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万華鏡

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第三十五話 厳島神社その十四

「言われてたんだよ」
「それが嫌だったの」
「それでこれやられたんだよ、よくさ」
 言いながら右手で水平チョップを出し、足を少し開いて。
「アッパーーーてな」
「ジャイアント馬場さん?」
「アンドレさんの物真似もされたよ」
 もう一人の巨人レスラーだ、馬場は十六文キックでありそのアンドレ=ザ=ジャイアントは十八文キックだった。
「あたしそこまででかいかって思ったよ」
「流石にそこまでは大きくないけれど」
「馬場さんやアンドレさんって」
「あたし猪木さんなんだよ」
 アントニオ猪木派だというのだ、華麗かつダーティな試合で知られて魔性の闘魂だ、相手の急所を蹴り反則スリーパーで締めて倒したこともある。
「そっちならいいけれどな」
「馬場さんやアンドレさんはなの」
「嫌だったのね」
「嫌っていう程度じゃなかったけれどそれでもな」
 美優はその頃のことを思い出して苦笑いになって言う。
「そこまで大きいかってな」
「まあ女の子に馬場さんもね」
「普通はないわよね」
 景子と彩夏は美優にこう述べた。
「ちょっとその男の子達も性格悪いわね」
「よくないわよ」
「参ったよ、あの時は」
美優も今は苦笑いだった。
「本当にさ」
「やっぱりそうだったのね」
「これが猪木さんだったらな」
 ここでも猪木を言うのだった。
「よかったんだけれどな」
「猪木さん好きなのね」
「あたしそっちなんだよ」
 猪木派だというのだ。
「格好いいからな、馬場さんもよかったみたいだけどな」
「あっ、馬場さんね」
 ここで琴乃が出て来て言う。
「私実はプロレスはね」
「そっちなんだな、琴乃ちゃんは」
「そう、馬場さん好きなの」
 彼女の場合はというのだ..。
「実はね」
「まああの人もいいけれどな」
「美優ちゃんは猪木派なのね」
「どっちかっていうとな」
 そうだというのだ。
「猪木さんだよ」
「ううん、じゃあ延髄斬りとかも」
「大好きだよ」
 美優はにこりと笑って答えた。
「あの技が決まると気持ちいいよな」
「まあね、馬場さんはもういないから」
 実は琴乃が幼い頃に亡くなっている、実は彼女はその目では馬場を見ることは適わなかったのである。
「猪木さんはいてくれているから」
「まあな、相変わらず話題を提供してくれるしな」
 いい意味でも悪い意味でもだ。
「人殴るしな」
「あれ考えたら凄いわよね」
 彩夏は猪木のビンタの話について言った。
「人を叩いても感謝されるんだから」
「普通捕まるわよね」
 景子も言う。
「そんなことしたら」
「あの人は別なのね」
「猪木さんだったら何をしても許されるのかしら」
「そうだよ」
 美優は景子の今の言葉に確かな自信で答えた。
「あの人はそうなんだよ」
「何か凄い人ね、本当に」
「話せば話す程」
「何ていうか」
「そんな人もいるのね」
「というか何で皆プロレス好きなのかしら」
 琴乃は自分達が女の子であることからふとこう言った。 
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