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IS《インフィニット・ストラトス》~星を見ぬ者~

作者:白さん
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第三十二話『雨Vs雨』


スウェンは両腰にマウントされた武装を両手に持ちラウラへ向け、左手に持ったレールガン“ルドラ”を放つ。


「くっ!」


正確な射撃によりラウラは何度か被弾しかけ、直撃を受ける寸前にAICを展開し、弾丸を全て止める。


「レーゲンストライカー……完成していたのか……」

「ああ、俺も実践で出すのは今回が初めてだ」


ルドラを放ちつつ、右手に持ったビームライフルを放つ。ラウラは表情を変え直ぐに回避に移り、レールガンとビームライフルによる攻撃を避け続ける。


「(ビームライフルのせいで迂闊に停止結界を使えない……まさか隊長は停止結界の性能を把握しておられるのか……?)」


AICは確かに強力な武装だ。それこそガトリングの弾丸の雨すら完全に防ぐほどの性能があるが、唯一。エネルギー武装を防ぐことが出来ないという欠点を抱えている。

スウェンは既にそれを把握しており、ルドラによる実弾兵器とビームライフルのエネルギー兵器による攻撃を織り混ぜながら行っている。


「遠距離戦ではこちらが不利……なら!」


シュヴェルドストライカーへ瞬時に換装し、ティーア・ナーゲルを構え、スウェンへと向かう。

レーゲンストライカーの後部に装備されたビームサーベルが起動し、スウェンはルドラとビームライフルを腰へマウントし、両手にサーベルを持つ。


「はあっ!!」

「でぇやぁ!!」


互いの剣は一歩も引くことなく、鋭い一撃を与えようと何度も重なりあう。だがその実力差は歴然、スウェンの二刀による攻撃はラウラを圧倒する。


「甘いな」

「なっ!? ぐっ!!」


一瞬の隙が生じたラウラに、スウェンはラウラの腕を蹴り上げ、ティーアナーゲルは空へと舞う。
ラウラはシュツルムへと装備を変え、バーニアを最大に使い一気に距離を離す。
スウェンはレーゲンストライカーの左方のアームに接続されたバズーカ。“ゲイボルグ”をラウラへと撃つ。


「この程度の弾速で!」


AICを展開しゲイボルグの弾頭を止めようとするが、スウェンはそれを読んでおりビームライフルも同時に放っていた。思わずラウラは舌をうち、回避行動を取らざる負えない状況へとなる。ゲイボルグとビームライフルの攻撃は未だ止まることはない。


「避けられんぞ」


ゲイボルグから放たれた弾頭がラウラへと迫る。すると弾頭は炸裂し、散弾の如くラウラを襲う。
シュツウルムストライカーを駆使し避けようとするが、その散弾性に全てを回避するのは不可能だった。シールドエネルギーは徐々に0へと近づく。


「このままでは……」


負ける。そう感じた、その時


「おりゃあああ!!!!」

「ッ!?」


背後から一夏が接近しており、雪片二型による攻撃を回避しする。


「織斑 一夏!? 篠ノ乃は……!?」


そちらを向くと、既にエネルギーが0へとなり片膝を着いている箒がいる。


「何時の間に……」

「わからないのか?」

「何……!? それは……!」


一夏の左手に持っていたのはノワールの武装、フラガラッハだった。


「一時的に使用権限を解除していた。忘れたか、先程それを投げたのはお前を狙ったわけではない」

「ま、まさか……」





これはラウラ達が分断された後の事だ……


「ちっ、分断されてしまったか……」

「それも作戦の内だからな」

「ふん……ならば一夏! お前を倒してあちらと合流するだけだ!」

「できるかな!!」


一夏と箒の両者は駆け、雪片二型と近接ブレードは激しい火花を散らす。


「どうした! 一夏、お前はその程度なのか!!」

「く、うっ……!!」


剣の実力なら箒の方が上。一夏はそれをわかっていた。零落白夜も起動しても、箒に直接当てなければ意味がない。一夏はダメージを受けながらも、その時が来るまで耐え続ける。


「とりゃあぁぁ!!!!」

「っ!! しまった!!」


雪片二型を弾き飛ばされた一夏、箒はここと言わんばかりに


「今度こそ、もらったぁぁ!!!!」


近接ブレードは一夏の体をそのまま切り裂く。

筈だった。

箒は突如として飛来した何かの直撃を受け、大きく怯む。


「な、なんだ……?」


一体何が起きたのか理解出来ない箒は、直ぐに我に帰り一夏の方を向く。だがそこには一夏は居なかった。

すると頭上を影に覆われ、空を見上げる。


「悪いな箒、俺の勝ちだ!!」


そこに居たのは右手に零楽白夜を発動した雪片二型、そして左手にはフラガラッハを持った一夏が居た。箒が受けた衝撃は、スウェンが先程投擲したフラガラッハだった。
箒は一夏の攻撃を防ごうとしたが、防御は間に合わず、一夏は雪片二型とフラガラッハでクロスに箒を切り裂いたのであった。





「結構危なかったぞ、スウェン」

「すまない、行動を起こすのが少し遅れた。だが結果は出せた、それで良いだろう」

「ああ、確かにな」


スウェンと一夏はラウラを視界に捉え、一気に接近する。
先に一夏がラウラへの攻撃を始め、ラウラはシュヴェルドに換装し迎撃行動へ移る。だがスウェンが背後から迫っており、ルドラの的確な射撃により一夏の相手をする事に集中できない。辛くも一夏の攻撃を捌き続けるが、スウェンからの攻撃は防ぎ切れない。


「(負ける……私が!? このまま敗北してしまったら、私は……!!)」


ラウラはスウェンを見つめ、過去の事を思い出す。





/※/





「わ、私が隊長に!?」

「そうだ」


シュハイク責任官に思わず声を荒げながら質問してしまった。
スウェン隊長が居なくなってから、早数週間が過ぎた。この黒ウサギ隊の隊長の後任を決めるか会議が先日行われていて、その後任がまさか私になるとは思わなかった。

クラリッサ副隊長に聞くと、私はスウェン隊長から主に訓練などを受けており、隊長に非常に近い存在のため私が抜擢されたらしい。

そんな事はない、私はあの人とは近くは無い。私はあの人の背中を見て、何時からかあの人に私を見てもらいたいと思うようになって、此処まで来れたのだ。決して近い存在なんかじゃない。


「申し訳ありませんが、私では……」

「大丈夫だ、お前なら出来る。スウェンもお前が隊長になると聞いたら納得するだろうよ」

「で、ですが……そういえば、スウェン隊長が日本へと渡ったとお聞きになったのですが」」

「ん? ああ、そうだ。あいつは世界でも例に見ない男のIS操縦者だからな。上層部がスウェンに入学させろと騒いだのだよ。む、確かスウェンは特別待遇のドイツ代表候補生だから、もう一人ドイツから候補生を出さねばならないな。さて、誰が出るのだろうな」


顎に手を添え、悩むシュハイク責任官。誰がなろうと私には関係ないのだが……。
待て、候補生というのは確か専用機持ちが主になると誰かから聞いた事がある。それが嘘か真かは知らない、だがもし候補生になれば隊長の下へまた行けるのでは?
隊長の御両親が開発した、レーゲンは次期黒ウサギ隊の隊長が使用する事になる。これは……もしかしたら。


「シュハイク責任官」

「? なんだ」

「私が隊長なるという件、引き受けます」

「ほう、それは良かった。お前なら安心して隊長を任せられるな。これからよろしく頼むぞ、ラウラ隊長」

「はい、この身を掛けて尽力致します」


シュハイク責任官はさぞ上機嫌に笑う。私が隊長……なりたいと思った理由はあまり良い物ではない。それにスウェン隊長の後に私が黒ウサギ隊の隊長に勤まるかは解らない。だがここで頑張っていれば、スウェン隊長もきっと私の事を見てくれる。


そう思えたから今まで頑張ってこれた。だけど……

ここで私が敗北したら……無様な姿を晒してしまったら、隊長は二度と私の事を見てくれなくなる。あの眼差しを二度と私に向けてくれなくなる。

嫌だ、そんなのは嫌だ。

嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だいやだいやだいやだいやだいやだイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ!!!!!!







「いやあああああああああああ!!!!!!!!」

「「ッ!?」」


その時、黒き雨は悲痛な嘆きとともに暴走した。

 
 

 
後書き
更新遅れて申し訳ありませんでした。深くお詫び申し上げます。

次回、暴走~互いの思い。お楽しみに。 
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