LIAR
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第一章
LIAR
「君は嘘吐きだね」
よく相手に言われた、付き合ってきた相手全てに。
皆私に対して微笑んでこう言ってきた。
「本当にね」
「どうしてそう思うのかしら」
「本音を隠しているからだよ」
このこともいつも言われている。そして今も。
目の前にいる今の彼は私に対して言ってきた。
「いつも本当のことは言わないね」
「そういう意味での嘘吐きというのね」
「そう、君は確かに奇麗だよ」
私の顔立ちのこともいつも言われる、誰もが最初に私を見るのは顔だった。そしてそれからいつも心を見られた。
「けれど言うことはしないね」
「多くを語らない」
「それとはまた違ってね」
ではどういう嘘か、それは。
「君は僕を見ていない」
「そしてそれを隠していることが」
「そう、嘘だよ」
こう言うのだった。本当に誰もが。
「僕を好きだっていうのね」
「けれど浮気はしていないわ」
そんなことはしていない、生まれてから今までずっと。
けれど本当にこう言われる、その理由は。
「君は別の。今はここにいない」
「その誰かを見ている」
「そうだよね、君は僕を見ずにもういない彼を見ているよね」
「そしてそのことを言わないことが」
「僕が君を嘘吐きという理由なんだ」
それでだという、本当に誰もが。
「退くのことは好きじゃないね」
「それは」
「ここから先の言葉は嘘になるよ」
相手の方が私に言う、これもいつもだ。
「それでもいいかな」
「この言葉自体が嘘になるでしょうけれど」
私は目を伏せて自嘲する笑みで相手に答える。
「私は嘘は言わない主義よ」
「言いはしないね」
「ええ、言葉としてはっていうのね」
「そう、言葉ではね」
その他のことでわかる、人は言葉だけが物事を伝える手段ではないからだった。このことは私もわかっている。
その私はいつも言われた。
「言わないよ。そのことは間違いないよ」
「そうね。じゃあ」
「僕は君に愛されていない」
相手は誰もが悲しい顔で私に言った。
「じゃあ一緒にいる意味はないね」
「だからこそなのね」
「別れよう」
寂しい笑顔でのこの言葉を聞いたのは何度かわからない。
「それじゃあね」
「ええ、じゃあ」
私は相手の言葉を受けて目の前から去っていくのを見守る、そうしたことを何度も何度も繰り返していった。
そうしたことを繰り返す私に親しい女友達がこう言う。
「振られるのにどうしていつも告白を受け入れるの?」
「そのことね」
「そうよ、どうしてなのよ」
「忘れたいからよ」
だからだといつも答える。このこともいつもだ。
「だからよ」
「忘れたいって」
「そう、どうしても忘れたいから」
だからだった。
「受け入れて相手を好きになろうって思っても」
「出来ないのね。というか忘れたいって」
「ええ、忘れたいのよ」
彼女は私の昔のことを知っている、そして私の言葉に頷いてくれる。
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