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MASTER GEAR ~転生すると伝説のエースパイロット!?~

作者:小狗丸
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025

「オラオラ! 艦には近づけさせないぜ! このクソ蜂共!」

 ハジメがサイクロプスのコックピットでリンドブルムの名前を呟く数分前、エイストはリンドブルムに攻めようとする蜂型のゴーレムと戦っていた。

「くたばれっ!」

 ザシュ! ザシュ!

 エイストが乗るアンダーギア、オルトロスが両手に持つ二本の実体剣を振るい、左の剣が蜂型のゴーレムの首をはね、続いて右の剣が胴体を縦に切り裂く。体を切り裂かれたゴーレムは活動を停止し、宇宙の闇に堕ちていった。

「おしっ! また一体撃破! さあ次は……おっ?」

 ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブッ!

 何体ものゴーレムを撃破したオルトロスを驚異と判断したのか、十数体のゴーレムがエイストを目掛けて飛んでくる。それを見てエイストはオルトロスのコックピットで不敵な笑みを浮かべる。

「はっ! 団体様のご到着かよ! ようやく俺様の凄さに気づきやがったか?」

 軽口を叩きながらもエイストは、両手で左右のレバーの隣にある二つのキーボードを素早く叩いて操作をする。

「安心しろよ。歓迎の準備はできているからな。……オルトロス!」

『……!』

 エイストの指示に従いオルトロスの両肩、「双頭の猟犬」の機体名の由来である猟犬の頭を模した肩アーマーが口を開いた。

「吼えろぉ!」

 ドバン!

 肩アーマーの猟犬の口内、そこから顔を出したビームの発射口が無数の光の散弾を広範囲に吐き出し、オルトロスに迫ってきていたゴーレムの群れを瞬時に金属片へと変える。

「ハッハッハー! 見たかクソ蜂共! おいリンドブルム、こっちは片付いた。そっちは……ん?」

 ツイン・ハウリング。射程は短いが効果範囲と威力は申し分ないオルトロスの必殺兵器を自慢するように笑っていたエイストは、リンドブルムがそれまで行っていた砲撃を止めて船体をどこかに向けて動かしているのに気づいた。

「リンドブルム? 一体どこに行こうとしているんだ? おい、ブリッジ! どうしたんだ?」

 エイストがリンドブルムのブリッジに通信を送ると、リンドブルムの操舵を担当しているフィーユの焦ったような、あるいは困惑したような声の通信が返ってきた。

『エイスト大尉ですか? そ、それが突然リンドブルムが勝手に動き出してコントロールが効かないんです』

「何だと? ……いや、待てよ? その方向は確か……」

 エイストはリンドブルムの頭部が向いている方向を見て、その先に誰がいたかを思い出す。

「まさかコレ、イレブンの仕業なのか?」



 エイストがリンドブルムの異変に気づき、ブリッジに通信を送る少し前。ファム達四人はリンドブルムに迫ってくるゴーレムを撃退すべくブリッジで奮闘をしていた。

「十時の方角からゴーレムの群れが接近! これより迎撃する! ラパン少尉、船体を左に向けてくれ」

「分かりました」

「マザーゴーレムが生み出したゴーレムはほとんど撃退され、残っているのは本艦の周りにいる奴らだけか……。ルナール少尉、イレブン少将の状態はどうだ?」

「生体反応、脳波、その他の数値、全て異常ありません。戦闘続行可能です」

 ソルダがレーダーの観測と艦の火器管制を担当し、フィーユがソルダの指示に従ってリンドブルムの操舵を行い、コロネル大佐が戦況を把握しながら三人の艦のクルーに指示を飛ばして、ファムが離れた場所で戦っているハジメの状態を確認する。

 これが彼女達四人の戦闘時における役割分担であった。

 リンドブルムの砲撃とエイストが乗るオルトロスの活躍により兵隊蜂のゴーレムは次々と撃破されていき、それを見たコロネル大佐は僅かに息を吐くとすぐに表情を引き締める。

「このままいけば今いるゴーレムは全て倒せるだろうが、大本であるマザーゴーレムを倒さない限りこの戦いは終わらない……。さて、どうする?」

「イレブン少将は迎撃艦隊を帰した後、何とかする方法ならありますって言っていましたけど、一体どうするつもり……えっ!?」

 ゴゥン……。

 ファムが首を傾げながら言ったその時、突然リンドブルムが砲撃を止めると船体を大きく動かした。

「え? え? フィーユちゃん? いきなりどうしたんですか?」

「ち、違う。私じゃない。リンドブルムが……コントロールを受け付けない」

 フィーユが困惑した表情でファムに答えるのと同時に今度は外で戦っているエイストからの通信が入ってきた。

『リンドブルム? 一体どこに行こうとしているんだ? おい、ブリッジ! どうしたんだ?』

「エイスト大尉ですか? そ、それが突然リンドブルムが勝手に動き出してコントロールが効かないんです」

 通信を通してエイストとフィーユが話している間にもリンドブルムは船体を動かし、やがて動きを止めると次の瞬間、

 カッ!

 リンドブルムは船体の装甲から数十本の光線を放ち、周囲にいた兵隊蜂のゴーレムの群れを全て寸分違わず貫き一瞬で消滅させる。その様子を見てファムが思わず砲撃を担当しているソルダに向かって叫ぶ。

「な、何ですか今の神業のような精密な砲撃は!? ソルダ、貴女がやったんですか?」

「い、いや、私じゃない。リンドブルムが勝手に……」

 ファムの叫びにソルダが慌てた調子で答えると、二人の頭上から聞き覚えのある声が降ってきた。

『……僕ですよ。驚かせてしまってすみませんでした』

 リンドブルムのスピーカーから聞こえてきた声は、このリンドブルムの所有者で最高の命令権を持つイレブン・ブレット少将、ハジメの声だった。

「ハジ……いえ、イレブン少将? これってやっぱり貴方の仕業なんですか?」

『仕業って……そんな言い方ないじゃないですかファムさん……。それよりこれからリンドブルムでマザーゴーレムに攻撃を仕掛けます。皆はその衝撃にそなえてください』

「攻撃って……イレブン少将、一体何を……」

「分かりました。イレブン少将、ご武運を」

『ええ、ありがとうございます』

 ファムの言葉を遮ってコロネル大佐が敬礼をしながら答えるとハジメはそう言って通信を切り、それと同時にコロネル大佐はブリッジにいる全員に命令を飛ばす。

「総員対ショック、対閃光防御! いいか? これから何が起ころうとも絶対に取り乱すな!」

(……そうはいいますけど、ハジメのことですから何かとんでもないことをしそうで取り乱さない自信がないんですよね)

 コロネル大佐の命令を聞いたファムはシートベルトで自分の体を固定しながら心の中で呟いた。 
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