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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第二十七話 反撃開始

ミネルバがベルリンに辿り着いたときには既にそこは死屍累々の死戦場だった。アークエンジェルと連合が戦っている上に、ザフトの前線司令部とは連絡が取れず、情勢は混乱している。

「アークエンジェルもこの戦闘に介入してるんですか!?」

アスランはその報告を聞いて驚愕する。他のMSパイロットも顔を顰めたりと苦い顔をするばかりだ。

「まあ、何にせよ―――俺たちの敵は連合だ」

『そうね―――思惑がわからない以上、共闘は難しいけど無視ってわけにもいかないわ』

ハイネが悪くなった場の空気を少しでも弛緩出来るようにするためにそう言う。グラディス艦長はそんな中でも自分の役割を果たす為に軍務を全うするように命じた。しかしながら現在出撃できるMSの数は少ない。
シンのインパルス、アスランのセイバー、ハイネのグフの三機のみだ。レイやルナマリアのゲルググも一応は出撃が可能なものの修理が間に合っておらず、今の状態で出撃しろと言われても難しいだろう。

「チッ、俺のゲルググの修理が間に合っていれば……」

マーレは悔しそうに自身が出撃できないことを嘆く。アークエンジェルが介入していることにアスランは躊躇う様子を見せるが、敵が連合であることに違いないと、そう思い直して出撃の準備を整える。

『とにかく、連合の大型兵器は街を壊滅状態にしているわ。今すぐ発進して頂戴』

「了解しました」

「OKだ。叩き潰してやるよ」

「分かりました」

三者三様に返事をし、出撃する。
そうして出撃したMSの中で最も機動力の高いセイバーが一番最初に接近する。

「こちらはザフト軍特務隊フェイスのアスラン・ザラだ。これより連合軍の敵大型MSに攻撃を仕掛ける!なお、アークエンジェルとその部隊に告げる。そちらが撤退しない場合、敵と認識し行動させてもらう」

回線を開き、警告する。まだ割り切れたわけではない。しかし、決断しなければいけないのだ。故にキラやカガリも敵として扱う。こちらから討つとはいえない。だが、邪魔をするなら討たなきゃいけない。

『アスラン!?そんな、今の僕達の目的は同じだろう!?』

確かに、お互いの目的はあの連合の大型兵器を止めることだろう。とはいえ今彼等が協力関係になったとしても彼等もまたザフトにとっては倒すべき敵であることには変わりない。彼等の立場は未だテロリストなのだから。

「お前達のしていることは本当に正しいのか?お前達の行動で虐殺を止めたからってそれは認められる行為なのか!」

『少しでも多くの命を救おうとすることの何が悪いって言うんだ!』

「確かに、お前達がこの破壊を止める為に戦っていることは分かる。無意味だとも言いはしない。だが、それは本当に今お前達がすべき事なのか!」

『救える命はまだあるはずだ!なのにそれを見捨てろって言うのか、君は!?』

会話の応酬をしながらもセイバーもフリーダムもデストロイに対して攻撃を止めない。しかし、両者の連携など無く、お互いに距離を取って攻めるだけで、まるでその距離が彼等の今の心の距離感を表すかのようだ。
セイバーの収束ビーム砲がデストロイに向かって放たれるが、その砲撃はデストロイに届く前に霧散する。

「何だと!?」

『アスラン、今は奴を落とすことに集中しろ!アークエンジェルの奴等は無視しとけ!』

遅れてやってきたハイネがアスランを説得する。グラディス艦長は無視は出来ないといっていたが、だからといってこっちから積極的に関わる必要も無い。警告はしたのだ、これ以上こちらからアクションを行う必要は無いだろう。

『ハイネ!懐に潜り込めば奴に有効打を与えれるかもしれない!』

シンがIフィールドに弾かれるビームを見て、そう判断し接近戦を仕掛ける。一気に戦場に介入してきた機体が三機も現れ、流石にそれら総てに対応することは出来ず、インパルスの接近を許してしまう。

『貰った!!』

『その程度でやらせるかよ!』

しかし、インパルスの攻撃はデストロイの陽電子リフレクター―――シュナイドシュッツSX1021によって防がれる。

『何!?』

陽電子リフレクターはビームサーベルやビームコーティングをした兵器などなら突破できるはずだ。しかし、結果はどうだ?ビームサーベルは陽電子リフレクターを突破し切れなかった。

「どういうことだ!?アレは陽電子リフレクターじゃないのか……?」

『そうじゃないみたいだぜ、インパルスのビームサーベルを見てみろよ』

アスランが驚いていると、ハイネが理由を察したのかシンのインパルスが持つビームサーベルを見るように言う。

『ビームが……減衰している!くそッ、エネルギーも!?』

シンが自機のビームサーベルが減衰しているのを見て、距離を取る。ビームサーベルは持続的にエネルギーを供給し、その威力を維持する装備だ。しかし、そのビームサーベルの威力が減衰し、元の出力に戻そうとして自動的にエネルギーをより多く供給されていたのだろう。

「これは一体……?」

『さっきからビームを弾く膜みたいなのといい、どうやらビーム兵器全般に通用するみたいだな。全く、連合の奴等、何てもの造ってくれやがる!?』

ネタがわかれば単純な話。Iフィールドは外部にだけ存在する膜ではない。内側から外側に向かって広がっていくように展開している、まさに領域と呼べる存在なのである。それは即ち、近づけば近づく程Iフィールドはその効果を増す。その結果、ビームサーベルは威力を減衰させ、陽電子リフレクターでも防げる程度の威力となったのだ。

「厄介だな―――接近戦でもまともに攻撃を食らわせれないとなると本当にどうしようもないぞ」

『いや、ビームサーベルは防御したって事は、それは防がないといけないってことだ。それに、こういう分野は―――俺の専門分野だぜッ!!』

シールドからビームソードを抜き去りデストロイの距離を詰めようとする。対艦刀といえるグフのビームソードはこういった対ビーム兵装に対し有効だ。たとえPS装甲関係だったとしてもビームソードの刃の部分から現れるビームによって減衰はしていても突破はできる。
スレイヤーウィップもビーム兵装でない上にPS装甲系も無視できる武装だ。ある意味グフはこういった対エース戦に向いている機体なのだろう。

「ハイネは正面から攻撃を仕掛けるようだ。シン、俺たちは奴の死角から仕掛けるぞ!ハイネを援護しろ!」

『わかってますよ!』

彼等の連携によってデストロイは明らかに動きを鈍らせる。キラはその様子を見てアスランと今の自分との遠さを感じずにはいられなかった。あれ程共に行動してきた彼が、今やザフトのパイロットとうまく連携をこなす。自分との意見も相容れない。

『だけど……今は止めないと』

何故わかってくれないんだと、キラはアスランに対してそう思うが、自分もアスランの事をわかろうとしてなかったんじゃないのか。そんな詮無いことを考えながら戦いに介入していった。







『やるねぇ、アークエンジェルの諸君!特に君は相当できるじゃないか!』

「こちらとしても、そう簡単に落とされるわけには行かないのでねッ!」

バルトフェルドのムラサメと、ネオのウィンダムが正面からぶつかり合いながら戦う。互いに攻撃は逸らし、防ぐ。しかし、専用機として改造されているウィンダムとノーマルで色々と補って修理したばかりのムラサメでは明らかにウィンダムの方が有利だと言えた。

「これだけの技量を持っていながら、何故こんな大虐殺に手を貸すんだい?」

『仕方ないだろう?ここは戦場で俺は軍人だ。お上の命令には逆らえないのさ』

接触通信でバルトフェルドはネオに話しかけるがネオも適当に会話を受け流す。

「戦場にした、間違いじゃないかい?少なくとも、この町はここまで酷くなかったと思うんだが」

『痛いとこを突いてくるな~。でも、こうでもしないと俺もアイツ等も生き残れないのさ……』

「悪いが、俺達も必死なんだ。止めさせてもらうぞ」

距離を取り、MS形態のままミサイルを山なりに発射する。

『チッ、その状態でも発射できるのか!?』

データで見たときはそんな資料見た覚えは無いと思いつつも、咄嗟に回避するネオ。所詮は山なりに動いていくミサイル。緩やかなその軌道ではウィンダムに当てれはしない。
しかし、ミサイルはあくまでも狙いを逸らす為に放ったのだろう。MAへと変形し、背部スタビレーターに装備しているビーム砲を放つ。だが、それすらも躱すウィンダム。とはいえバルトフェルドも躱すであろう事は予測していた。

「こいつで、どうだッ!」

72式改ビームライフル『イカヅチ』を放つムラサメ。これには流石にネオも対応しきれず頭部を貫かれる。普通ならセンサー類の殆どを失い、これ以上の戦闘は不可能と言えるだろう。しかしだ―――

『教えてやるよ―――俺はな、不可能を可能にする男なんだよォッ!!』

「何だとッ!?」

見えないであろう視界から放った反撃の一撃。それはコックピットに直撃こそしなかったものの、当てずっぽうだとは思えないほど正確な射撃だった。ムラサメの装甲の薄さが仇となり、墜落していく。姿勢制御を無理矢理しながら落下をなんとか押さえ込み、MS形態に戻る事でバランスを保った。

「なんてパイロットだ。油断してたら確実にこちらがやられてたな」

ある意味、乗っていたのが専用機ではなく通常のムラサメだったのも良かったのだろう。普段とは違う微妙な違和感のお陰で直撃せずに助かった部分もあるのだろうから。
相打ち、いや被害を見ればこちらの敗北と言ってもいいかもしれない。何せこちらは二機のムラサメを撃墜された上にバルトフェルドの乗っているムラサメもこれ以上の戦闘は難しい。それに対して相手のウィンダムは頭部こそ撃ち抜き、戦闘力は下がっただろうが、それでも戦闘自体は可能なのだ。とはいえ敵のウィンダムも撤退した。これ以上の戦闘は互いに無理なのだろう。

「戦場で『次』なんて言葉は余り使いたくないが―――次にあったときは討たせても貰うぞ」

そう言ってムラサメは撤退していった。







『これでぇッ!!』

アビスの一斉砲撃が狙いを定め、アークエンジェルにぶつかる。

「クッ、これ以上艦を狙わせるわけには行かない!二機とも私について来い。あのMSを倒すぞ!」

『『ハッ!』』

カガリはアークエンジェルが被弾している状況を見て、アビスを止める為に行動する。ストライクルージュを駆り、ビームライフルを撃ちながらこちらに気を引くようにする。

『ハッ、邪魔すんなよッ!』

アビスの注意がこちらに引かれ、目立っているストライクルージュを落とそうと三連装ビーム砲の二つで計六射の射線がルージュを襲う。放たれるビーム砲を避けきれず、一部の攻撃をシールドで受け止める。

「アアゥッ!?」

『カガリ様ッ!』

護衛についている二機のムラサメがミサイルを放ち攻撃する。

『ヘッ、そんなもん効くかよ!』

アビスはミサイルをステップで躱す。その瞬間を狙い、もう一機のムラサメがビームサーベルで切りかかる。

『落ちろッ!』

『あんたの方がなッ!』

ビームランスを横に構えて、ビームサーベルを防ぐ。ビームコーティングがされたビームランスはビームサーベルを受け止め、そのまま背部の可動式2連装ビーム砲でムラサメを撃ち抜こうとする。

「やらせるかッ!!」

しかし、横合いからビームサーベルでストライクルージュが攻撃を仕掛けた為、アビスは肩のシールドで防ぐものの吹き飛ばされる。

『テメエッ、舐めやがって!』

吹き飛ばされつつも肩の四門の連装砲を放つ。ストライクルージュはPS装甲によって防ぎきるものの衝撃を殺すことは出来ず、そのまま吹き飛ばされる。

『貴様ッ!』

もう一機のムラサメがビームライフルを放つ。今度こそ回避不可能だと思われたが、アビスはビームランスを両手で持ち、回転させることでビームを弾いた。

『何だと!?』

『こういう使い方もあるってねッ!』

ビームランスを咄嗟に盾代わりにするというトリッキーな使い方に驚愕し、その隙を狙われアビスの最強の武器であるカリドゥス複相ビーム砲によって今度こそ撃ちぬかれる。

「クソゥ、お前ェッ―――!!」

カガリがシールドを正面に構えながら突撃する。アビスが迎撃しようと2連装ビーム砲を放つが、それを機動力を生かしたまま、逆に加速して回避し、距離を詰める。一歩間違えればそのまま掠めるだけで撃墜されるような軌道に流石のアウルもその強行突破に驚くが、ビームランスを持ち直し、待ち構える。
しかし、ストライクルージュの奇行とも取れる行動はそれだけで収まらない。ビームランスの攻撃範囲に届ききる前に何とシールドを投げつけてきた。

『なッ!?』

シールドはビーム兵器を防ぐ為に最も有効な防御兵装だ。それを自ら武器として投げ棄てるなど自殺行為だといえる。実弾兵装が多かったであろう前大戦ならまだPS装甲があるからわかるが、アビスはビーム兵器の方が多いのだ。
だが、だからこそ、その奇策は成功する。そんなことするはずも無いという心理を逆に突いた攻撃だ。結果、アビスの判断は一瞬遅れ、それでも質量の大きいシールドをそのまま受け止めるわけにはいかないとビームランスで弾く。その弾いた瞬間を狙い、ストライクルージュはサーベルを大きく振りかぶり切り裂いた。

『クッ、畜生ッ!?』

コックピットにこそ命中しなかったがアビスは完全に戦闘不能となり地に伏した。

 
 

 
後書き
おまけ

クラウ「そういえばさ、グラスゴー艦長って娘さんいたんだっけ?」
グラスゴー「確かにいるが、それがどうした?」
クラウ「いや、折角ドイツに行くんだからエーデルヴァイスの花でも贈ったらと思っただけだよ」
ルドルフ「意外に美しさというものを心得ているじゃないかクラウ!そうだな、確かにドイツに行くのならエーデルヴァイスだろう。この僕に劣るとはいえ、あれほど美しき白の花はそうそう無いさ!」
グラスゴー&アレック「「………わからん」」

ドイツの花と言われると良くエーデルヴァイスが上げられます。気高い白の花とも呼ばれ、歌の一つにもなっていますね。まあドイツの国花じゃないんですけど(笑)
ちなみにドイツの国花は矢車菊です。日本の国花が菊ということから親近感が沸きます。


アビスがビームランスをまるでゲルググのナギナタのような使い方をした!実は作者はアビスというかセカンドシリーズ全般が好きです。一箇所に特徴を持たせたガンダムって感じで。とはいえアビス、三対一だったとはいえカガリに敗れました……。 
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