MASTER GEAR ~転生すると伝説のエースパイロット!?~
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023
学校に登校していたハジメとファムが宇宙にゴーレムが出現したという報告と、自分達にそのゴーレムを撃退せよという指令を受けたのは、丁度二時間目の授業が終わった時だった。
指令を受けたハジメとファムはすぐにリンドブルムを停めてある基地に向かうと、そこですでに集まっていたコロネル大佐、ソルダ、フィーユ、エイスト達四人と合流してリンドブルムに乗り込み宇宙へと上がった。
「イレブン少将。目的の宙域につきました。艦の前方にゴーレムの反応を確認。モニターに出します」
ゴーレムが出現した宙域にリンドブルムが辿り着くと、ブリッジのオペレーター席に座っていたソルダがキーボードを操作し、ブリッジにスクリーンが現れる。
「……岩?」
スクリーンを見て最初に口を開いたのはエイストだった。
エイストが言うとおりスクリーンに映し出されたのは巨大な鈍色の塊で、一見すると宇宙に漂うデブリのように見えた。だが、
「…………!? 違う……」
スクリーンを見つめるコロネル大佐が何かに気づいたのか、額に一筋の汗を流してエイストの言葉を訂正する。
「違う? コロネル大佐、どういうことですか?」
「イレブン少将、あの塊の上の方を見てください」
コロネル大佐がハジメに答えてスクリーンに映る鈍色の塊の上部を指差すと、ブリッジにいた全員が彼女が指差した方を見る。するとそこには昆虫の頭部と胴体をデフォルメしたようなゴーレムの体が生えているのが見えた。
「うわっ!? 何ですかあのキモい虫は?」
「あれって、もしかして蜂……なのかな?」
スクリーンに映るゴーレムの体を見てファムとフィーユが口々に言ってコロネル大佐が頷く。
「そうだ。あれは昆虫タイプのゴーレム……それも『マザーゴーレム』だ」
『……………………っ!?』
コロネル大佐の言葉にハジメを除いたブリッジの全員が凍りついた。
「あの……マザーゴーレムって何ですか?」
「マザーゴーレムとは鉱物や金属を吸収することにより無数のゴーレムを生み出す能力を持った巨大ゴーレムのことです。分身を生み出す数はその固体によって異なりますが、昆虫タイプのマザーゴーレムのゴーレムを生み出す数は他のマザーゴーレムに比べて群を抜いています」
(無数のゴーレムを生み出す巨大なゴーレム……。大規模戦闘ステージのボスのことか?)
コロネル大佐の説明にハジメはゲームのマスターギアにあった「大規模戦闘ステージ」と呼ばれるステージを思い出す。大規模戦闘ステージはマスターギアと戦艦の両方を操作してゴーレムを生み出す巨大ゴーレムを撃退するという内容で、その巨大ゴーレムこそがコロネル大佐の言うマザーゴーレムなのだろう。
「っ!? 前方のゴーレム反応が増大! マザーゴーレム、ゴーレムを生み出そうとしています!」
ソルダが報告をするのと同時にスクリーンに映るマザーゴーレムに異変が起こった。
『………』
ギギギギッ!
マザーゴーレムの体が生えている岩の塊、蜂の体でいう腹部の表面にいくつもの膨らみができたかと思うと、そこから通常の大きさの蜂の外見をしたゴーレムが生まれ出た。
「ちょっ!? ちょっと待てよ! 何でいきなりガキ生んでるんだよあの蜂は!? この宙域にアイツのエサになりそうなものなんてなかっただろ!?」
ゴーレムを生み出すマザーゴーレムを見てエイストが叫ぶがそれをフィーユが否定する。
「いえ……。あのマザーゴーレムが出現した時、出現に居合わせた一隻の軍艦が撃沈されたとの報告がありました。恐らくは……」
「その軍艦を喰ってガキを生んだってことか? あの女王蜂は?」
ハジメが冷や汗を流しながら呟くエイストの言葉を聞いていると、いつの間にか横に立っていたファムが耳打ちしてきた。
「ハジメさん……。これはちょっとマジでヤバいですよ。手遅れにならないうちに早目に倒したほうが……」
「分かっています。僕とシヤン大尉は機体に乗って出撃。他の人達は戦闘体制のままここで待機してください」
ブリッジのメンバーに指示を出すとハジメはサイクロプスがある第一格納庫へと向かった。
「おいおい! 何だよアレは!?」
「これは……凄いですね……」
それぞれ機体に乗って出撃したエイストとハジメだったが、二人は前方に広がる光景を見て思わず驚きの声をあげる。
ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブッ!
ハジメとエイストが乗るサイクロプスとオルトロスの前方には蜂の外見をしたマザーゴーレムの姿があり、その周囲にはすでに百匹近いゴーレムの兵隊蜂が女王蜂を守っていた。しかもこうしている今も、マザーゴーレムが何十体もの新たなゴーレムを生み出そうとしているのが見えた。
「俺達が出現するまでニ、三分くらいしか経っていないだろうが!? それでこれかよ?」
「これは本当にここで何とかしないとまずいですね」
『イレブン少将。シヤン大尉。軍本部からそちらに向けて迎撃艦隊が出撃したとの報告がありました。しかし到着するまで今しばらく時間がかかりますので、それまでイレブン少将とシヤン大尉の二人だけで何とかもたせてください』
「はっ! 言われなくてもこちらは最初からそのつもり……って! 何だありゃ!?」
「シヤン大尉? 一体どうし……えっ!?」
コロネル大佐からの通信に答えてオルトロスに戦闘態勢をとらせようとしたエイストが目を見開いて叫ぶ。何事かと思ったハジメがエイストの視線の先を見ると、マザーゴーレムに産み出された兵隊蜂の半数がベット・オレイユに向かおうとしていた。
「ゴーレムがベット・オレイユに向かっている!?」
「ちぃっ! あのクソ蜂共が! いかせるか……!?」
ブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブブッ!
エイストがベット・オレイユに向かおうとするゴーレムの群れに突撃しようとした時、残っていたゴーレムの半数がサイクロプスとオルトロス、リンドブルムに襲いかかってきた。
「くっ!? これはいよいよ本気でまずいな。シヤン大尉! ベット・オレイユに向かっているゴーレムは僕が何とかします! ですからシヤン大尉はリンドブルムの防衛を!」
「任せろ! しくじるなよ、少将殿!」
「分かっています!」
ハジメはそれだけ言うと、狙撃ポイントを探すためサイクロプスを発進させた。
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