好き勝手に生きる!
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第三十話「白黒といったらオセロだよね?」
前書き
お久しぶりです。久々に更新します!
現れたのは一振りの剣だった。
白と黒が均一に入り混じった西洋剣。
神々しい光と禍々しい光を放ちながら、『騎士』の手元に現れた。
「みんなの想い、確かに受け取ったよ……」
慈しむ目でその剣の柄を握りしめた木場は静謐な瞳をバルパーに向ける。それまで浮かべていた怒りを呑み込み、静かな激情を湛えて。
「バルパーガリレイ、あなたを倒さない限り悲劇が繰り返される。今ここであなたを討ちます」
「ふん、研究に犠牲は付き物だ。ただそれだけのことではないか」
犠牲を当然の産物だと受け止めてるジジイには何を言っても無駄だ。木場もそれが分かったのかギリッと歯を噛み締めた。
ホントにむかつくジジイだぜ! 絶対に倒せよな木場!
「木場ぁぁぁぁぁっ! そんなジジイぶっとばせぇぇぇぇぇ! 仲間の想い無駄にすんじゃねぇぞぉぉぉぉぉ!!」
「やりなさい、裕斗! 成し遂げて見せなさい! エクスカリバーを越えて、自分で決着をつけるのよ! あなたはこのリアスグレモリーの『騎士』なのだから、私の騎士がエクスカリバー如きに負けるだなんて許さないわ!」
「信じてますわよ!」
「頑張ってくださいー! 木場さーん!」
「ファイトです、裕斗先輩……」
仲間の皆も木場にエールを送る。皆の想いあいつに届け!
「イッセーくん、部長、朱乃さん、アーシアさん、小猫ちゃん……。…………僕は剣になる。部長、リアスグレモリーの騎士として、眷属を守る一振りの剣に」
覚悟を秘めた目で剣を構える木場。対してバルパーを庇う様にあのフードを被った男が前に出た。
「僕は君に恨みは無い。君がなぜバルパーの味方をしているか分からないけど、退いてはくれないだろうか」
木場の問いに男は小さく首を振った。
「そう、残念だよ……。なら、君を倒して前に進む!」
正眼に構えた木場は一瞬で男の眼前に躍り出た。相変わらずなんて速さだ!
「禁手『双覇の聖魔剣』、聖と魔を有する剣の力を受けてみるがいい!」
下から救うようにして切り上げた斬撃をエクスカリバーで難なく防ぐフードの男。あの速度についていけるなんて、あの男も相当強いぞ!
男の持つエクスカリバーの刀身は透けて見えない。『透明な聖剣』ってやつの効果だろうか?
縦横無尽に駆けながら四方八方から攻撃を仕掛ける木場。それを男は一歩も下がらず、すべて片手で受け止めいなしている。
完全に見切ってる。どうすんだ、木場……!
「――っ! 魔剣創造!」
男の周囲に魔剣が生える。木場の魔剣創造だ!
逃げ道が塞がった! 正面に回り込んだ木場が突きを繰り出す!
男の右手が残像を引き、周囲に生えた魔剣を粉々に斬り砕く。しかし回避に間に合わなかったのか、首を傾けて突きを避けた男のフードが僅かに切り裂かれた。
「そうだ、そのままにしておけよ」
横からゼノヴィアも参戦した。右手を宙に掲げ何やら呟いている。
「……御名において、我は解放する。――デュランダル!」
デュランダル!? 俺でも聞いたことあるぞ、その名前! エクスカリバーに匹敵するほど超有名な聖剣じゃん!
「デュランダルだと!?」
「貴様、エクスカリバーの使い手ではなかったのか!」
バルパーばかりかコカビエルまでもが驚いているようだった。皆の度肝を抜いた当の本人はしれっと口にする。
「生憎、私はエクスカリバーの使い手も兼任していたに過ぎない。本命はデュランダルの使い手だよ」
バルパーのジジイが唾を飛ばして何やら喚いている。それをつまらなそうに聞いていたゼノヴィアは欠伸交じりに呟いた。
「よく喋る口だな。今からこのデュランダルでその口が二度と開かないようにしてやる。この聖剣は破壊力だけは既存の聖剣の中でもぴか一でね、少々私も手を焼いているんだ。故に異空間に保管しなければならない破目になったが……まあ、それはいい」
そんな危険なもんなんですか! 大丈夫なのソレ!?
当の本人である教会娘は何でもないように手の中の聖剣を弄んでいる。左手にエクスカリバー、右手にデュランダルを構えたゼノヴィアは楽しそうに口角を吊り上げた。
「さあ、エクスカリバー対デュランダルの頂上決戦だ。感謝するぞバルパーガリレイ。こんな機会滅多にないからな」
ゼノヴィアの持つデュランダルから神々しいオーラが立ち上って来た。うう、こんなに離れてるのに背筋がぞくぞくするよ……。
「では、いくぞ!」
木場ほどではないが迅速な踏み込みで男の間合いに入ったゼノヴィアはその聖剣を一閃させる。
聖剣を掲げて防ぐ男だが、脆い音を響かせて砕け散った。透明化していたエクスカリバーがその姿を現す。
余波でグラウンドの一部が大きく抉れた。
「つまらん……所詮は折れた破片をかき集めた紛い物か。このデュランダルの相手にもならない」
つまらなそうに一瞥するゼノヴィア。い、一撃ってどんだけですか……。
無防備になった男の懐に木場が潜りこむ。
「これで決める!」
弧を描く白と黒の刀身が男のエクスカリバーと衝突し――パキィィィンッ、という金属音が鳴り響いた。
エクスカリバーを砕いた音だ。
「見てくれていたかい……? 僕たちの力は、聖剣を越えたよ……」
「……零時二十八分。時間通り」
何かを呟く男。
聖剣を砕いた勢いを殺さず、そのまま木場は男の胴を薙ぎ払った。
† † †
やった……木場の奴やりやがった! エクスカリバーを砕いたんだっ!
思わずガッツポーズをする俺。
ハルバーが唇を戦慄かせて呟いた。
「せ、聖魔剣……? ば、バカな……ありえん。相反する聖と魔が混合するだと……」
バルパーガリレイの顔は信じられないモノを見たような顔で木場の剣に視線を向けている。
そうだ、まだ終わっちゃいない。コイツと、そしてあのコカビエルを倒さない限り俺たちに明日は無いんだ。
何かに気がついたのか、バルパーの目がくわっと見開いた。
「そ、そうか……わかったぞ! 相反する二つの要素が混じり合うにはこれしかない! すなわち、魔王だけでなく神も――」
ズン――!
何かを言い掛けたバルパーだが、そんなジジイの胸元を一条の光が貫いた。
吐血するバルパー。倒れ伏すジジイの元に駆け付けた木場がヤツの脈をみるが、首を振った。
光の槍を打ち出した張本人である男――コカビエルはそんなバルパーを見下ろして嘲笑っていた。
「そこに気が付くのは優秀な証拠だ。誇るがいい、この俺に殺されるのだから。まあ俺は最初から一人でも問題なかったが」
こいつ、最初っから見放すつもりで――。
コカビエルは地面に降り立ち俺に視線を向けてきた。
「おい、赤龍帝の小僧。限界まで力を溜めて誰かに譲渡しろ」
「私たちにチャンスを与えるつもり?」
「チャンス? いいや、これはハンデだ。俺とお前たちの力の差など歴然。こうでもしないと俺が楽しめないからな」
決して負けることは無いと確信しているコカビエル。確かにその言動は何とも言えない説得力があった。
――って、駄目だ駄目だ! 俺がこんなんじゃ!
頭を振って弱気を振り切る。そうだ、こいつがどんなに強く偉い堕天使でもそんなの関係ない。こいつを倒して明日を迎えるんだ!
部長に視線を向けると頷きが返ってきた。
「……イッセー、ブーステッド・ギアを」
『Boost!!』
部長の言葉に神器が応える。
それから三分に渡り倍加を続けた。
その間、眷属の皆は誰も動けなかった。
奴はただ立っているだけ、それだけで俺たちに尋常じゃないプレッシャーを与える。隙を見て攻撃なんてとてもできそうになかった。
これが堕天使幹部か……。
ブーステッドギアが一際強く輝き、倍加が完了した旨を知らせる。
「それで、誰に譲渡する?」
コカビエルは興味津々な目でこちらを見つめていた。
「イッセー!」
「はい!」
部長の呼びかけに答え、倍加した力をすべて譲渡する。部長に!
部長の身体からとてつもない魔力のオーラが立ち昇った。この魔力なら大抵のものは消し飛べる。コカビエルでもただでは済まされないはずだ!
「食らいなさい、コカビエル!」
部長の掲げた掌から特大の魔力弾が発せられた。って、すげーデカいし! 俺の身長くらいあるぞ!
これならいくらあいつでも――。
「ふははははは! いい、いいぞ小娘ども! 赤龍帝の力があればこれほどまでに高まるか、とてもいい塩梅だ。だが――」
自身を飲み込まんとする滅びの魔力の塊に掌を向けるコカビエル。
「俺には通用せん!」
奴は、自身の身長はある魔力の塊を片手で受け止めていた……。
「ぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううううんッッ!!」
拮抗する力。部長の一撃が徐々にその勢いを弱めていき、カタチを崩していく。
あそこまで高めた力でも無理なのか!?
「もらった!」
コカビエルの気が逸れている隙をついて背後に回り込んだゼノヴィアが、デュランダルを振りかぶっていた。
「舐めるな小娘っ!」
素早く振り返ったコカビエルはデュランダルの剣の腹を叩き軌道を逸らす。
デュランダルを素手で!? な、なんつう避け方だよ!
「なっ――!?」
「ぬぅん!」
絶句するゼノヴィアの腹に掌底を撃ち込まれる。まるで大型トラックと衝突したような勢いで弾かれた。
「雷光よ!」
朱乃さんの腕から光を宿した雷が迸る。しかし、それもコカビエルの翼に薙ぎ払われた。
「私の邪魔をするか、バラキエルの娘よ!」
「あなたのことは父から聞いています。戦をこよなく愛す堕ちた者だと!」
「ふん、バラキエルも似たようなものだぞ?」
「父をあなたと一緒にしないで!」
次々と雷光が走るが、すべてコカビエルの一挙動で消されてしまう。
こうなったら、俺の新技で! いくぞドライグ!
【応っ!】
『Dragon install!!』
ダッと駆け出し奴の元へ走る。握りしめた拳に魔力を宿し、肩に設置された歯車が緩やかに回転し始めた。
「むっ、今度は赤龍帝の小僧か。ケルベロスを葬った力は見事だったが、この俺に通用すると思うな!」
「やってみなくちゃわかんねぇだろっ! くらえ!」
『Over drive!!』
歯車の回転が激しさを増し、下降する。ガチンッという重たい衝撃とともに増幅した振動が
籠手に伝わる。
コカビエルの脇腹目掛けて放った拳は、しかし奴の拳によって迎え撃たれた。
拳と拳が合わさり合う。師増幅した振動がコカビエルの拳に伝わり内部から破壊する!
「ぬぅっ……!」
コカビエルの腕から所々鮮血が噴き出た! よし、効いてるぞ!
「だが……これしき、なんともないわぁぁぁ!」
「ぐっ……がぁっ!」
空いた片手から繰り出される拳が俺の腹に突き刺さった! ゼノヴィア同様に吹き飛ばされる。
「弱い……どいつもこいつも弱すぎるぞ! この俺を満足させられる奴はいないのかっ!」
初めて自分から前に出るコカビエル、狙いは――木場か!
「くっ……! 聖魔剣よ!」
もう一本白と黒の入り混じった剣――聖魔剣を作り出し二刀流で応戦する木場。それを見てニィと獰猛な笑みを浮かべた。
「禁手か、まったく面白い現象を見せてくれたものだ。果たしてその刃がこの身に届くかどうか、やってみろ!」
「言われなくても……!」
剣を交差させてクロスを描く様に斬りつける木場。それをコカビエルは正面から受けた。
――っ! 防御もしないで受けた!? なにを考えてんだコイツは!?
「むぅぅぅううううん!」
木場の剣は奴の身体を捉え――刀身が半ばから折れた!?
「なっ……」
絶句する木場。当然だ、渾身の一撃を防御もせずに受け止められて、剣を折られたのだから。
生身の体で刃物を凌駕するとか……どんだけだよコイツ!
「……そこ!」
「甘いは小娘!」
隙をついて背後から小猫ちゃんが襲撃する。
防備な背中に拳を叩き込もうとするが、翼が鋭利な刃物と化し、小猫ちゃんの行動を妨げた。無数の切り傷が、小猫ちゃんの肢体を傷つける!
「弱い……弱すぎる! どいつもこいつも貧弱だッ!」
くっ、うぅ……なんつう強さだよ。
本当にこいつに勝てるのか、俺たちは……。
見れば皆、難しい顔をしてコカビエルを眺めている。
暗雲たる思いが、俺の心を支配しようとしていた。
後書き
アンケートのご協力ありがとうございました。とはいっても一票しか来ていなかったのが私的に悲しいところではありますが……(泣)
アンケートで「フェアリーテイル」の世界に行ってほしいとの意見がありました。しかし、残念ながら私はその作品の概要を知らないので、一旦勉強してから検討しようと思います。
またアンケートを取る機会があるかもしれませんので、再度ご協力をお願いします!
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