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言われるうちに

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第七章

「そこまでして、なの」
「学生がお小遣いで買えるものじゃないでしょ」
 一人がこう千明に言う。
「どう見ても」
「それはね」
「それにね、今も言ってるのはわかるわよね」
「皆に、よね」
「あんた自身にはあがってどうしても言えないけれどね」
 だがそれでもだというのだ。
「好きだって言ってるわよ」
「そうなのね」
「とにかく、そこまでしてるから」
「・・・・・・・・・」
「わかるでしょ、皆川君の気持ち」
 クラスメイト達はここで千明にこう言った。
「もう言わなくても」
「最初からわかってるわよ」
 もう既にだとだ、千明は俯き加減で唇を噛んで答えた。
「そんなことは」
「けれどタイプじゃないのね」
「そう言うのね」
「何よ、だからどうすればいいのよ」
 たまりかねて泣きそうな顔になって、千明はクラスメイト達に問い返す。
「私どうすれば」
「それはあんたが一番わかってるでしょ」
「あそこまで想ってるのよ、あんたのこと」
「それに彼悪い子じゃないわよ」
「あそこまで一途で純情で素直なのよ」
 問題は本人に言う程強くはないということか、だがそれでもだった。
「働いてまでしてね」
「そこまでしてくれる子よ」
「じゃあ」
「別にルックスだけ見てる訳じゃないでしょ、あんたも」
 ここでこう問うた彼女達だった。
「性格も見てるでしょ」
「それはね」
「じゃあいいわね」
「何をするかわかってるのならね」
 真剣な顔で千明の背中を言葉で押した、そしてだった。
 千明は自分から拓也の教室に向かった、見れば彼は周りに半ばからかわれる感じで千明のことを問われてそれに応えていた。
 その彼のところに来てだ、一旦深呼吸してから言った。
「ねえ、いい?」
「えっ、ええと」
「今も言ってたみたいだし」
 このことはもうわかっていた、教室に入る途中で話を聞いているからだ。
「それにわかってたから」
「わかってたって」
「最初は何処に行くの?」
 自分の席に座って呆然としている拓也に正面から問うた。
「それで」
「ええと、じゃあ」
「何処でもいいから、好きな場所選んで」
 それこそ例えホテルでも何処でも、千明は覚悟を決めて拓也に委ねた。
「一緒に行こう」
「つまりそれって」
「いいって言ってるの」
 呆然としたままの拓也に強い声で告げた。
「だから、そこまでいつも言われて想われてて私だってね」
「中村さんも」
「想わない筈ないじゃない」
 本音を出した、ここで。
「聞いてるし感じてて」
 それにだった。
「見てるから、だから」
「ひょっとして僕のことも」
「気付いたのよ」
 自分の気持ちにだというのだ。
「皆川君の性格はわかったから」
「僕の性格?」
「外見はタイプじゃなくても」
 千明も素直だ、このことを隠さず言う。
「それでも、そこまで想われてると」
「いいの?その」
「いいの。好きになったから」
 怒涛の展開に戸惑う周りをよそに言っていく、拓也の正面に立ったままで。 
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