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今時のバンパイア

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第一章

                     今時のバンパイア
 ロック歌手のコンサート会場になら何処にでもいる、そんな感じだった。
 ブロンドのショートヘアに黒い大きな目、白く透き通った肌に整った人形を思わせる目鼻立ち、表情は勝気な微笑みだ。
 大きめの耳がショートヘアから見えており黒いハイソックスにそれと同じ色のタイトのミニ、やはり黒のジャケットに胸元が開いたシャツである。背は小柄で一五〇程だ。
 胸は大きく谷間がはっきり見えている、胸には銀のロザリオがある。
 その少女がコンサート会場になっていた大阪ドームを出た荒神禎丞に声をかけてきた。禎丞は普通の大阪の大学生で一重のやや菱形の目に細めのはっきりとした黒の眉を持っている。黒髪を耳が隠れる長さで伸ばしその量は多めだ。頬のところがシャープになっている、その彼に声をかけてきたのだ。
「ねえ君」
「君って俺?」
「そう、君」
 屈託のない感じで声をかけてくる。
「君なんだけれど」
「俺に何か用?」
「いや、いいかなって思って」
「いいって何がだよ」
「相手によ」
 少女はくすりと笑って彼に言う。
「いいかなって思って」
「相手ってひょっとして」
「これから暇かしら」
 禎丞にそのくすりとした笑みで問うてきた。
「暇じゃなかったら付き合ってくれる?」
「あの、俺さ」
 禎丞は特に予定がないが初対面の相手にそんなことを言われて胡散臭さを感じたので断ろうとした、だが。
 少女が彼の目を見て来た、するとだった。
 不意に何故か断る気がなくなった、それでこう返した。
「いいよ、何処に行くんだよ」
「終電の時間はあるわよね」
「あるも何も家はそこなんだよ」
「大阪なのね」
「大阪の此花だよ」
 そこだというのだ。
「近くだからさ」
「大丈夫なのね」
「すぐに行けるよ、ここからはさ」
 大阪ドームの方を振り返って言う、土星を思わせる形のドームは西区にある、そこから此花はというのだ。
「まあバスでも地下鉄でもさ」
「じゃあ大丈夫ね」
「少し位ならさ」
 時間はある、こう答える。
「大丈夫だよ、じゃあ何処に行くのかな」
「お酒いける?」
 今度はこう問うてきた。
「よかったらいいお店知ってるのよ」
「居酒屋かな」
「違うわ、バーよ」
 少女はくすりと笑ってそこだと話す。その間に禎丞の右に来た。
 その胸を見えた、小柄だが見事な谷間だ。しかもその十字架は胸をさらに映えさせていた。かけている首筋もである。
 その胸を見ながら少女に言った。
「バーなんだ」
「そうなの。ブラッディメアリーが美味しくて」
「ブラッディねえ」
「トマトジュースのカクテルよ、これが凄く美味しいのよ」
「それでなんだ」
「ええ、そうよ」
 禎丞に笑顔で言って来る。
「一緒に飲みましょう」
「ああ、それじゃあな」
「後ね」
「後は?」
「そこのお店トマト自体が美味しいから」
 今度はそのカクテルに使うトマトの話もした。
「後苺も出るから。ワインもいいし」
「赤が揃うね」
「赤大好きなのよ」
 着ている服は黒だがそれでもだというのだ。 
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