなた」
「何だい?」
早速よりを戻してきている。マルチェリーナはバルトロに寄り添ってきている。
「ここでフィガロが子供だってわかって」
「うむ。そうだな」
バルトロも満面の笑顔でマルチェリーナに対して頷く。
「それでは今日は」
「ええ。婚礼ね」
「あの時は正式に結婚してはいなかった」
「忘れていたのね」
「それがそもそもの間違いだったのだ」
今更であるがこんな話をするのだった。
「だからだ。ここはだ」
「ええ。私達もね」
「そうするべきだ」
「それでフィガロ」
もう完全に母親の顔になっていた。
「あのお金だけれど」
「お金?」
「あんたのものよ。息子にお金を貸す親はいないわ」
「じゃあいいのかい?」
「いいのよ。親子じゃない」
だからいいというのだった。
「だからね。取っておいて」
「有り難う、お母さん」
「話は幸せに終わるのね」
スザンナはもうそれを確信していた。
「よかったわ。これでね」
「さて。それではだ」
バルトロが三人に声をかけてきた。
「早速その準備に入ろう」
「そうだね」
フィガロが父の提案に頷いた。
「時間もないし。それじゃあ」
「急いで楽しもう」
バルトロの今度の言葉はこれだった。
「それでいいな」
「ええ。それじゃあ」
「そうしましょう」
マルチェリーナとスザンナがバルトロの言葉にそれぞれ頷く。こうして今二組の夫婦が生まれることになったのだった。
スザンナはバルトロ達と別れるとすぐに夫人の部屋に向かった。そうしてそこで夫人と今までのこと話すのだった。
「そうだったの。バルトロさんが」
「はい。フィガロのお父さんでした」
まずはバルトロのことを話していた。
「そしてマルチェリーナさんが」
「それは思いも寄らなかったわ」
夫人ですらそうであったのだ。
「まさか。フィガロが」
「御二人がかつて親密だったのは知っていましたけれど」
「ええ。それはね」
夫人もそれは知っていたのである。
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