八条学園怪異譚
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第三十六話 美術館にその十一
「その中も充実している」
「そうなんですか、広くて」
「色々あるんですね」
「これを機会にこれからはだ」
「美術館にも足を運ぶといいんですね」
「そして芸術品も観るんですか」
「芸術はいい」
現実に芸術を愛する者の言葉だった、日下部のその芸術思考も話される。
「人が人であることを知らしめてくれるからな」
「日下部さんって本当に芸術がお好きなんですね、お話は聞いてましたけれど」
聖花は期待する感じで言う日下部に突っ込みを入れた。
「実際に」
「好きだ」
日下部自身もこのことを認めて言う。
「だから時間があれば普段から出入りしている」
「ううん、芸術ですか」
「軍人さんって芸術にも理解があるんですね」
「人によるがな」
実際にそうだというのだ。
「軍人は教養も求められたからな」
「武士みたいにですね」
「文武両道で」
「陸軍もそうだった、それを考えると自衛隊はな」
戦後の彼等はというと。
「その辺りはかなり甘かった」
「そういえば自衛官の人ってね」
「そうよね、昔の日本軍みたいな感じはないわね」
このことは全く違っている、自衛隊にかつての日本軍の様なものはかなりなくなってしまっているのが現実だ。
「武士って感じはなくて」
「本当に自衛官って感じよね」
「いいか悪いかは別にして変わった」
そうしたところがだというのだ。
「時代と共にそうしたものも変わる、普遍ものはないのだ」
「この世にはですね」
「普遍のものはないし無謬のものもない」
日下部は愛実に言う。
「若し自分が無謬だと信じている者がいるとすればその人間はおかしい」
「時々そんな奴いますけれどね」
「自分が絶対に正しいっていう奴」
「そうした人間は相手にしないことだ」
何を言っても無駄だからである。
「それがいい」
「はい、相手にしたらかえって変なことになりますし」
「そうした人って結構汚いことも躊躇しないですから」
自分を絶対に正しいと思えば相手には何をしても構わないと考える様になる、しかもこうした考えはエスカレートもする。
「本当に注意しないと」
「こっちがえらいことになりますね」
「多少ならいいがな」
それでもだというのだ。
「気をつけることだ」
「独善的な人にはですね」
「色々と」
「そうした輩も犯罪を起こすことが多い」
全員が全員そうはしないがそうした思考の輩は極端から極端に走るものだ、それで犯罪も犯すというのだ。
「幽霊でもそうしや輩がいるが」
「悪霊になりますよね」
愛実がすぐに言う。
「そうなりますよね」
「そうだ、なる」
実際にそうだというのだ。
「怨念を持つからな」
「ですよね、やっぱり」
「悪霊も厄介だ、かなりな」
「うちの学園にはいないですがそれでもですね」
「地縛霊になることもある」
「地縛霊ですか」
「あれは厄介な場合が多い」
地縛霊の話にもなる、一体どういった存在かというのだ。
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