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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第二十二話 泥沼の終局

実際、冷静に見つめるとアークエンジェルの戦力は決して多くない。実質的に艦一隻とMSは非戦闘員に近いカガリのストライクルージュを含めても三機しかいないのだ。一応はスカイグラスパーなどの戦闘機も存在するがMSが主力となった今では役不足はいなめない。
獅子奮迅、一騎当千の活躍をすることが出来るフリーダムがいるとはいえ、それほどの活躍を行える機体が一機しかいない以上、長期的な戦闘を行うのは難しい。何故なら―――

「オーブ軍、イージス艦よりミサイル多数射出。目標は本艦です!」

攻め手に転じているフリーダムが抑えられてしまえば艦は無防備な存在となる。アークエンジェルは優秀な戦艦ではあるが、戦艦だけで戦闘が行えるなら誰も戦闘機やMSといった兵器を造ることはない。
アークエンジェルにはせめて攻撃のフリーダムともう一機、艦の防衛に当たれる機体がいなくては話にならない。その役を買っていたのはバルトフェルドのムラサメだがその機体も今は撤退している。

「回避!そのまま水中に潜り込んで!」

「ミサイルだけならイーゲルシュテルンで落とせますよ?」

そうやって具申しつつも艦は潜水行動に移る。水中に入り込んだ直後、海面が想像して以上の範囲で攻撃に晒された。

「ミネルバがああなった理由を考えると何らかの特殊弾を使った可能性が高いわ。だったら、こちらに対してもそうしてこないとは限らないでしょう?」

マリューは軍属の、それも艦長職にいた経験と、一時とはいえオーブの技術関係者だったことから彼女はオーブの手を読みうまく回避した。
とはいえ潜水したからといってこちらから攻撃することは出来ない。下手に攻撃をすればオーブの艦が沈むだろう。止めに来たというのにそれでは本末転倒だ。

「やれやれ、オーブ軍もこっちを厄介者扱いすることにしたようだね」

後ろからドアが開き包帯を頭に巻いているバルトフェルドがやってくる。

「バルトフェルドさん!その怪我は!?」

撃墜されかかったことは聞いているが、怪我をしたなどという報告を受けていなかったマリューはその様子を見て驚きの表情を見せる。

「いやぁ、今のザフトのエースも油断なら無いね。元とはいえ同じザフトのエースの俺をこうもあっさりと追い詰めるんだから」

苦笑いながらそう答えるが、実際今の状況が不味いことは理解している。

「撤退も視野に入れるべきかねぇ?」

「私達がそう決めてもカガリさんが素直に頷いてくれるかは分からないわ」

潜水した以上、敵艦が攻撃するには距離を詰めての対潜水ミサイルか、MSによる攻撃、後は魚雷くらいしか存在しない。オーブ軍はそういった兵器が無いわけではないのだろうが、攻撃するにしても時間が掛かることは間違いない。
その間にマリュー達は今からどうするかを決断しなくていけない。即ち、撤退か―――継続か。そんなことを考えているうちに敵の攻撃が接近してきた。

「小型ミサイル接近!」

突然の攻撃にアークエンジェルクルーは驚愕する。一体何処からの攻撃だと。

「回避!」

「駄目です、間に合いません!?」

威力こそ余り無かったもののほぼ不意打ちに近い小型ミサイルがアークエンジェルに直撃した。

「一体何処から!」

「MSだ!」

マリューがうろたえているとバルトフェルドが攻撃してきた相手を推測して言う。

「レーダー熱源あり、確かにMSです!これは、ザフトの機体ですよ!」

『そうさ、そうだよ―――俺は本来水中戦や宇宙戦が得意なんだ。丘で干上がった状態よりも、こっちの方が向いてるさ!』

マーレ・ストロードは選択した。先に敵の母艦を叩き潰すと。ミネルバに直接武装を用意してもらい甲板に上がりすぐにF型の武器、レーザーライフルとグフのビームソードを手渡しで受け取った。ビームソードもビームを出さなければ水中で使える。エネルギー残量は少ないし、武装も左手にしか持てないがやってやれないことはない。
ゲルググで戦って、負けたことなど一度だってないのだから。

『アークエンジェルは後回しだ!オーブ艦隊から落としてやる』

雄大な海を、母なる海を渡り歩く感覚は宇宙に包まれるその感覚に似ている。だが、今はそんなこと考えている暇はない。
敵であるアークエンジェルはオーブ艦隊を攻撃しようとすれば止めに来るはずだ。そして、オーブ艦隊も接近されれば対応する。そうなればオーブ艦隊もアークエンジェルもそうなればこちらを気にする余裕を失うはずだ。
唯一の懸念は水中用でない上に損傷したゲルググC型で何処までやれるかだ。だが、マーレは例えこの機体が朽ち果てようとも勝利を掴んでみせると、そう覚悟する。

『そうやって、自分達が救おうとした奴等に落とされればいいさ……』

戦いは非情だと、そう考えながらオーブ艦隊へと移動を開始する。三連装ミサイルによってこちらの存在を主張したため、アークエンジェルは予想通り、こちらに向かって追跡を開始してきた。







今やどの勢力も満身創痍と言えた。MSを殆ど失ったオーブも、撤退の判断を迫られつつも攻撃を受け続けるアークエンジェルも、損傷が激しくまともに行動できないミネルバも、どの勢力にも余力はない。残されているのは決死の覚悟の上で戦うムラサメ部隊、カガリを守りながら戦闘を止めようとするフリーダム、換装によって損傷を無視することの出来るインパルス以外は損耗しているミネルバのMS部隊。
どの部隊も既に追い込まれている。天秤の針は少しでも傾けば後は雪玉のように転がり落ちて決定的なものとなるだろう。
そうやってMSがぶつかり合っている中、ハイネもまた戦闘を終わらせつつあった。既に撃ち切ったガトリングは排出し、ビームソードを右手に構えたまま左手のスレイヤーウィップでムラサメを攻撃するが、何度も使っていた為か、軌道を読まれ、回避される。
機体の損傷も所々に見られ、シールドなど後数合もしないうちに壊れるだろう。エネルギー残量も心もとない。しかし、相手もそれは同様だ。数が多かったムラサメやアストレイの部隊も大分その数を減らしている。勿論、ミネルバへと向かったというのもあるが純粋に数を減らされているのだ。

『コイツでッ!』

四連装ビームガンを放ち、アストレイを蜂の巣にする。しかし、エネルギーの少ない中で撃つのはやはり神経をすり減らされる。
スレイヤーウィップも攻撃の手段のためというよりは敵を捕らえ、振り回したり、引き寄せて斬ったりするための唯の鞭と化している。

『くっそー!討たせない!これ以上討たせて堪るか!!』

ムラサメに攻撃を受けたからか既に足を失い、武装も殆ど使えない状況のショーンのゲルググはミネルバの上でそれでもジャイアントバズーカを撃ちつづける。一機のアストレイがレイやルナマリアの攻撃を潜り抜け攻撃を仕掛ける。

『ウオオォォォ―――!オーブを、我々を舐めるな―――!!』

ミネルバの迎撃によって背面のシュライクが破壊され、バランスを崩すがそれでもせめて一矢報いるとばかりにミネルバに向かって突撃してきた。そしてそれが衝突する直前、ショーンはミネルバを守るために横合いから突撃し、ミネルバは爆発の直撃を受けずにすんだ。
しかし、ショーン機はそれによって完全に機能を停止する。

『ショーン!返事をしてください!ショーン!?』

メイリンが悲痛な声で呼びかけるが、ショーン機からの応答は無い様に見られた。まさかデイルのときと同じように死んでしまったのかと思ってしまう。だが、

『うッ、づゥ……』

意識はないようだが生きてはいた。幸いミネルバの上に乗っていたショーン機は整備士達によってコックピットを開き、救助される。
だが、そうやって息つく暇はない。ただでさえマーレが艦隊に直接攻撃を仕掛けに行って戦力が減ったのだ。状況は更に悪くなる一方だ。

『クソ、このままじゃッ!』

マーレが艦隊を撃沈すると信じ、シンは収束ビームでムラサメを次々と落とすが、それも限界が近かった。エネルギーを他より多く消費するブラストインパルスである以上、限界寸前でなんとかエネルギーをやりくりしている状況だ。しかし、それも限度が近い。

『キラ!お前達が介入してきたから、こんな泥沼のような戦いになっているんだって、何で分からない!』

『そうだけど―――だけど、だからってそれがオーブを撃っていい理由になるって言うの!?』

エネルギーを補充されたセイバーは再びフリーダムと戦闘を再開するが、お互いにビームライフルもシールドも失い、互いにサーベルを二本抜いた状態で回避しながら攻撃を仕掛けていく。どちらも致命打は一向に受けず、千日手となっていた。

『撃ってきた人間に銃を構えるなと、そんな無抵抗なことをして撃たれろと、そうしろって言うのか!』

『違う、他にやり方だって!』

『だったら、お前達が国に、オーブに帰ることこそが最善だっただろうに!!』

セイバーのサーベルが遂にフリーダムの片腕を捉えた。元々守るべきカガリに意識を向けながら戦い、オーブへと気を逸らし、予想外の強さを発揮していたインパルス、そしてアークエンジェルへの攻撃―――それら総てに僅かとはいえ意識を向けていた以上、如何にキラであってもアスランを相手取ることは出来ない。

『しまった!?』

『これで終わりにするか、続けるか?』

ビームサーベルを正面に突き出し、キラに下がるように呼びかける。頼む、下がってくれと。これ以上抵抗するって言えば俺はお前を討たなくちゃいけなくなるんだと。

『そんなこと、君が決めることじゃない!』

残った片腕の持つサーベルでフリーダムは切り裂こうとしてくる。だが、セイバーはあらかじめ構え、二本持っていた。それが示すことはつまり、

『この馬鹿野郎!』

セイバーによって残っていた片腕も切り裂かれる。セイバーも同様に片腕を切り裂かれたが、そのままセイバーは蹴りを放ち、フリーダムは海面に衝突した。

『キラ!?』

カガリがキラを案じて叫ぶ。アスランは思わず顔を逸らしたくなるが自らが行った行動は間違っていないはずだと、そう考えるしかない。

『カガリ、もう下がるんだ。今の君じゃオーブは止められないんだ!』

『アス、ラン……でも、私は…それでもッ……!』

散っていくオーブ軍を目にしながら涙を流すカガリにアスランは説得を行う。せめて、本当に守りたいと思ってるなら、ここは我慢して退いてくれと。ここでこのままいれば今度はカガリまで撃たないといけなくなる。いや、アスランが撃たずとも他の誰かが撃つのだ。守護者であるキラがいなくなってしまった以上。

『カガリ、下がってくれ!頼む―――君は戦場に出るべき人間じゃないんだ!?』

彼女の立場は軍人ではなく政治家だ。だからこそ、こんなところに居て良い訳がないのだ。

『ここは、君の居て良い場所じゃないんだ!』

次の瞬間、アスランはカガリの乗るストライクルージュのエールパックを切り裂く。カガリは突然の不意打ちにどうすることも出来ず落下していった。

『アスランッ!?』

無抵抗だったカガリはそのまま海面に向かって落ちていく。アスランはこれでいいと思う。海中に入れば少なくとも砲撃に曝される事はない。アークエンジェルも水中を潜水している。キラも水中で身動きが取れないとしてもカガリが連れて行けるはずだ。

『これで……これで良いんだ―――』

キラもカガリもあの場ではああするしかない。今は敵で、放って置けばミネルバが沈むかもしれないのだから。

その後の戦いは最早消化試合と言えただろう。盤面はアークエンジェルに固執したオーブ軍と初めから両方を相手取っていたミネルバだ。アークエンジェルの部隊が正面から戦えなくなった以上、ミネルバの攻撃対象はオーブ軍に絞られる。
オーブはミネルバや水中からのマーレの攻撃、インパルスやセイバーからの攻撃に晒され、結果的に護衛艦四隻を完全に失い、一隻も自走不能、一隻は中破、空母タケミカヅチも殆ど戦闘能力を奪われていた。無事だったのは最も後方に待機していた連合の母艦位だ。

『全機、帰還しました。敵艦隊、撤退していきます』

『そう、何とか撃退できたって所かしら……とはいえ、こちらも相当消耗したわね』

大破したショーン機を含め、損傷のない機体など存在しない。ミネルバも近くの港で補給を受けざる得ない事になった。







「つまり、こちらはまんまと相手の策に乗せられたっていうわけね……」

戦闘が終了し、撤退したアークエンジェルクルーも現状に溜息をつかざる得なかった。
オーブ艦隊の居る所まで引き寄せられ、オーブ艦隊に注目を集めたのだ。その間を利用されオーブ艦隊は壊滅的な被害を受けた。早い話がそういうことだった。
しかし、一部の海に撃ち捨てられたムラサメやアストレイのMS隊を少数のみだが回収することはできた。

「あなた達は、私達に賛同してくれると?」

機体こそ損傷しているのも多かったが修理すれば使える機体もある。そんな中、乗っていたパイロットの彼等は自分達の意思でアークエンジェルを支援することを了承していた。

「我等はオーブの理念を信奉したからこそ軍に身を置いたオーブの軍人です!ならばその真実のオーブのためにこそ戦いたい!難しいことは承知しております。だからこそ我等もカガリ様と!この艦と共にと!」

彼等は自分たちの意思を持って参加すると発言した。彼等にはどちらの主張が正しいかを自分達で見つけようとしてる。故に彼等は自分達の信じた代表についていくと至った。

「その、ありがとう―――色々と至らない身だが全力を尽くさせてもらう!」

カガリはまだ自分を信じてくれる仲間達のためにそう言った。
 
 

 
後書き
ショーンはルナマリアの代わりに負傷しました。そしてまさかのセイバー勝利。フリーダムって何だったんだろう?とはいえ戦闘力失ったかって言われると怪しい。破壊されたのは腕だけだし。
そして数は少ないけどムラサメ、アストレイ部隊アークエンジェルに合流。全部損傷してるけど、ニコイチとかすれば多分大丈夫だよ(笑) 
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