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万華鏡

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第三十六話 浴衣を着てその十

「濡れることはね」
「そうよね」
「色が透けるとね」
 それはどうしてもだというのだ。
「恥ずかしいでしょ」
「ええ、それはね」
「線が出るのも恥ずかしいけれど」
「それもね」
 確かに恥ずかしい、だがだというのだ。
「色もだからね」
「上の方はいいのね」
「ブラね」
「こっちはいいのね」
「本当はさらしがいいけれどね」 
 本来はだ、だが今はだというのだ。
「色が白だったからね、それに上は透けないから」
「それでなのね」
「いいわ」
 ブラのままでだというのだ。
「大丈夫よ」
「問題は下なのね」
「着物の場合はね」
「はかないのはよくないわよね」
「汚れるわよ、浴衣が」
 下着が何故あるのかという話にもなる、これは服を汚さない為にあるのだ。
「昔だって実際は女の人もちゃんと着けてたのよ」
「昔の下着?」
「湯文字ね」
 昔の日本の女性の下着はこれだった、腰巻もそれである。
「あと褌もよ」
「えっ、褌もなの」
「そう、女の子も着けてたのよ」 
 母は浴衣姿で驚く娘に笑って話す。
「実際にね」
「そうだったの」
「そうよ、はいてたのよ」
「そうだったのね」
 琴乃はその話を聞いて目を丸くさせて言った。
「女の子も褌はいてたの」
「びっくりした?」
「ええ、まさかそうだったなんて」
 驚いた顔のまま言う。
「信じられないわ」
「けれど女の子も褌をはけるのはわかるわね」
「そのことはね」
 わかるとだ、琴乃は褌のデザインを頭の中で思い浮かべてから母親に答えた。
「わかるわ」
「そうでしょ、実は女の子でもトランクスはけるから」
「それもわかるけれど」
「男ものの下着をはけるよね」
「はかないだけなのね」
「そう、今の下着は男ものと女ものがあるからね」
 それで性ではく下着が分けられているだけだというのだ、常識というものの考えからそうなっているというのだ。
「そうなのね」
「そうなのよ。昔は褌もそう思われてたのよ」
「女ものでもあるって」
「だからはいてたのよ」
「つまりあれよね」
 琴乃は再び褌の形を思い浮かべて言った。
「ティーバックだったのね、皆」
「あっ、そうなるわね」
「褌ってお尻丸見えだから」
 それでティーバックになるというのだ。
「なるわよね」
「そうね、確かに」
「大胆よね、皆ティーバックって」
「それは今の考え方だから」
「昔は違ったのね」
「だって皆よ」
 男も女もだというのだ、褌だったからだというのだ。 
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