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言われるうちに

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第二章

「柔道もサンボも暗殺系でしょ」
「あの人は冗談抜きで怖いわよ」
「明らかに普通の人じゃないから」
 あらゆる意味で、である。
「医者を行かせろってこと言ったことあるけれどあれ暗殺の隠語らしいし」
「確かに辣腕家でロシアの人達からは人気があるけれど」
「洒落にならない位怖いわよ」
「私昔ヤクザやってた人があの人は絶対に人を殺したことがあるって言ってたから」
 その筋の人が見てもだというのだ。
「あの人は本物でしょ」
「っていうかヘーシングさんにプーチン大統領って」
「あんたマッチョ趣味でしかもかなり特殊なのね」
「そんな人達普通いないから」 
 ヘーシングにしてもプーチンにしてもだというのだ。
「全く、それで彼が駄目ってね」
「ちょっと特殊過ぎるわよ」
「それでもなのよ」
 千明は今は口を尖らせて周りに言った。
「私彼はタイプじゃないから」
「ヘーシングさんでもプーチンさんでもないから」
「それでなのね」
「そうなの」
 また皆に言った。
「皆川君はね」
「その皆川拓也君来てるわよ、今も」
 一人が言う、すると。
 クラスの中に一八七はあるかなり背の高い少年がいた、髪の毛は細く量が多い、それを上を伸ばし横は少し切って茶色にしている。
 身体は細くやはり細い頭と一緒に見るとストローの様だ、楽しげな目と小さな口、顔立ちはいい。黒縁眼鏡だがそれも白い顔に似合っている。
 黒の詰襟もよく似合っている、その彼を見て千明に言うのだ。
「モデルみたいじゃない」
「確かに顔はいいけれど」
「性格もいいわよ」
「それでもなの」
 やはりタイプでないというのだ。
「だからね」
「今ずっと千明見てるわよ」 
 実際にそうだというのだ。
「にこにことしてね」
「告白されたの?もう」
 別の娘が千明をじっと、それもにこにことして見ている拓也を横目で見ながら千明に問うた。
「彼に」
「それは」
「まだ?」
「まだだけれど」
「けれど告白されてもなのね」
「だからタイプじゃないから」
 ここでもこう言う千明だった、困った感じの顔で。
「そうされてもね」
「断るのね」
「仕方ないじゃない。そういえば彼随分私のこと言ってるみたいね」
「ええ、いつも言ってるわよ」
「私達にもね」
 にこにことしてだ、周りは千明に答える。
「可愛い可愛いってね」
「宇宙一可愛いとも言ってるわ」
「宇宙一って」
 その話を聞いてだ。千明は困惑しきった顔になって述べた。
「私とてもね」
「そこまでっていうのね」
「幾ら何でも」
「そうよ、だからよ」 
 それでだというのだ。
「言い過ぎよ。けれどなのね」
「そう、彼あんたにメロメロだから」
「もう好きで好きで仕方ないわよ」
「それでもね」
 千明は今度は唇を噛んで言う、拓也が自分をずっと見ていることを感じながら。 
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