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八条学園怪異譚

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第三十七話 テケテケその十

「ただね、デザインとかはね」
「こっちの方が上だっていうのね」
「エスエルの方が」
「そう、ロマンよ」
 うっとりとした顔で二人にこうも言う。
「やっぱりいいわね、毎晩乗ってるけれど」
「そんなに好きなのね」
「エスエルが」
「鉄道自体好きだけれどね」
「エスエルもなのね」
「何だかんだ言って」
「確かにもう過去のものだけれど」
 電車の時代では、というのだ。若しかするとこれがリニアモーターカーになりその電車も過去のものになるかも知れないが。
「エスエルもいいでしょ、それでだけれど」
「それで?」
「それでっていうと?」
「どう?車窓から見る学校は」
 今は大学の中庭の中を走っている、二人がやがて行きたいと考えていて今も時々来ているその大学の中庭だ。
「いいかしら」
「ううん、本当に列車の中から見ると」
「違うわね」
 これが二人の感想であるが感じていることは先程と変わっていない。
「お茶を飲みながらゆっくりと見たくなるっていうか」
「そんな感じよね」
「ああ、駅弁と一緒にあるお茶だね」
 口裂け女が早速言って来た。
「プラスチックの中に入っている」
「そう、ああいうのね」
「熱いお茶ね」
 二人もそれだと答える。
「ペットボトルのじゃなくて」
「ああいったお茶を飲みながらね」
 車窓からの景色を見たいというのだ。
「自転車だと自分が動かしているからゆっくり出来ないし」
「車だとまた違うから」
「だから列車だとね」
「駅弁とああしたお茶がいいわよね」
「そうそう、あたしも車だと運転することもあって列車の中みたいに落ち着けないんだよね」 
 口裂け女もそうだと言う。
「ゆっくりと落ち着いて旅をしたいのならね」
「やっぱり列車よね」
「今みたいに」
「そうだよ、そこに本もあるといいね」
 ここで口裂け女が出す本はというと。
「ライトノベルとかジュブナイルとかね」
「口裂け女さんも本読むの」
「しかもかなり若いわね」
「これでも読書家だよ、少女漫画も好きだよ」
 その切れ長の目をにこにことさせて二人に話す。
「生まれた頃からりぼんとかマーガレットとかちゃおを読んでるよ」
「それじゃあ別冊少女フレンドも?」
「あとプリンセスとかも」
「読んでるよ、一番好きなのは花とゆめだね」
 今度は二人と少女漫画の話で盛り上がる口裂け女だった。
「いいねえ、少女漫画は」
「っていうか意外と乙女なのね」
「口裂け女さんの趣味って」
 二人も今知ったことだった。
「花とゆめって」
「そういうの読んでたの」
「私はララね」
「私はやっぱり花とゆめかしら」
 花子さんとテケテケもそれぞれが好きな少女漫画雑誌を出す。
「昔は別冊じゃない少女フレンドもあったけれど」
「もうないからね」
 つまり休刊になったというのだ。 
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