ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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一部:超絶美少女幼年期
四十一話:古代遺跡にて
目的完遂のために殺戮機械と化した私は、立ち塞がる魔物をおニューのチェーンクロスでギャリギャリジャラジャラと引き裂き薙ぎ払って、そのあまりの気迫のためか気持ちエンカウント率が下がったような錯覚を覚えつつ、順調にラインハット北東の古代遺跡に到着しました。
余裕があれば遺跡の様子なんかも観察していくところですが、タイムアタック的な心境の現在、当然そんな余裕は無いので、さっさと遺跡の中に侵入します。
遥か下に見下ろせる場所で、パパンが魔物と戦っているのが見えます。
次々に斬り伏せてはいますが、数が多くてなかなか進めずにいるようです。
よし、ゲーム通り!
まだまだ、間に合う!
でも、急ぐ!
も、宝箱とか、いいわ!この際!
モブの誘拐犯どもが何考えてるかとかも、いいわ、この際!どうでも!
と、普段ならば決して忘れない、合法的略奪やイベント網羅の精神すら今は忘れ、ただひたすらに、奥へ、奥へと進みます。
ほとんど直感のように、でも実際は過去の記憶をたどってたと思われる感じで間違いなく正解ルートを選び取り、程なくパパンの元にたどり着きました!
やった、間に合った!
気配を察してか、私のほうを振り向くパパン。
その背中に、襲いかかる魔物。
「おとうさん!」
思わず、叫ぶ私。
私の姿を確認するかしないかの刹那、パパンは振り向き様に魔物に斬り付けて、絶命させます。
私の声を聞いてから反応したのでは無いですね。
完全に気付いてて、私を見る動作も、かかってこられる前に間に合うとわかってて組み込んでましたね!
今倒した魔物で一段落ついたのか、パパンが剣の汚れを拭い、私に向き直ります。
「ドーラ。……どうして、来たんだ」
……うっ。
ですよね、そうですよね!
言い付け、破っちゃったもんね!
結果を知らなければ正しい行動とは自分でも思えないだけに、言い訳のしようもございません!
「……ごめんなさい」
言い訳が出来ないなら、謝ってしまえばいいじゃない!
ということで、素直に謝ってみます。
溜め息を吐く、パパン。
「……来てしまったものは、仕方が無い。説教は後だ。ヘンリー王子を、助けるぞ」
「……はい!」
全てが終わってからなら、説教でもなんでも受けますから!
被虐趣味は全く無いけど、無事にお説教を受けられる日を思うと、楽しみですらありますよ!
脳裏を過ったなにかの影は、瞬時にシャットアウトした!!
ゲームではここから、ゲーム的なご都合により、主人公が父親を後ろに引き連れて先導して進むことになりますが、まあそんなことは無く。
パパンの後について水路にあった筏に乗り、遺跡のさらに奥へと向かいます。
水路が途切れた先、ヘンリーが閉じ込められている、牢獄がありました。
「王子!」
パパンの呼びかけに、ヘンリーが顔を上げます。
「パパス。きたのか。……あそこに、いろといったのに」
こうなると、知ってたはずですが。
一応了承したとは言え、パパスを救うためにも考えてた長年の計画が崩れて、思うところもあるんでしょうね。
後でフォローしとくか、そこは。
「今、助けます!……ぬっ。ぬおおおおーー!!」
細かいことの前にまずは牢獄の扉を掴み、力任せに引き剥がして抉じ開けるパパン。
例えばこういうの、私でもレベル上がってステータスが上がれば、出来るようになるんだろうか。
……早く、カギは入手するようにしよう!
視覚的な問題上!
「さあ!行きますぞ!」
この後のイベント、ちょっと見たいけど、たぶんやらないんだろうなあ。
「……どうして、きたんだ。おれのことなんかよりも、まもるべきものが、あるだろうに。おれなんかのために、きけんに、さらして。……ばかじゃないのか?」
……ヘンリイィィィィ!!
わかるけど!
言いたいことは、わかるけど!
もうちょっと、言い方ってもんが
「王子!!」
パパンの鉄拳が、ヘンリーの頬に炸裂します。
……お、おお、痛そう。
加減はしてるんだろうけど(してないと軽く死ねるし)、超痛そう!
バキッていった、バキッて!
「王子!あなたは、父上のお気持ちを、考えたことがあるのか!?父上は、父上は……」
「……」
拳を握り締めて逡巡するパパン、反論せず文句も言わず、黙り込むヘンリー。
「……さあ。ともかく追っ手の来ないうちに、ここを!」
言いかけた言葉は飲み込み、意識を切り替えて促すパパン、黙って応じるヘンリー。
ちょっと違ったけど、見れたけど、なんだかなあ。と思いながら続く私。
先を行くパパンが、私たちを手で制します。
「待て……くっ!早速現れたか!ドーラ!王子を連れて、先に行け!」
「はい!」
なんとなく反応の鈍いヘンリーの手を引っ張ってモモを連れ、筏に乗って漕ぎ出す私。
パパンが戦う音を背中に聞きながら、十分に離れたところで口を開きます。
「マゾなの?君」
「ばっ……、違うに決まってんだろ!!」
決まってるとか、知りませんし。
本気で思ったわけでもないけど。
「あんなこと言って、怒られるに決まってるじゃん」
「……助けられないのか?本当に」
「うん。本当に」
「……俺のせいで」
「君のせいじゃないよ。わかってるくせに」
時間があれば、聞いてあげてもいいんだけど。
今は無いから、後でね!
「……なあ、なんでそんな、平気そうなんだ?お前の、父親だろ?」
それを、今、聞くかなあ。
心が弱ってるんだろうけど!
わかるけど!
時間が無いので、ひと思いに殺ります!
「平気だと、思うの?」
「……思わねえけど。落ち着きすぎだろ」
「今は、他に、やることがあるの。のんびりくよくよ考えていい時間は、今じゃ無いの」
「……だけど、そんな……簡単に……」
「君に、ゆっくり考えられる時間をあげられないのは、悪いと思うけど。私はもう十分考えたし、諦めたわけじゃ無い。今は、どうにも出来ないだけ」
「今は……?」
「それも、後で説明するから」
だから、今は、黙れ!
「今は、私を信じて」
この非常時に、そんな重い説明とか勘弁してください。
「……わかったよ。悪かった」
「わかればいいよ」
ヘンリーが、筏の櫂に手を伸ばします。
「……代わるよ」
「レベル1でしょ?無理しなくていいよ」
「……」
レベルの数字がわかるわけじゃ無いけど、戦闘経験皆無な事実の比喩的表現ですね!
力のステータスも、相応に低いでしょう!
イケメンを気取るにはそれ相応の力が必要なんだよ、チミィ!
「あ、顔。治そうか?それなら、その間だけ代わって」
「……いいよ。どうせ、またやられるんだろ?魔力無駄にすんな」
「それもそうだね。あ、君はひたすら身を守っててね。ある程度、時間稼がないといけないから。無理しないで、早めに倒れていいから」
「……わかった」
この程度のことで優位に立ったとか思わないけど、現状、戦力としては確実に私が上だからね!
素直なのは、いいことだね!
宿敵視点だとあまり喜ばしくないが、こういうときは、コイツが馬鹿じゃなくて良かったと思います!
水路のもうひとつの終着点、遺跡の入り口付近にたどり着きます。
「じゃあ、行こうか。死ぬなよ!」
「……努力はするよ」
「それは私もか。モモ、行くよ!」
「ニャー!」
遺跡の入り口での、今回最後の大仕事!
強敵を相手に、パパンが追い付くまでの、時間稼ぎに挑みます!
後書き
次回、シリアス注意です。
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