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ローエングリン

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17部分:第三幕その二


第三幕その二

「そしてその汚れのない澄み切った瞳に誘われ私は」
「貴方は」
「ここに来たのだ。貴女の御前に」
「清らかな方・・・・・・」
「清らかな姫よ」
 二人はそれぞれの清らかな目線を交えさせていた。
「どうか今ここで」
「そう、今ここで」
 言葉も交えさせる。
「永遠の幸福を」
「私は」
 今度はエルザが言った。
「夢の中で貴方をお見かけし」
「あの時だな」
「そうです。あの時です」
 こう言うのである。
「そして今現に貴方が神に導かれてここにおられ」
「全ては神の御心故に」
 騎士もまた言う。
「私達は巡り合えたのだよ」
「ですが私は御名前を」
「エルザ」
 声が嗜めるものになった。
「それ以上は」
「わかってはいます」
 俯きつつの言葉になった。
「ですが。せめてこうして二人だけの時は」
「今そなたは私と共にいるな」
「はい」
「ではそれで充分ではないか。この甘い香りの中で」
 窓から入って来ている香りだった。これは窓の側にある花園からのものである。
「幸福の中にいる。私はそなたをその中で見ている」
「私を」
「私はそなたの心を知れればそれだけでいいのだ」
 これは彼の本心であるらしい、エルザにはそれはわかった。
「その純潔と清らかな心を知っている。だからこそ」
「それではその秘密は」
 どうしても抑えられなく騎士に対してまた言った。
「知られてはならないものなのでしょうか。私だけが知ってもそれだけで」
「それは」
「私は誰にも言うつもりはありません」
 これはその通りだった。彼女もまた騎士を誰よりも愛するようになっていたから。
「ですから。それは」
「そなたは私から信頼を受けている」
 じっとエルザの目を見て語る。
「私はそなたを誰よりも愛して護る」
「それは承知しています」
「ではそれでいいではないか」
 これが騎士の言葉であった。
「そなたは私のかけがいのない妻。清らかな妻」
 また言う。
「それだけで。その輝かしい青い澄んだ目を見せてくれるだけで」
「宜しいのですか」
「私にはそれだけで充分なのだ」
 騎士はまだエルザのその青い目を見詰めていた。
「王冠よりも名誉よりもその心が。清らかな吐息が」
「私の吐息も」
「私は輝きと喜びの為にここに来たのだから」
「けれど私は」
「苦しんではならない」
 エルザにこれ以上疑念を抱くことを止めさせた。
「思ってはならないのだ。このことは」
「では」
「私はそなたを誰よりも愛しているのだから」
「それは私もです。ですが」
 彼女は騎士本人に対しても思うのだった。
「貴方はとても不思議な方。貴方には奇蹟ばかりが起こっている」
「それは」
「貴方がこの上なく高貴な方なのはわかります」
 言わずともだった。その剣の腕だけではなく気高い、神々しいまでの美しさと気品。それは最早この世のものではなかったからである。
「そしてあの白鳥は」
「あれは」
「あれもまた奇蹟なのですね。貴方の」
「それはその通りだ」
 このことは騎士も何とか認めることができた。
 
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