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犬のお巡りさん

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第三章

 お巡りさんはまず校長先生に言いました。
「この旗がですか」
「はい、天井裏で見つかった旗です」
「そうですか、これが」
「天井裏にあったにしては綺麗ですね」
「見つけてすぐに洗濯しました」
 だから綺麗だというのです。
「そうしました」
「だからですね」
「不都合だったでしょうか」
「洗剤と水の匂いが強いですね」
 お巡りさんは旗に顔を近付けて匂いを嗅ぎながら言います。
「それもかなり」
「捜査に不都合でしょうか」
「いえ、ご安心下さい」
 大丈夫だというのです。
「これ位ならわかります」
「そうですか、それは何よりです。ですが」
「ですがとは」
「少し高校の中を歩いていいでしょうか」
「匂いですね」
「はい、その匂いを嗅いで」
 ここでもそうするというのです。
「そうして捜査をしますので」
「ではお願いします」
「はい、それでは」
 お巡りさんは校長先生の許可を得て実際にでした。
 高校の中を隈なく歩き回って匂いを嗅いで回りました、そして。
その天井裏にも入ります、そこでなのでした、
「おや」
 何かを感じました、そのうえで校長室に戻りました、そして言ったことは。
「犯人はわかりました。ですが」
「何かあるのですか?わかっても」
「この高校の先生でも生徒でもないですね」
「えっ、違うんですか」
「はい」
 そうだというのです。
「誰でもないです。ですが犯人はこの学園の中にいます」
「といいますと」
「この旗の匂いには天井裏の匂いもありました」
「天井裏に隠されていたからですね」
「はい」
「それは当然ですね」
「ですが」
 それに加えてだというのです。
「その天井裏にも色々な匂いがありまして」
「ああ、お巡りさんにはわかるのでしたね」
「犬ですから」
 お巡りさんはにこりと笑って答えます。
「わかりました」
「犬だからですか」
「そうです、天井裏には埃に鼠に」
「鼠ですか」
「これでおわかりですね」
「では犯人は」
「はい、天井裏にいる鼠達です」
 彼等がその犯人だというのです。
「彼等になります」
「そうですか、それでは」
「もう皆逃げています、どうやら旗が見つかったことですぐに危険を察した様です」
 鼠は危険を察するのが早いです、その逃げ足が天下一品です。それでもう既に去っているというのです。
「後で指名手配にしておきますが」
「ううむ、まさか鼠とは」96
「意外でしたか」
「この高校にも鼠達がいたとは」
 生徒にいるのとは別にです」
「予想していませんでした」
「こうしたことは常にです」
「常にですか」
「はい、油断大敵です」
 お巡りさんはこう校長先生にお話します。
「ですから校長室に保管してあっても」
「取られることもあるのですね」
「天井裏を開ければです」
 実際に簡単に開けて出入りできました、お巡りさんにしても。
「すぐに盗めますから」
「ですね、では今後注意します」
「そうして下さい」
「わかりました」
 こうして高校の天井裏も厳重にチェックされる様になりました。お巡りさんのお陰で事件の謎も解決したうえで、です。
 このことに皆はお巡りさんを凄いと言いました、ですが。
「そんなに凄くないよ」
「えっ、けれど」
「いつも事件を解決してますよ」
「警官なら当然のことだしね」
 そしてだというのです。
「僕には鼻があるからね」
「犬のお鼻ですか」
「それがあるからですか」
「犬なら誰でもね」
 出来ることだというのです。
「警官でそうしたお鼻があるからね」
「ううん、けれどそれが出来るって」
「普通に凄いですよ」
 皆はお巡りさんが何故凄いのかがわかりました、そのお巡りさんとお話してです。
 警官だから犬だから当然としていいことをしてもそれを誇らず真面目に働いている、そのことが既に凄いということに。
 ですがお巡りさんは今も交番の前に立って皆のお願いに応えるのでした、皆そのお巡りさんが大好きなのでした。


犬のお巡りさん   完


                     2013・2・23 
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