| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

銀色の魔法少女

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三十二話 闇の書

side ALL

「一体どういうことだよ!」

 ヴィータの声が夜の街に響く。

 管理局の手を逃れるために一度別れた彼女たち。

 実際その判断は正しく、三人は無事に逃げ延びた。

 たった一人、シャマルを除いて。

「落ち着けヴィータ、焦っても何もならん」

「シグナム! だけどよ……」

「その通りだぞヴィータ、シャマルが接近されるまで気がつかなかった程の手練がいる以上、一瞬の油断が命取りになる、まずは冷静になることが先決だ」

「……わーったよ」

 ザフィーラに諭され、渋々落ち着くヴィータ。

 それを慰めるように、闇の書がヴィータに近づく。

「しかし何者だよ、非戦闘系だけどバックアップはかなり優秀なシャマルを捕まえるなんてあたしにも無理なのに」

「それは私も同じだ、クラールヴィントのセンサーからは誰も逃れることができぬはず、ん?」

 シグナムは視線を上げる。

 そこには何やらそわそわしている闇の書がいた。

「何か知って「みんなー! 遅れてごめんなさーい!」、シャマル!?」

 闇の書が退くと、遠くから走ってくるシャマルの姿があった。

「お前! 捕まったんじゃなかったのかよ!」

「はぁはぁはぁ、そ、そうなんだけど、そうなんだけど」

 息も絶え絶えに話すシャマルにイライラしつつも、なんとかそれを表に出さないように頑張るヴィータ。

「さ、先にこれを、お願い」

 シャマルは握りしめていたものを闇の書に差し出す。

 そこには銀色に光り輝くリンカーコアがあった。



side シャマル

「おーい、起きてー」

 ペチペチと誰かが私の頬を叩く。

「ん? …………あ!」

 手を手すりに縛られ、デバイスも取り上げられ、私はベッドに寝かされていた。

 騎士服は解けて、元の服装に戻っている。

 それを見て、私がどうなったのかを思い出す。

 私は頑張って抜け出そうとするけど、きっちり縛られていた抜けない。

「こらこら暴れないで、話は多分すぐに終わるから」

 多分ってなんだろう?

 そんな些細な疑問を感じつつ私は抵抗するのを止める。

「……話とは何です?」

 私は彼女を睨みつける。

 顔を隠し、バリアジャケットに身を包んだこの子。たぶん、はやてちゃんと同じくらいの歳だと思う。

「ちょっと知りたいんだけど、なんであなたたちはリンカーコアを集めてるの? あなたたちの主はそんなことする人じゃないと思うけど」

 それを聞いて、私は心臓が飛び出しそうになる。

(嘘、何で!? はやてちゃんのことがバレてる!)

 はやてちゃんが直接蒐集に関わったことなんて一度もない。

(どうして、この子ははやてちゃんのことを知ってるの!?)

 私の心を読んだように、彼女は言う。

「ああ、気にしないで、彼女のことは前から知ってただけ、ある時期から急に三人と一匹が増えたから、多分そうなんだろうなって」

(つまり、彼女ははやてちゃんの知り合いで、私も知っている人ってこと!?)

 私は記憶を探るけど、出会った人が多すぎて特定できない。

 それに彼女が変身魔法を使ってないという確証もない以上、彼女の姿をそのまま素と思えない。

「しまったなぁ……」

 私は変身魔法を使ってなかったことを後悔した。

 そうすれば最悪同じ結果になっても、はやてちゃんんことがバレることはなかったかもしれない。

(いや、私が気絶しちゃったら魔法も解けるから、同じなのかな?)

「ねえ、聞いてる?」

「ああ、ごめんなさい!」

 反射的に謝ってしまう。




「……じゃあもう一回言うけど、完成したらみんな死ぬのにどうしてリンカーコアを集めてるの?」




 私は何を言っているのか分からなかった。

「な、何を言っているの!? みんなが死ぬなんて、そんな!」

「? そっちこそ何を言ってるの? 闇の書が完成したら暴走するのが当たり前、幾多の呪いをまき散らしながらマスターしらも死に至らしめる、それが闇の書でしょうに」

 まるでそれが当然のように、彼女は言う。

「なんで守護騎士がそれを知らないのかな? ……あ、あー!! そう言えば改悪されてたんだっけ、それなら仕方ないのかな」

 改悪? それも知らない。

「まあ、それは置いといて、守護騎士全員がこうだとちょっと厄介だなぁ、皆が皆そう思ってるなら説得も面倒だし! 何より事実を知ってもマスターの侵食は止まらないし!」

 そう言って頭を抱える彼女。

(どうやら管理局の人じゃないみたいだけど、どうしたものかしら?)

 少しして、しゃがんだ体勢のままこちらに顔を向ける。

 それはグギギと効果音が聞こえそうなほど、人形じみていた。

「……ねえ、今何ページ?」

「えっと、確か320ページを過ぎてたと思う」

 白い子でかなり稼げたから。

「つまり大体半分、時間がないなぁ」

 また落ち込む彼女、だけど、何かをひらめいたようで、すぐに起き上がる。

「クリム! ちょっと来て!」

 奥からどこかで見たことがるような美女が現れる。

「――ってできる?」

「ええ、できないことはないですが、それがどうかしました?」

「ちょっと思いついたの、今すぐやって!」

「しかし、それではあなたが――」

「いいの、じゃあ始めるから!」



            そう言うと彼女は自分の胸に手を埋めた。



「ん、んん……」
 
 苦しそうな声を出しながら、手を引っ張り出す。

「あ、とは、これで!」

 そして、力強く握り潰す。

 少ししてゆっくりと開かれるその手の中には銀色のリンカーコアが輝いていた。

「あ、……これ、けっこう、…辛い」

 肩で息をする彼女。

 自分のリンカーコアを引き抜くなんて、そんな無茶をする人間は初めてだった。

「あと、お願い」

「はい、分かりました!」

 彼女はそれをお姉さんに渡して、私の横に倒れる。

「後は寝かせて……」

 そう言うと彼女は寝てしまった。

 すうすうと、静かな寝息が聞こえる。

「まったく、無茶をするんだから」

 また別の人がこの部屋に入ってくる。

「ブリュンヒルデ、彼女の言った物は用意しておいたわよ、それじゃあ私は八神家の監視を始めるから」

「ありがとうございます、フィリーネ」

 そう言うとブリュンヒルデさん(あれ? クリムさん?)は私の縄を解いて、私のクラールヴィントを返してくれた。

「これを闇の書に食わせなさい、必ず役に立つでしょう」

 私の手に、彼女のリンカーコアを握らせる。

「あの、一体どういうことですか?」

「知らなくていいことです、あなたたちは今まで通りに蒐集しなさい」

 ブリュンヒルデさんは私のことが気に入らないのか、彼女とは違う感じで話しかけてくる。



「まったく、マスターもマスターです、自分のリンカーコアを引き抜くなんてなんて馬鹿を、そんなにあの子のことが大事ですか、大体、私も最初の時以来扱いがだんだんと雑になってきているというのに、なんてうらやま――、いえ、自己犠牲もいいことです! いえ、それがマスターのいいところであって、フィリーネもマスターのことを認めているのですが、今回ばかりは――」



 その後、彼女のマスター自慢というか惚気はフィリーネさんが止めるまで続いた。 
 

 
後書き
うわー(゚o゚;;
クリム、自重しなさいよね、、、、、orz
せっかく私が拾ってあげたのに、なんであんなのになったのかな(´Д`)
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧