万華鏡
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三十六話 浴衣を着てその四
「なるから」
「白い浴衣ってそうよね」
「琴乃ちゃんの浴衣の白はまた違う白だと思うけれど」
「少し油断しただけで、なのね」
「そう、幽霊になるから」
だからだというのだ。
「注意してね」
「ええ、わかったわ」
「まあ帯も締めるからね」
浴衣の帯である。
「それだけで全然違うけれど」
「帯ね、あれ私自分で締められないのよね」
「それ私もよ」
「私も」
「あたしもな」
里香に彩夏、美優も帯は駄目だというのだ。
「あれ締めるなんていうのはね」
「自分では無理よね」
「絶対に無理だろ」
三人はこう言う、だがだった。
景子だけはだ、笑顔でこう言うのだった。
「あれはコツがあるから」
「着物の着付けよね」
「それよね」
「私それが出来るから」
充分にだというのだ。
「ちゃんとね」
「振袖と同じで」
「そうなのね」
「そうなの、浴衣も着物だから」
振袖と同じくだというのだ。
「だからそちらも大丈夫だから」
「じゃあ夏祭りの前にここに浴衣持って来るからさ」
美優がその着付けが出来る景子に言う。
「だからさ」
「私に着付けしてもらいたいの?」
「いや、教えてくれるか?」
その着付けをというのだ。
「そうしてくれるか?」
「いや、教えるのはね」
それはどうかとだ、景子は曇った顔でこう言うのだった。
「ちょっとね」
「駄目か?」
「難しいのよ、着付けは」
「教えてもらっただけでは、っていうんだな」
「そう、中々出来るものじゃない」
着付けとはそういったものだというのだ。
「だからね」
「それでか」
「そう、着付けは私が手伝うから」
「教えられてもか」
「すぐに、着物は着られないから」
美優だけでなく他の三人にも話す。
「だからね」
「そういうことなんだな」
「そう、だから今はね」
着付け、それだけで許して欲しいというのだ。
「任せてね」
「じゃあそうさせてもらうな」
美優はこう景子に応えた、そして琴乃は景子に自分の母親の話をした。
「私のお母さんはね」
「琴乃ちゃんのお母さん?」
「そう、着付け出来るから」
話すのはこのことだった。
「だからね」
「大丈夫なのね」
「そう、大丈夫だから」
「いいお母さんね」
着付けが出来る、そのことで言うのだった。
「じゃあ琴乃ちゃんはお家から着てくるのね」
「そうしていい?」
「ええ、いいわよ」
景子にしても断る理由はない、それでこう琴乃に返した。
ページ上へ戻る