『もしも門が1941年の大日本帝国に開いたら……』
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第三十四話
加茂大佐の炎龍討伐隊が炎龍と交戦している中、エルベ藩王国との国境付近に特地方面軍から一個旅団と戦車一個中隊、一個飛行戦隊が布陣していた。
「ふむ……やはり森林が多いな」
「九八式直協(九八式直接協同偵察機)からの報告でもそのような事があります」
「流石に爆撃で森林を焼き払うわけにはいかんからな。此方が展開しやすい場所にいると向こうは来ると思うかね?」
エルベ藩王国攻略司令官に命じられた狭間少将は元エルベ藩王国の王であるデュランに問う。
「息子が馬鹿正直なら来るぞい」
デュランはニヤリと笑った。その表情は日本軍を試しているようであった。
狭間少将はそれに苦笑しつつ、陣地構築をしている工作隊に視線を向けた。
実はこの一個旅団、戦力の半分は海軍陸戦隊一個連隊であった。(残りは歩兵第二八連隊)
帝国の反撃を予想してこの程度しか出せなかったのだ。(実際に帝国が再び反撃してくる事は無かった)
そのため、装備は旧式の三八式歩兵銃や三八式野砲(十二門)、九六式軽機関銃である。(それでも大隊砲や連隊砲は多数ある)
更に戦車中隊も旧式の八九式中戦車乙八両、多砲塔戦車の九五式重戦車二両、九五式軽戦車の代わりに九七式軽装甲車(テケ、三七ミリ戦車砲搭載型)四両の臨時編成であったのだ。
九五式重戦車など内地にあったのを無理矢理持ってきた戦車である。
最新と言えるのは航空部隊だろう。
「国境線でこれだけの森林だと向こうも此方が来た事に気付かないな」
「それでは国境線を越えるので?」
「仕方なかろう。此方はデュラン殿を協力するために来ているんだ」
「国境線付近の領主は全て儂の配下じゃ。儂を見せれば御主らに従うだろう」
デュランも賛成した事により、旅団はエルベ藩王国の国境線を越えて近場の領主の館へと進撃した。
「何事かッ!?」
「は、はい。デュ、デュラン陛下がお見えですッ!!」
「何……?」
領主のハインリッヒ・フォン・ブルクドルフは執事の報告に唖然とするのであった。
「何? 父上が国境付近にいるだと?」
「その通りです陛下」
デュランから無理矢理王位を継承したヘルマン・ド・エルベは部下からの報告に耳を疑った。
「ふん、耄碌した父上が何しに来たんだ?」
「は、王位を返せと……」
部下の言葉にヘルマンは笑った。
「耄碌したと思ったら頭も可笑しくなったのか父上は? エルベ藩王国は最早私の物だ。父上の出番は無い」
「ですがデュラン殿に同調する貴族もおります。更にアルヌスの丘の異世界の軍もいると……」
「父上が負けたのは連合軍で協調していたからだ。我がエルベ藩王国軍は精鋭揃い。異世界の軍など相手ではない」
ヘルマンはそう言って笑い、軍の出撃準備を命令した。
アルヌス戦役から帰還した将は出撃に反対したが、ヘルマンはそれを捩じ伏せて約五万の兵力で国境線へと向かったのである。
一方、エルベ藩王国攻略部隊は国境付近の貴族達と会合を重ねて兵力を加えた。(それでも約七千名ほどしかいない)
デュランとの会合で国境付近の貴族達は全てデュラン側に寝返ったのだ。
「ヘルマンが此処へ来るとしたら二日か三日じゃな」
「それまでには陣地構築も完了しています。航空部隊から航空偵察をしてもらい戦力を把握しませんと」
デュランと狭間少将は天幕でそう話していた。そして九八式直協からの偵察報告が舞い込んできた。
「……兵力はかなりの多めですな」
「それでも君らなら勝てるだろう?」
「……無茶言わんで下さい」
デュランの言葉に狭間少将は溜め息を吐いた。狭間少将は全軍に警戒態勢を発令した。
二日後、エルベ藩王国軍はブルクドルフ領に侵攻した。
「敵エルベ軍来ますッ!!」
「砲撃用意ッ!!」
野砲隊の三八式野砲十二門が榴弾を装填する。
「航空部隊に支援要請を打電せよッ!! 野砲隊は敵エルベ軍が射程に入り次第、砲撃始めェッ!!」
狭間少将はそう叫んだ。そしてエルベ藩王国軍が三八式野砲の最大射程に入った。
「撃ェッ!!」
十二門の三八式野砲が火を噴いた。榴弾は放物線を描きながらエルベ軍に着弾してエルベ軍の兵士を吹き飛ばした。
「陛下ッ!! 敵の攻撃ですッ!!」
「な、何だこの攻撃は……」
三八式野砲の攻撃を見てヘルマンは唖然とする。
「陛下、御指示をッ!!」
「と……突撃だ突撃ッ!! 奴等は少ないんだッ!! 機動力で奴等を潰せッ!!」
ヘルマンは突撃命令を出してエルベ軍は突撃を開始した。
「敵エルベ軍突撃を開始しましたッ!!」
「野砲隊は引き続き砲撃せよッ!! 歩兵砲、大隊砲、連隊砲も砲撃始めェッ!!」
九二式歩兵砲や四一式山砲が砲撃を始める。が、それでもエルベ軍は引かず、戦車中隊も砲撃を始めた。
旧式の八九式中戦車乙や九五式重戦車はとても活躍した。
彼等の戦車砲は榴弾火力はエルベ軍の兵士を殺傷するのには十分過ぎる砲であった。
更に守備陣地からも六.五ミリの三八式歩兵銃や九六式軽機関銃が射撃を始めた。
六.五ミリ弾でもエルベ軍の鎧を貫通する事が出来、エルベ藩の兵士は次々と倒れていくのであった。
後書き
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