魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編
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第29話 高町家での日常
「なのはの事か………」
そう呟いて深く考える。
「………ハッキリ言うとなのはに対して恋人のような好意は無い。………ただ今の俺やヴィヴィオにとって欠かせない人物………と言うよりあまり想像できないんだよな………あいつがいない日常が」
「だがバルトさん、そんな関係は………」
「ああ、駄目だろうな。年頃の娘が男とその娘と同棲状態。………この先も変な噂が立ち、なのはの人生にとって確実にマイナスだろう」
「そこはちゃんと理解しているんだね。………じゃあもう1つ、なのはの気持ちは分かっているかい?」
「………ああ」
バルトもそこまで鈍感ではない。
なのはの反応や行動はアパートで生活していた時から見ていたのだ。
恐らく大体なのはがどう思ってくれているのかも何となく感じていた。
「あの子は真っ直ぐな子に育ってくれたが、中々自分の本心を話そうとしてくれない。フェイトちゃんやはやてちゃん達の様な友達が出来てからまだ良くなったけど、それまでは笑顔で何も言わなかったんだ。不満やわがままだって………」
「ほう………」
「昔、まだなのはが小さいときだったんだけど、喫茶店の仕事の前は良く海外を飛び回っていたんだ。だけどある時飛行機事故に巻き込まれてね、私は生死の境をさ迷った事があったんだ。その時、家族の皆私に付きっきりでね、小さいのに1人ぼっちにさせてしまって甘やかせる時間が無かった。だからこそ必要以上に我慢し、良い子でいようとしてたんだ」
「なるほどな、くそ真面目な性格はそこからきているのか………」
「だからなのはは本当に思っている事を口に出すのは苦手だと思う。………まあ心から話せる親友がいるだけまだマシだけどね………」
そう言って苦笑いしながらビールに口をつける士郎。
「長々と前置きを話してしまって済まないね、ここからが本題だよ。………なのはは結構負けず嫌いで頑固で我慢する子だ。だからこそあの子は一度自分の不調を誰にも話さず任務に出ていた事で大怪我をしてしまった事だってある。それも二度と空を飛べないと宣告されるほどの大怪我で。………その時の空っぽのなのはの顔は今でも覚えている。心配させまいと私達に向かって一生懸命笑おうとするんだ。だけどそのぎこちない笑顔が逆に私達には辛かった………もっと色々言って欲しかった、家族なのにそういった部分で支えとなれない、それが悔しかった………情けないけど力不足を痛感したよ」
悔しそうに言う士郎にバルトは何も言わず真っ直ぐその話を聞いていた。
「だから今のなのはには親友とはまた違う、何でも話せる支え合える家族の様な人達が必要だと思うんだ。………バルトさん、ヴィヴィオちゃんと共になのはの支えとなってくれないか?なのはが心から何でも話せる家族として…………」
「俺とヴィヴィオがか?親もできなかった事を他人の俺達がか?」
「もう他人じゃ無いよ。なのはもそう思っているだろう」
「だが俺はなのはに好意がある訳じゃない」
「分かってます、だからこれは酔った親父の親バカの戯れ言とでも思っていてください。そうなれば良いと思っただけなので。………まあなのはだってまだ19歳だし、これからも出会いは沢山あるだろうしね!」
そう言って笑いながら空になったグラスにビールを入れた。
「だが俺は見た目通りまともじゃないぞ?そんな俺で良いのか?」
「?良いのかって何かあるんですか?」
「もしかしたら殺人鬼かも知れねえぜ?」
「ああ、それは大丈夫。長年の仕事の影響でその人がどんな人物なのかは大体見て分かるから。バルトさんは確かに強そうだけど危険な雰囲気は感じないので」
「その根拠は良く分からねえが取り敢えずお礼を言っておくよ」
バルトは少し笑いながらそう答えた。
「信じてないね?これでも昔は………」
「はいはい………」
そこから始まる士郎の話を聞きながらのんびりとした時間を過ごしたのだった………
「バルト~!!」
「おおヴィヴィオ、風呂上がったか」
その後しばらくするとパジャマ姿のヴィヴィオがバルトの元へ駆けて行った。
「バルト、お酒臭い………」
「なのはの親父さんと飲んでいたからな」
「ふーん。………ねえバルトもアイス食べる?」
「甘いものは苦手だ」
「好き嫌いいけないんだ!!」
「ほう………そう言うならお前の嫌いなニンジン、ピーマン、ナスなんかも綺麗に全部食べるんだよな?」
「えっ!?………た、食べるよ!!………いつか………」
「おい、最後小さくて聞こえねえぞ!」
「まあまあバルトさんも一緒に食べましょ」
「おいなのは、だから俺は甘いもんは………」
「はいはい分かってます、分かってます。だから取り敢えずベランダの方で食べましょ」
そう言いながら文句を垂れるバルトを立ち上がらせベランダの方へ誘導するなのは。
「ったく………食えなかったらなのは責任もって食えよ」
「はいはい分かりました」
「ヴィヴィオが食べる~!!」
「お前は腹壊すから駄目だ」
「ううっ………」
「あら美由希どうしたの?」
「さっきまで一緒に食べるって言ってたんだけど………」
「そうね、あの雰囲気に入るのは気が引けるわね」
「うん、やはりなのははあの2人が良いんだな………」
「笑顔ね………」
「なのは幸せそう………」
ベランダで3人仲好くアイスを食べる姿を見て、高町家の面々はそう思ったのだった………
「う、う~ん………」
カーテンから漏れる日の光を顔に浴び、目覚めるバルト。
先日ヴィヴィオはなのはと一緒に寝ていた。
「まだ6時少し前か………眠くもねえし………仕方ねえ、少し散歩でもしてくるか………」
そう呟いて軽く動ける服装に着替える。
「あっ、おはようございます。早いですね」
「ああ、目が覚めちまってな。………少し散歩してくる」
「道大丈夫ですか?」
「ああ大丈夫だ」
「そうですか、気を付けて行ってらっしゃい」
朝、既に朝食の準備をしていた桃子に話しかけ、バルトは高町家を出た。
「ふうう………やはりミッドとは空気が多少違うな。文明レベルが低い分澄みきってるのかもしれねえな………うん?」
高町家を出て少し散歩をと思っていたバルトの足が止まる。
「これは………道場か?」
気になって来てみれば高町家の敷地内に道場があった。
「取り敢えず入ってみるか………」
そう呟いたバルトは道場の方へ向かった………
「ほうっ………」
中に入ったバルトは思わず言葉を溢した。
「剣術道場か………」
木刀や竹刀、そして防具と言った剣術道場らしい道具が綺麗に整頓されていた。
「高町家は何かの流派でもあるのか?………にしてはなのはが剣術を使うところなんて見たことねえが………そうだ!せっかくだし久々に………」
そう言ってバルトは腕輪のデバイスを起動させる。
「いくぞ、バルバドス!!」
「はぁ……はぁ……なのは速くなったね」
「相変わらず……お姉ちゃんも体力あるね……」
「当たり前よ、私だってこれでも御神流の剣士なんだから」
そう言って互いに笑顔になるなのはと美由希。
美由希の朝のランニングは日課であり、なのはも知っていたので朝起きて一緒に走っていたのだ。
「よし、それじゃあストレッチしてシャワー浴びようか?」
「うん」
「じゃあせっかくだし広い道場でしようか?」
「うん」
そう言って2人は道場へと向かった………
「あれ?開いてる。お父さんかな?」
そう呟きながら2人は静かに道場へと入っていく。
「あれ?」
「バルトさん?どうしたんだろうこんな朝早く………」
声を掛けようとした瞬間、バルトはバルバドスを展開。銀色の大きな斧が姿を現した。
「大きな斧………」
「綺麗………」
そんな驚く2人をよそにバルトは斧を振るい始める。
それはまるで舞っているかの様には流れる動きだった。銀色に光る斧が朝日を反射し、まるで銀色の閃光が走っているように見えるほど輝いて見えていた。
そしてそれが終わると正面に相手がいるように感じる様な一連の動きを始める。
「イメージトレーニングだね」
「うん、バルトさんって滅多に自主練をしないけどやっぱりこういった訓練はしてたんだね………」
目を瞑りながら想定した相手と戦うバルトに感心しながらなのはが呟いた。
「だけどあの斧ってヴォルフバイルじゃ無いよね………バルトさん、確か自分のデバイス持っていないって言ってたような………」
そんな事を呟いているとバルトの動きがピタッと止まる。
「ふう………やはりこの斧が一番………ってなのはとその姉!?」
「おはようございますバルトさん」
「おはようございます。後私の事は美由希で良いですよ」
そんな清々しい挨拶とは違い、バルトは慌てていた。
「何でお前らがここにいるんだよ!?」
「何でって私、お姉ちゃんの日課のランニングに付き合ってただけですよ」
「それで終わってからストレッチしようと道場へ来たらバルトさんがいたので邪魔にならないように見ていました」
「ちっ、見せもんじゃねえのによ………」
舌打ちをしながらそっぽを向くバルト。
バルバドスを待機状態に戻した。
「あっ、何で戻すんですか!?」
「これは軽々しく人に見せられない物だからな」
「綺麗な斧だったのに………せめてもっと見せてくれても………」
「見せ物じゃねえよ。それに早く目が覚めたから暇つぶしに少しやっただけだしな」
そう言ってなのは達の横を通り過ぎるバルト。
「バルトさん?何処へ行くんです?」
「タバコ吸ってる。体も冷えるだろうしストレッチしてさっさとシャワー浴びに行きな」
そう言って道場の横に側に備わっている扉を開け、そこある階段に腰を下ろしタバコを吸い始めた。
「バルトさん、1つ聞いて良いですか?」
そんなバルトにちょこちょことついて行き、隣に座ったなのは。
そのままバルトに質問してきた。
「何だ?」
「さっきの銀色の斧、名前何て言うんですか?」
「………」
そう聞くと黙り込むバルト。
「………あの、聞いちゃいけませんでした………?」
「悪いな、お前にもこれは話せない」
「そうですが………」
本当に悲しそうに俯くなのは。
「あのなぁ………別にお前が嫌いだから教えねえって訳じゃねえんだからそんな悲しそうな顔するなって」
「………済みません」
「全く………」
そう言ってなのはの頭を撫で、タバコの火を消して立ち上がる。
「バルトさん………」
「まだ何かあるのか?」
「吸い殻、ちゃんと持っていって下さいね」
「………分かってるよ」
そう言って渋々、踏みつけた吸い殻を拾ったのだった………
「行くよなのはお姉ちゃん!必殺、フォークボール!!」
「駄目だよヴィヴィオちゃん!!小さいときに変化球投げると肘に負担が………ってちょっと落ちた!?」
「ほう、やるなヴィヴィオ………」
ベンチに座りながら見ていたバルトが感心しながら呟いた、
高町家近くの公園。
全くのノープランだったバルト達は取り敢えずヴィヴィオ希望の遊園地は明日にし、今日は公園で遊ぶことにしたのだった。
「じゃあ次はカーブね!!」
「ヴィヴィオちゃん話聞いてた!?」
次々と変化球を繰り出そうとするヴィヴィオ。なのはの言う通り小さい頃から変化球を投げると体が出来ていない子にとっては大きな負担となる。
なので小学生、ましてや硬球など扱うリトルリーグでは高学年でないと変化球を投げさせないチームもある。
「まあまあ普通のボールじゃ無く、柔らかいボールなんだから問題ないだろ。それに別にプロの選手になるわけじゃねえんだ、そんな細かい事気にしなくていいだろ」
「流石バルト、分かってる~!」
「あれ?私が悪いの………?」
まさか心配して言ったのに自分が悪いように言われて戸惑うなのは。
「だが、なのはもヴィヴィオの事を思っての事だからな」
「分かってるよ~なのはお姉ちゃん、優しいの知ってるし!!それよりバルトもタバコ吸ってないでやろうよ~!!私ピッチャーでなのはお姉ちゃんがキャッチャー、そんでもってバルトがバッターね」
「そうですよ、ほら、ご近所のおばさん達も睨んでますよ………」
なのはの言う通り同じく公園へ遊びに来ていたご近所のおばさん達がバルトを見てヒソヒソと話をしていた。
当然陰口なのだが、特に気にせずバルトはベンチに座りながらタバコを吸っていた。
「おし、良いだろう。だが打たれても泣きわめくなよ」
「泣かないもん!!なのはお姉ちゃん、サイン確認しよう!!」
「ほ、本格的だね………」
後ほど、ヴィヴィオとの三打席勝負が始まったのだが、初球のヴィヴィオのカーブを手加減無しにかっ飛ばしたバルトのせいで、ボール探しに時間を費やす結果となってしまった………
「あははははは!!で、そのままずっとボール探してたんだ!」
「そうだよ!!バルトったら手加減せずに本気で打つんだもん!!」
「だったらお前は手加減されて満足したのか?」
「しない!!」
「だったらどうすれば良かったんだよ俺は………」
そんな会話をしながら昼食の蕎麦を啜る。
「それにしても忙しいのに呑気に飯食ってて良いのか?」
そう言って一緒に蕎麦を啜る美由希に話しかける。
「私は昼休み。順番に取らないとお店回せないからね」
「しかし従業員少ねえよな?雇わないのか?」
「昔は私の友達やお兄ちゃんの同じクラスの子とかいたんだけどね………まあ午後からは星ちゃんも来てくれるし、いつもよりは楽かな」
「星って………ああ、零治の彼女その1か」
「その1って………勝手に順位付けるとライちゃんと夜美ちゃん怒るよ………」
「別に仲良い訳じゃねえし構わねえよ。さて………ごちそうさん」
そう言って食器を持って台所へ下げたバルトはそのままリビングのソファーに深々と座りテレビを付けた。
「バルトさん遠慮が無いの………」
「下手に遠慮されるよりはマシでしょ。ヴィヴィオちゃんはまだ食べる?」
「この後ケーキ食べるからこれくらいで良いや。ごちそうさま!!」
「ヴィヴィオちゃん、食べ過ぎは駄目だからね」
「分かってるよ………」
文句ありげな顔をするヴィヴィオだが特に何も言わずバルトの隣へと向かう。
「ヴィヴィオちゃん食べたらちゃんと食器を下げなきゃ駄目だよ」
「うん、分かってる~」
そう返事をして動こうとしないヴィヴィオ。
「バルトさんは直ぐにやったよ」
そう言うとヴィヴィオはソファーから慌てて立ち上がりちゃんと下げるのだった。
「流石バルトさん!!」
「なのは、殴っていいか?」
「ごめんなさい………」
「ふぅ………駄目だ、完全に選んだ台を間違ったな………」
午後、なのはのOKが出たため近くのパチンコ屋へ向かったバルト。なのはがOK出してくれた事に驚いていたバルトだったが、『明日、遊園地へ連れていくんですから今日くらいは良いですよ』と聞き、納得した。
休みは3日なので、今日明日が終われば後は帰る準備をして六課へ帰るのみである。
「これじゃヴァイスの笑われるな………」
実は昼にあったメールで大当りを当てたと来ていた。それもかなり嬉しそうに。
「こうなったら話が出たら奢らせるか………」
何て思いながら歩いているとあっという間に翠屋へと着いた。
「いらっしゃいませー!!………ってあれ?バルトさん?」
「ん?なのは………じゃなくて星だな」
「はい、有栖星ですよ。髪が短いからあまり間違えられるのも少なくなりましたけど、やっぱり似てますよね………」
「まあな。ある意味美由希よりも似ているぞお前等。………彼氏は居ないのか?」
店を見渡し、ふとそんな質問をした。
「レイも来てますよ。ただ道場の方ですけど。今日はなのはも手伝ってくれるからいつもより長めに訓練出来るって言ってましたから気合入ってると思いますよ」
「訓練?」
「良かったら見に行ってみたらどうです?ヴィヴィオちゃんも見に行ってますよ」
「ほう………ちょっと覗いてみるか………」
星から話を聞いてバルトは店を出て高町家へと向かうのだった………
「おい」
「あっ、バルトお帰り!!どうだった?」
「全く駄目だった………取り敢えず残念賞の菓子だ。なのはに見つかったら怒られるからバレない様にな」
「あっやったー!!」
そう言ってバルトの手渡したお菓子袋を開けるヴィヴィオ。
中にはチョコやグミ、スナック菓子が沢山入っていた。
「ありがとうバルト!!」
「………素直に喜べねえがな」
とそんな話をしながら道場内を見る。
「………速いな」
「そうだよ、最初はヴィヴィオにも分かったんだけど、途中から音しか聞こえなくて飽きてきちゃった………」
そんなヴィヴィオの言葉を聞きながらバルトはその訓練を見ていた。
(実戦訓練か?しかし何だあのスピードは………!?零治の方は精一杯って感じだが、士郎の方はまだ余裕がありそうだ………しかし何者だ士郎は………)
しばらく高速の戦闘が続いたが、ふと、向き合った形で2人の動きがピタリと止まった。
「よし、休憩しようか」
「は、はい………」
両方とも凄い汗をかいているが、零治はその場で座り込んだ。
「おや、バルトさん来てたのかい」
「ああ、全く勝てなかったから帰ってきた。………凄い訓練だった。これほどの流派がこんな管理外世界にあったとはな………」
「まあ剣術だけだよ。魔法みたいに砲撃が出来るわけでも無いからね」
「それと、零治のあのスピードもこの訓練から来てる訳だな」
「あっ、はい………まあ俺の場合、自分のレアスキルで瞬間転移も出来るんですけどね」
そんな会話をしながらバルトは靴を脱いで道場の中へと進む。
「零治変われ。俺も戦ってみたい」
「バルトさん!?」
「………良いのかい?ハッキリ言うと私はスピードだけなら魔導師に負けない自信がある。零治君でもやっとなんだよ?」
「関係ない。無理かどうかは俺が決める」
「………分かった」
真剣な眼差しで言うバルトに折れるような形で士郎さが距離を取った。
「バルトさん、これ………」
「おう、サンキュー」
零治に手渡された木刀を受け取り、片手で担ぐように構える。
「良いのかい、そんな構えで?」
「ああ、始めようぜ」
「では………」
そう言って無言で互いに向かい合う。
「バルト頑張れー!!」
ヴィヴィオの声援に答えられないほど目の前に集中していた。
「それでは………始め!!」
士郎にアイコンタクトでスタートの合図を任された零治。
零治の掛け声と共に、試合が始った………
「なのは、星ちゃん、お客さん引いてきたから先に上がっていいわよ~」
「は~い」
「分かりました」
桃子にそう言われ、互いに店の奥へと入っていく2人。
「そうだ星ちゃん、道場に行こうよ」
「そうですね、レイの様子も気になりますし、バルトさんも今は居るはずですしね」
「あれ?バルトさん帰ってきてるの?」
「ええ、さっきこっちに来たんですけど道場の話をしたらそっちに行くって………」
「何分位前?」
「20分位ですかね」
「ああ、洗い物してた時だ………だけど早いな………ボロ負けだったんだね」
「何がですか?」
「パチンコ」
「ああ………男の人って好きですよね………レイもこの前ライと行って自分の財布スッカラカンにして帰ってきましたよ………ライは儲かってましたけど」
「ああ………何かライちゃんそういう運強そうだもんね………」
そんな会話をしながら道場へ向かう2人。
「あれ?零治君じゃなくてバルトさんがお父さんと戦うみたい」
「レイは終わったみたいですね」
「あっ、なのはお姉ちゃん、星お姉ちゃん!!」
そんな道場内で2人を呼ぶ声があった。
「ヴィヴィオちゃん、ずっとここに………ってどうしたのそのお菓子袋?」
「あっ………こ、こ、これはね、ヴィヴィオが買ってきたんじゃなくてバルトが………」
「パチンコの景品だね。だけどヴィヴィオちゃん、もう夕飯になるからスナック菓子やチョコは駄目だよ。グミなら許す」
「は~い………」
そんななのはの注意に素直に聞くヴィヴィオ。
食べかけのチョコをしっかり包装し、袋にしまった。
(はやてになのはの様子を見てきてとメールが着てましたけど、これじゃあ母と娘ですね………何か羨ましいです。私もレイとの子供が出来たらこんな風にしっかり母親が出来るでしょうか………?)
「あっ、星ちゃん始まるみたいだよ」
「えっ、あっはい」
「バルト頑張れー!!」
そんなこんなでバルトの知らぬ内に見物客が増えたのだった………
「では行くよ!!」
零治の合図と共にその場から姿を消した士郎。
「なっ!?ちぃ!!」
一瞬驚いたバルトだが、咄嗟に左に構えた木刀に衝撃が生じた。
「無意識に反応したね。………予想以上に戦い慣れている………」
「あまり俺を舐めるなよ………」
「そうだね、ならば更にギアをあげるよ!!」
そう言った瞬間右脇腹に鋭い痛みが走った。
「ぐっ………!!」
「まだまだ!!」
その光景はまさに弱い者いじめをしているような光景だった。
逃げられない相手に斬撃を浴び続ける。
「うわぁ………初めの頃の俺と同じだ………」
スピードについて行けず、持っていた木刀は全く機能していなかった。
(流石に歳なのかそれほどダメージはねえ………だが、これが刀だったら速攻で殺されてるな俺………しかし予想以上の速さだな………フェイトの本気といい勝負かもしれねえ………)
攻撃を受けながらそんな思考を巡らせるバルト。
「どうしたんだいバルトさん、これで終わりかい?」
「………ちょっと反則くせえが、俺もギアを上げさせてもらうぜ!!」
そう言うとバルトの体に雷がほとばしる。
「!?」
咄嗟に危険と感じた士郎は攻撃する直前で止まり、距離を取った。
「さて、反撃と行かせてもらうぞ!!」
そう言って今度はバルトが動く。
「なっ!?」
バルトのスピードに驚いた士郎はその場から動けず、バルトの攻撃を真っ向から木刀で受け止めてしまった。
「うぐっ!?」
その攻撃の重さは耐え切れず体が沈むほどであった。
しかしそれが幸いし、バルトの攻撃はそれ、右に流れるように大振りになってしまった。
「はぁ!!」
瞬時に体勢を整えた士郎は直ぐに隙が出来たバルトに斬りかかるが………
「なっ!?」
攻撃しても弾かれるように木刀が跳ね返ってしまった。
「悪いな、俺も負けず嫌いなんだ。この雷で強制的に俺の身体能力を上げている。アンタの膂力じゃ俺にダメージを与えるのは不可能だぜ?」
「はは、本当に魔法っていうのは凄いね。だけどね………」
そう言って不敵に構える士郎。
「いくら固くてもそれを破る技は御神流にある!!御神流『徹』」
そう言って再び斬りかかる士郎。
「ふん、別に特に変わった所は………」
そう言って腕で、受け止め、弾き返そうとするバルト。
しかし………
「あがっ!?」
腕に重い衝撃が走り、動きが止まる。
「まだまだ!!」
「ちっ!?」
すかさず追撃する士郎だが、危険を感じたバルトはその場から距離を取り、追撃をまぬがれた。
「くそっ、何だ今のは………!!さっきまでダメージが無かったのに腕に重い衝撃が………」
「これも御神流の技でね、簡単に言えば衝撃を表で無く、裏へと通す技さ。結構本気でやったつもりだけど………私も老いたな………」
「よく言うぜ………腕が痺れて上がらねえよ………」
「いやいや、若い頃なら人を殺せる程の威力があったんだけね………今じゃ使えなくするので精一杯だよ………」
軽々しくも物騒な事を言う士郎さんに冷や汗が流れるバルト。
「さて、どうする?まだやるかい?」
「当たり前だ。やられっぱなしってのは俺のプライドが許せないでな。とことん付き合ってもらうぜ!!」
「ストップ!!!」
そう言ってバルトが立ち上がった瞬間、間に零治が割り込んだ。
「どけ零治!!」
「バルトさん、このままじゃいずれ怪我人が出る!そこまでする必要は無い」
「確かにそうだね………このままヒートアップしたらいずれか、もしくは両方が怪我しそうだね」
「バルトさん、これは試合だ。殺し合いじゃない!!」
「………ちっ、分かったよ」
零治にそう言われ、木刀を下ろし、自分に纏っていた雷も消した。
「………まあ充分楽しめたし良しとするか。しかし本当に舐めてたぜ。お前も『徹』………だっけ?出来んのか?」
「まあ初期の技だからね。………まあ魔力を使わないと大した威力を出せないだけど………」
「これが初期か………」
零治の言葉を聞いて小さく呟く。
「世界は本当に広いな………」
バルトは零治に聞こえないほど小さい声で呟いたのだった………
さてその後少し小休止した後再び士郎と零治の訓練が開始される。
そこで神速同士の戦いに更に驚いたバルト。
そして訓練が終わり気がつけば夜の8時を回っていた。
「それじゃあここまで」
「あっ、ありがとうございました………」
バリアジャケットを解き、その場に再び座り込む零治。
「ふぅ………私も流石にヘトヘトだよ………今日は早めに休むとするかな………」
零治みたく座り込むことは無いもののヘトヘトなのか少しふらついていた。
(これが神速………まさに人類最速だな………)
そんな感想を抱きながらヴィヴィオと手を繋ぎ、反対側でヴィヴィオと手を繋いでいるなのはと3人で高町家へと向かう。
「零治達はどうする?家で食べてく?」
「ああ、いいです。今日はいつもより早く帰れるって言ってあるから多分待っていると思うんで」
「ありがとうございます美由希さん、私達はここで失礼します」
「ありがとうございました士郎さん」
そう言って零治と星は帰っていった。
「それじゃあ私達も行こうか」
士郎がそう言い、残っていた美由希が頷いた………
「ふうっ…………」
夕食を食べ終えたバルトは1人、切らしたタバコを買いにコンビニへと向かっていた。
「のどかだな………住み心地も良い………」
夜空を見ながら1人呟く。
「明日は遊園地か………面倒臭えな………」
そう言葉を漏らすが顔は満更でもなさそうだった。
「ふむ、若くなっているな………」
「あん?誰だ………」
高町家へ帰る途中だった。
昼頃遊んでいた公園へ差し掛かった辺りでふと声を掛けられた。
「この声を覚えていないのかい………?」
「同じ事言わせるな………いや、覚えがある。この声は………」
「まさか成功していたとはね、彼の実力を認めざる終えないね」
「何で貴様がここに………」
「君を見に来たんだよ、バルト・ベルバイン。いや、バルトマン・ゲーハルト………」
「今更俺に何の用だよ、クレイン・アルゲイル………」
誰も居ない公園で2人の男が互いに向かい合っていた………
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