ファルスタッフ
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第三幕その二
第三幕その二
「真夜中の鐘が鳴りますと不気味な気配が辺りのしじまに漂い」
「彷徨う亡霊達は群れを為して姿を現わし黒い狩人が公園に来ます」
アリーチェが言う。ファルスタッフはそのおどろおどろしさを演出した声に聞き入り完全にクイックリーが話していると思ってしまっている。
「狩人はゆっくりと死人の無気力さで歩きます。その土色の顔で」
「恐ろしいお話ね」
「本当なのですか奥様、それは」
「御伽噺よ」
アリーチェはナンネッタとメグにこう断る。
「乳母が子供を寝かしつける時のね」
「ああ、それなのねお母様」
「そういうことよ」
「幹のところまで来るとそこで妖精達が出て来て男に二本の角を乗せます」
「面白いな」
フォードは今のクイックリーの言葉に頷く。
「そんな話なのか」
「貴方もお気をつけを」
「わかってるよ。嫉妬はもう懲り懲りだよ」
こう妻に言葉を返す。
「それはね」
「わかったわ。そうそうナンネッタ」
「何?お母様」
「貴女は妖精の女王様よ」
「妖精の!?」
「そうよ、白いドレスに白いヴェールに」
「ええ」
あまりよくわからないまま母の言葉に頷く。
「それでピンクのベルトをしてね」
「わかったわ」
「それで愛らしい調べを歌ってね」
「随分込んでるのね」
「貴女だけじゃないしね」
さらに言うのだった。
「メグは森の緑の妖精」
「ええ」
「クイックリーさんは魔女よ」
今クイックリーはいない。それでも言うのだった。
「後は子供達を集めて私と一緒に妖精や精霊や小悪魔や蝙蝠に」
随分と色々である。
「それであの破廉恥漢をやっつけてあげましょう」
「皆でなのね」
「そうよ、皆で」
笑顔で娘の問いに答える。
「あの男が自分のよこしまな考えを白状するまで責めてやって。それからは」
「それからは?」
「仮装を取って夜が明けるまでパーティーよ」
そのことにも考えを巡らせての笑顔だった。
「それが終わってお家に帰るの。どうかしら」
「いいと思いますわ。それでは」
「樫の木の下で」
クイックリーに答える。
「皆さんもそれで宜しいですね」
「はい、それで」
「わかりました」
フェントン達もそれに頷く。これで話は決まりだった。
「それでは皆様、これで」
「はい、これで」
「樫の木の下で」
皆これで別れる。だがフォードとカイウスが残っていた。二人はコソコソと何やら話をしていた。
「覚えましたな」
「ええ」
カイウスは真剣な顔でフォードの言葉に頷いている。
「白いドレスとヴェールに」
「ピンクのベルトですぞ」
「よく覚えました」
カイウスはそのことを頭に入れてあらためて頷く。
「そういうことで」
「はい、それで貴方は」
「私は修道僧のマントを羽織って出ますので」
「わかりました。修道僧のですな」
「ええ」
またフォードに対して頷く。
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