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真似と開閉と世界旅行

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奪われた者、奪い返す者~

 
前書き
今回は僕の精神状態的に内容の保証ができません(笑)ちなみに須郷がおかしいと感じるのはアニメ仕様だからです(爆)あと、後書きで下らないことをやっています。ではどうぞ。 

 
突如現れた思春の一撃で俺は地面近くまで弾き飛ばされた。

「く・・・思春、思春なんだろ!?解らないのか!?俺だ、亮だ!」

「知らん、私はロビン・グットフェローだ!」

ガァン!

「っ・・・またこのパターンかよ・・・!!」




もう一撃によって俺は地面に叩き付けられる。

「亮さん!」

「亮お兄ちゃん!」

「来るな!!」

亞莎とリーファを止める。

「はぁっ!」

振り下ろされた鈴音を首を捻って避け、そのまま腹に蹴りを入れる。

「っ・・・」

そして急いで跳ね起き、思春から距離を取り、離れる。


「じゃあ・・・お前は何者だ」

「私はロビン・グットフェロー。妖精王オベイロン様の部下だ」

「・・・!」

俺は息を吐き、気持ちを落ち着かせる。

「なるほどな・・・今回は洗脳系か・・・だったら・・・」

対処法なんて何時も一つだ。迷うことはない。

「全力で・・・ぶつかる!」

この世界ならお互いが死ぬことはない・・・!




















































早貴~

「大丈夫ですか?パパ、お姉ちゃん」
「ああ、ここは・・・」

「リパル、分かる?」


『それが・・・どうやらここの情報はないみたいッス』

「そっか・・・」

「アスナのいる場所は判るか?」

「はい、かなり・・・かなり近いです。上の方・・・こっちです」

俺達は元の姿に戻ったユイのナビを頼りに走り出す。辺りを見渡すとまるで何かの研究所みたいな通路・・・


「この先です!」


途中の別れ道にも迷わず、一気に走り抜け、行く手を塞ぐドアを開け放つ。すると・・・太陽が見えた。

「・・・!」

足元や周りは太い樹の枝だらけ・・・だが・・・

「無いじゃないか・・・空中都市なんて・・・」

ああ、あの男がやりそうなことだ。餌をちらつかして、遊ぶ。

「最低だ・・・」

小さく呟く。そしたらユイが不安そうに俺達の裾を引っ張った。俺とキリトはお互いに目をあわせ、頷いてからまた走り出す。しばらくして見えたものは大きな鳥籠のようなもの。アレには見覚えがあった。アスナの目撃情報にあった鳥籠だ。

「(あと・・・少し・・・!)」

そして鳥籠が目の前に迫り・・・一人の少女が目に入った。・・・一目見ただけではただの妖精かもしれない、けど俺達が見間違える筈がなかった。

「・・・アスナ」

「ママ・・・ママ!!」

ユイが叫び、腕を振ってアスナを閉じ込めていた格子を吹き飛ばした。


「ママーーー!!」

ユイが手を離し、手を広げて叫ぶ。アスナもまた、立ち上がり、ユイを抱き締めた。

「ーーーユイちゃん!!」

二人は抱き締めながら涙を流す。

「ママ・・・」

「ユイ・・・ちゃん・・・」

そしてアスナの視線は、キリトに止まった。

「・・・キリトくん」

「・・・アスナ」

キリトもアスナとユイを抱き締める。
久し振りに見る家族の再開・・・

「・・・ごめん、遅くなった」

「ううん、信じてた。きっとーーー助けに来てくれるって・・・それに」

アスナが俺を見て微笑んだ。

「早貴も、きっと来るって思ってたよ・・・」

「お姉ちゃん・・・わたしってわかるの?」

「もちろん。わたし、お姉ちゃんだもん」


・・・積もる話しは後にして、今は脱出を優先する。アスナをログアウトさせる為には専用のコンソールがいるらしい。というわけで俺達は脱出しようとするが・・・

「・・・!」

「・・・キリト?」

キリトに近寄ろうとした瞬間だった。まるで鳥籠が水中に水没したかのように景色が黒く塗り潰されていく。

「・・・な、なに!?

アスナが叫ぶ。しかも・・・体が動かない。何かにまとわりつかれたように体が重い。・・・更に・・・

「ユイ!?」

突如ユイが悲鳴を上げた・・・だけではなかった。

「リパル!」


『ま、不味いッス・・・!プロテクトが・・・咲さん、逃げーーーーー!』


「みんな・・・気をつけて!何か・・・よくないモノがーーーー!」

言葉が終わる前にユイと腰に下げたダークリパルサーが跡形もなく消滅した。

「ユイちゃん!?」

「リパル!?」

そして直後に凄まじい重力がかかり、わたし達はそのまま倒れ込んだ。

「ぐ・・・うぅ・・・」

立ち上がろうとした時・・・声がした。

「やあ、どうかな、この魔法は?次のアップデートで導入される予定なんだけどね、ちょっと効果が強すぎるかねぇ」

この話し方・・・覚えがあった。幼い頃から何度も聞いた人をバカにしたような声・・・

「・・・須郷!!」

キリトが叫ぶが須郷は笑う。

「チッチッ、この世界でその名前は止めてくれるかなあ。君らの王に向かって呼び捨ても頂けないね。妖精王オベイロン陛下と・・・そう呼べッ!!」

そう須郷は高々と叫んだ・・・


















































亮~



「たぁ!」

迷切を振りかぶり、斬りつけるが思春はそれを避ける。逆手に鈴音を持った思春がそれを逃さずに首を狙うが、それはそのままの勢いで前転して避け、肩を狙って踵落としを放つ、だがそれは左手に掴まれる。

「げっ・・・わっ!?」

そのままぶん投げられ、空中で体制を立て直す前に飛び蹴りを食らった。

「がはっ・・・」

そして思春は右から鈴音を振ってくる。

「くっ!」

ガァン!

それを防いだのだが、無理な体制だったため、迷切が手から離れてしまった。

「く、この!」

バック転をしながら蹴り、距離を取ろうとするが・・・彼女がそれを許す筈がなかった。

「ふっ!」

「っく・・・」
蹴りに怯まずに思春は突っ込んでくる。俺は素早くスペルを詠唱する。

「ーーーー!」

「くらえ!」

ガキィン!

・・・思春の一撃は、俺の腕から伸びた光の爪で防がれた。腕と足にそれぞれ光の爪が現れている。

「ビーストアーム、ビーストレッグ・・・獣双剛爪激の代わりだ」


そのまま腕を引っ掻くように振るがそこは素早く身を引き、思春は回避した。だがここで余裕を与える訳にはいかない。俺は踏み込んで回し蹴りを放つ。

ズガァ!

「・・・!」

爪で切り裂こうと思ったのに、今度は前に出て自らダメージを減らした。・・・ああ、ここまで思い通りにいかない戦闘は懐かしい。何時も彼女との鍛錬はそうだった。こっちの技が直撃することなんて稀だった。正直に言えばトータルの勝率や技の当て具合は彼女に完敗しているのだ。

「(だからって今回も負ける気はないけどな・・・)」

蹴りと拳のラッシュも全て打点をずらされて捌かれてしまう。その繰り返しは、俺の魔法の効果が切れると同時に終わった。光の爪が点滅して消滅する。

「あっ・・・!」

「そこだ!」

咄嗟に腕を交差させて葬解で防ぐ。

ガギン!

「っとぉ・・・」

わざと後ろに吹っ飛び、今度はきちんと間を取る事ができた。

「ああ・・・ホントに、思春は強いな・・・」

左手で擬音を握り締める。

「洗脳されても思春は思春だな・・・」

あの動き・・・隙あらば確実に首を狙いに来る技・・・この世界じゃ首に当たった位じゃ死なないのに。それを分かってる筈なのに・・・

「(体が覚えてるってことか・・・)」

ほんの少しだけ、嬉しくなった自分がいた。二度と会えないと思っていた少女が目の前にいる。俺はずっと鍛錬をしていた時を思い出していた。

「・・・」


彼女の洗脳は今までのに比べれば楽な部類だろう。彼女の記憶に訴えかけるような戦いをすれば・・・きっと・・・

「頼むぜ・・・擬音・・・」

チリン、鈴がなる。この鈴音に極限まで似せた擬音を使えば・・・極限まで思春の真似ができる筈だ。


「キャプチャー・・・コンプリート」

ゆっくり呟く。世界の修正力で能力は発動しなかっただろうが・・・己に気合いを入れる言葉には充分過ぎるものだ。俺は擬音を逆手に持って引き抜いた。

「鈴の音は・・・黄泉路を誘う道標と思え!!」

「・・・!!」

俺は思春に向かって踏み込んだ・・・











































早貴~


須郷がニヤニヤしながらキリトを踏みつける。姿こそ妖精王のモノかもしれないが、そんなのものは関係なかった。アイツは須郷で間違いない。するとアスナが叫んだ。

「あなたのした事は、全部この眼で見たわ!!あんな酷いことを・・・許されないわよ、絶対に!!」

「へぇ?誰が許さないのかな?君かい?それとも神様かな?残念ながらこの世界には神はいないよ、僕以外にはねぇっ!!くっ、くっ」

須郷は更に強くキリトを踏みつける。

「やめない、卑怯者!!」

アスナの言葉を無視して、須郷はキリトから大剣を抜く。それをくるくる回して遊びながら口を開く。

「・・・それにしても桐ヶ谷君、いや・・・キリト君と呼んだ方がいいかな。まさか本当にこんな所まで来るとはねぇ。勇敢なのか、愚鈍なのか。まあ今そうやってへたばってるんだから後の方かな。ククッ。まさか小鳥の巣にゴキブリともう一匹の小鳥がグルになって来るとはね!・・・そう言えば、妙なプログラムが動いてたな・・・・・・逃げられたか。あれは何だい?そもそもどうやってここまで登ってきたのかな?」

「飛んできたのさ、この翅で」

「・・・じゃあ早貴、君に聞こうか。どうやって来たんだい?」

「アンタに話すことはないわ・・・!」

わたしがそう言うと須郷はキリトから足を離し・・・わたしを蹴り飛ばした。

「早貴!!」

「君はいつからそんな口を利くようになったんだい?ま、いいか。君達の頭に直接聞けばいいことさ」

「なん・・・ですって・・・」

「君たちはまさか、僕が酔狂でこんな仕掛けを作ったと思ってるんじゃないだろうね?」

須郷は気持ち悪い笑みを浮かべながら続ける。


「元SAOプレイヤーの皆さんの献身的な協力によって、思考・記憶操作技術の基礎研究はすでに八割がた終了している。しかも試作型の実験も成功している。かって誰も為し得なかった、人の魂の直接制御という神の技を、殆ど我が物にしている!そして更に新しい実験体も手に入れたわけだ!いやあ、楽しいだろうね!!君達の記憶を覗き、感情を書き換えるのは!!考えただけで震えるね!!」



「ば・・・馬鹿げてる・・・」


「そんな・・・そんな事、許さないわよ須郷!!」

アスナが叫ぶ。

「キリトくんと早貴に手を出したら、絶対に許さない!!」

「小鳥ちゃん、君の憎悪がスイッチ一つで服従に変わる日も近いよ」

須郷は笑みを絶やさずに指を宙に向ける。

「さてぇ!君たちの魂を改竄する前に、楽しいパーティーと行こうかぁっ!!」

パチン、と指を鳴らすと上空から鎖が降ってきた。須郷はそれを取ってアスナに近づく。

「須郷・・・!何を・・・!」


須郷はその鎖についた手枷をアスナの両手首に填める。そして指をまた鳴らすとゆっくりとアスナが釣り上げられた。

「くくく・・・ハイッ!」

須郷が両手を広げるとアスナに重力がかかり、アスナの顔が苦悶に歪む。


「ひひっ、いい!いいねぇ!やっぱりNPCの女じゃその顔はできないよねぇ」


須郷が笑いながらアスナの髪を取り、匂いを嗅ぐ。

「すぅ・・・いい香りだ。現実のアスナ君の香りを再現するのに苦労したんだよ・・・病室に解析機まで持ち込んだ僕の努力を評価してもらいたいねぇ」

なにこいつ・・・気持ち悪い・・・!

「やめろ・・・須、郷・・・ッ!!」

キリトが重力に逆らい、立ち上がろうとするが・・・

「やれやれ、観客は大人しく・・・這いつくばっていろぉぉぃっ!!」


須郷が思い切りキリトを蹴り飛ばす。そして手に持ったキリトの剣を・・・背中に突き刺した。

「ぐっ・・・!?」

「キリト!!」

「システムコマンド!ペイン・アブソーバをレベル10から8に変更」

「ぁぐ・・・ぅああ・・・!」

今の名前、キリトの表情・・・須郷が何をしたかはすぐに分かった。

「くくく、痛いだろう?段階的に強くしていくから楽しみにしていたまえ。もっともレベル3以下にすると、現実の肉体にも影響があるようだが・・・さて」


須郷がまたアスナに近づき、腹部から胸にかけて指でなぞった。

「須郷・・・!お姉ちゃんに触るな・・・!」

「やめろっ・・・須郷!」

わたしも寝ているわけにはいかない。体を必死に起こそうとした時・・・

「・・・大丈夫だよ二人とも。わたしは、こんなことで傷つけられたりしない」

「くっ、ひひひっ、そうでなくっちゃねぇ。君がどこまで誇りを保てるか・・・三十分?一時間?なるべく長引かせてくれたまえよぉっ!!」

そう言って須郷はアスナのワンピースの胸元のリボンを掴み・・・服ごと引き裂いた。白い肌が露になり、アスナの顔が歪む。

「ーーーー」


一瞬、思考が白くなった。


ーーーー■■ーーーーー


「クッ、クッ、今僕が考えていることを教えてあげようか」

須郷がアスナにささやく。

「ここでたっぷり楽しんだら、君の病室に行く。大型モニターに今日の録画を流しながら君ともう一度楽しむ。君の本当の体とね・・・ひひひひっ・・・ひゃははははは!!」

アスナの眼から涙が零れた。アスナを・・・泣かせた。


ーーーー■せーーーーー


「須・・・郷ぉぉ・・・ぁぁぁああああ!!」

わたしは立ち上がり、思い切り拳を突き出した。

ガァ・・・ン!

だが、須郷の目の前で拳は阻まれ、拳から痛みが突き抜けた。

「無駄なことをするねぇ・・・それとも仲間にいれてあげようかい!?」

ゴォン!

「っあ!?」

衝撃波に吹き飛ばされる。空気が押し出されるような感覚に襲われながら、須郷を見た。

「そう言えば君、何処かに隠れているんだろう?だけどもうすぐ僕の部下が君を見つけ出す。そうそう、情報が漏れないように君に関わった人間も僕の研究の一部にしないとね」


それを聞いた瞬間、“白”に染まっていた思考がーーーー



ーーーー殺せーーーーー



ーーーー“黒”に塗り潰された・・・・・・






























































亮~

「ぉおらっ!」

ヒュン!

「っ!」

思春は身を捻って一撃を避ける。間髪入れずに蹴りを放ち、怯んだのなら擬音を振る。相手の隙を自ら作り、打ち倒す戦闘スタイル。これが俺の・・・思春の戦い方だ。その時、詠が上を見上げた。

「え・・・!?」


俺も思春を蹴り飛ばしてから上を見る。・・・そこには空から振ってくる剣があった。アレは・・・ダークリパルサー!?

「リパル!!」

詠が叫び、ワイバーンから飛ぶ。そして騎士達を踏み台にして、リパルを掴んだ。

「リパル!?どうしたの!?」

『(ジ・・・ジジジ)・・・詠・・・(ジジッ)・・・さん・・・』



ノイズ混じりの声が聞こえる。


「ちょ、ちょっと・・・!?」

詠を騎士が囲む。既にシルフとケットシーが撤退に入っているので、必然的に詠にタゲが向いたのだ。

「やるしかないわね・・・!」

詠が剣を逆手に持ち、ダークリパルサーを右手に持つ。そして落下しながら騎士達の攻撃を弾く。

「神託の盾の時といい、ホント囲まれるわね・・・串刺しになる気はないけど!!」

次々に迫る騎士を詠は全て斬り倒す。そして亞莎が詠を援護する。

「飛竜さん、お願いします!」

飛竜の上に詠が着地する。

「リパル!返事をしなさい!」

『(ジジ・・ジ)だ・・・大丈夫ッス・・・何とか』


「何よ・・・心配して損したわ・・・」

『心配してくれたッスか?』

「む・・・わ、悪い?じゃなくて、何があったのよ」

・・・あちらを見てたけど、もう余裕がない。詠とリパルが無事なのを確認して俺は思春に意識を戻す。


「はぁぁぁ!」

「っ!」


思春が斬りかかってくる。それを受け、逸らして蹴りを放つが、同じタイミングで蹴りが出され、防がれる。そのまま反動を利用して回転して横薙ぎに擬音を振るが、それもほぼ同じ軌道の一撃で逸らされた。

「・・・何故だ」

「何がだ?・・・っと!」


「何故私はお前の動きがわかる。何故私はその戦い方を知っている?」

「簡単な話だよ。この戦い方はお前の・・・誇り高き呉の将、甘 興覇の戦い方だからだ」

「違う・・・私は・・・」

「違わない。お前は俺の憧れた・・・俺の好きな・・・甘寧・・・思春だ!ロビン・グットフェローなんかじゃない!!」



「ぅ・・・!?う、あああああ!!」

思春が頭を抑え、叫んだ後・・・鈴音を構えた。

「でやぁぁぁぁ!!」


「・・・おおおお!!」

俺は全力で当たろうとして・・・擬音を宙に投げた。

「っ!」

そして思春の一撃を避け、擬音をつかーーーー


ガァン!

「・・・!」

・・・手に取る筈だった擬音は遥か遠くに飛ばされていた。見れば思春は空振った状態から一回転して擬音を蹴り飛ばしたみたいだ。・・・普通なら面喰らって擬音を弾こうって発想は出ない筈だが・・・


チャキ

「・・・二度、同じ手は通じない」

「・・・どうかな?」

首に鈴音が突き付けられるが・・・敗けではない。何故なら・・・

「俺の腕を見なよ」

「何・・・?」


俺の亮腕からは光の爪が伸びていた。さっきのすれ違い様に詠唱しておいたのだ。右の爪は鈴音を弾ける位置に、左の爪は思春の首もとを捉えていた。

「・・・なるほど、また私の負けか・・・亮」

・・・さっきの台詞からまさか、とは思ったけど・・・


「思春・・・もしかして・・・」

「ああ・・・すまない、全て思い出した・・・亮の声が、私を目覚めさせてくれた」

「思春・・・!」

爪を消し、俺は思春を抱き締めた。

「なっ!?お、おい!何を・・・」

「よかった・・・!」

「・・・亮・・・」

「よかった・・・思春だ・・・また、こうやって話してるし・・・触れてるんだ・・・また会えて嬉しいよ、思春」

「・・・ああ、私もだ。亮・・・」



「・・・すまないが、そろそろ戦線が持たない。撤退をしたいのだが・・・」

「うぇ!?あ、す、すみません!」

サクヤに言われ、俺と思春は慌てて立ち上がる。そして擬音と迷切を回収して外に出ようとした時・・・再び詠が天井を見た。

「なに?この感じ・・・どこかで・・・まさか!」


『や、闇ッス・・・!この世界では使えない筈なのに・・・しかも・・・!』

「咲の闇と似てるけど違う・・・じゃあ誰の・・・」

『駄目ッス・・・その精神状態じゃ駄目ッス!“早貴”さん』


リパルが天井に向かって叫んだ・・・

































































早貴~

「グ、ァァァァアアウゥガ!」


(まさか・・・闇!?不味い、呑まれーーーー)




わたしの中から邪魔な何かが消えた。そしてそれと同時にドス黒い何かが身を包み、わたしを変えていく。

「さ、早貴・・・!?」

「な、なんだ?こんな魔法、僕は知らないぞ・・・」

「ガァァァ・・・!!」

アスナが泣いている。キリトが苦しんでる。誰が悪い?・・・・・・




ーーーーコ イ ツ ダーーーー



水色の髪は銀に、白い肌は禍々しい黒の鎧に包まれ、息が荒くなる。・・・凄かった。力だ。力が・・・みなぎる。

「・・・ハ」

「・・・?」

「ハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

簡単な答えに行き着いた。邪魔な荷物は退かせばいい。じゃあ邪魔な人間は?・・・コロセバイイ。

「キャハハハハ!!スゴウ・・・スゴォォォォォ!!」

目の前の男の名を叫ぶ。今なら奴に痛みを与えられる。今までのお返しが出来る。ああ、楽しいな、きっと楽しいな。


「アハ!アハハハハッ!シンジャエッ!」

踏み込み、爪を突きだす。

「くっ・・・」

ガギン!

・・・見えない壁に阻まれた。須郷はまだニヤニヤ笑ってる。・・・キモチワルイ。

「どんな魔法か知らないけどねぇ。僕には効かないんだよ!それとも見た目で「・・・ザイ・・・」な・・・?」


「・・・・・・ウザイ」

ガゴォン!

「だ、だからムダなんだ・・・」

「ジャマ、ウザイ、ドイテ、キエテ、クダケテ」

ガン!

殴る。

ガン!

殴る、殴る、殴る。

ガン!ガン!

殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る殴る。

ピシッ・・・

ヒビが入った。

「ッッッォォアアァァァァアアア!!」

ガシャァン!!

割れた。

「ば、バカな・・・こ、この障壁は絶対壊れないようプログラムされ・・・」

「アハッ、コワレタ・・・♪タノシイネ・・・ネェネェ、ツギハオマエヲコワシテイイ?」



ここで初めて・・・目の前の男の顔に恐怖が宿った。

「く・・・来るな!この・・・!」

須郷が手を振るとワタシの体が少し重くなる。

「・・・コレ、ヤメテヨ。ウゴキニクイジャン」

ワタシは止まらずに体を揺らしながら歩く。

「くそ、なんで・・・何で止まらないんだよ!?」

「・・・テイ」

ビュオン!


腕を適当に振ったら・・・須郷の顔を掠めた。

「いつっ・・・ぺ、ペインアブソーバ・・・」

「・・・ダーメ」


須郷を蹴り飛ばす。

「セッカクイタミガアルノニ・・・ケシタラモッタイナイヨ・・・ネ?ウフ、ウフフフフ、キャッハハハハハ!!」

あんなに、あんなに余裕そうにしていた男がワタシに怯えてる。嬉しい・・・楽しい・・・もっと・・・もっと悲鳴が聞きたい・・・レベル3から現実に影響が出るみたいだけど、頭をゆっくり握り潰したらレベル8でも凄く痛いかな?それとも体をバラバラにした方がいいかな?それとも、それとも・・・

「(ニタァ・・・)」

「ひっ・・・」

笑いが、止まらない。この感じならリアルでも使えそう。そうすれば誰にも左右されないで・・・アア、ソウゾウガトマラナイ・・・♪

「ば、化け物・・・来るな!」

「ワタシネ・・・イッパイ、イーッパイオレイガシタイノ・・・」

「あ・・・ああ・・・」

ログアウトして逃げればいいのに・・・逃がさないけど。

「ジャア・・・イクヨ・・・?」

手を振り上げる。アバターってどんな感じ潰れるんだろ。せーの・・・

「早貴!止めて!!」

・・・動きを止め、アスナを見る。アスナは・・・泣いていた。・・・アア・・・

「マッテテ・・・スグオワラセルヨ・・・」

「違う・・・だめ、だめよ・・・」

「・・・ナニガ・・・?」


「よく、よく解らないけれど、その力はだめ。早貴が・・・早貴じゃなくなっちゃう!」


「ヘンナ、オネエチャン・・・ワタシハ、ワタシダヨ・・・?」

「違う!早貴はそんな・・・人を傷付けて笑うような子じゃない!だから止めて!」

「・・・ヤダ」

「早貴・・・!」

「ヤダ。ダッテ、コレガアレバオネエチャンヲマモレルモン」

「・・・!」

「オネエチャンハ、ワタシガマモルノ。オネエチャンガワラッテレバ、ソレデイイヨ。・・・ウレシイデショ?」


「・・・しくない」

アスナが・・・叫んだ。

「そんなの嬉しくない!!ふざけないで!!」

「エ・・・」

「妹にそんなことさせて喜ぶ姉なんかいないわ!!それに、それに・・・!」

「・・・オコッタ?・・・ワタシヲ?・・・ナンデ・・・?」


「怒るわよ!間違った事を正すのが家族なんだから!!今の早貴は間違ってる!わたしは・・・わたしはただ、早貴が傍にいれば・・・元気に笑ってくれればそれが一番嬉しい、だから・・・!」


「ウ・・・」

「そんなモノ、使わないで・・・元の早貴に戻って・・・お願い・・・」

また、泣いた。誰が泣かした?誰が・・・・・・あ。

ーーーーワタシだーーーー


「あ・・・あ・・・」


(落ち着け・・・闇に呑まれるな・・・コレに身を任せちゃいけない。コレを度を越えて使えば・・・全てを滅ぼす・・・)


「が・・・ぁ・・・」

視線が落ちて、醜悪な腕、手、指・・・そして今の状態に不似合いな綺麗な指輪が目に入った。

(咲・・・咲、止めて・・・!)

(咲さん、自分を抑えて・・・負けちゃだめッス・・・!)

二人の、声。それが聞こえた時・・・全てが、戻った。

「・・・は、ぁっ・・・!」

身に纏っていた黒い何かが四散し、わたしの体は元に戻る。そして・・・倒れた。

「う、うぅ・・・」

体が・・・動かない。指一本すら・・・

「く、くくく・・・いやぁ、いい芝居だったよ・・・」

余裕を取り戻した須郷が笑いながら立ち上がる。

「さっきの魔法は解らないが・・・とにかく、お仕置きをしなくちゃね」

須郷が手を天にかざすと・・・わたしの体に電流が流れた。

「イャァァァァァァァ!!!」

痛い。苦しい。突き抜ける痛みが思考を纏めさせてくれない。

「あ、う・・・ぁぁ・・・あ・・・」

体が痙攣し、視界が揺らぐ。リアルだったらもっと悲惨なことになっていたかもしれない。


「いい悲鳴だねぇ・・・じゃあもう一度・・・」

「そこまでだ・・・!」


なんとか焦点を合わせると、キリトが立ち上がっていた。

「やれやれ、どうやら余計なバグがあるみたいだ、ね!」

須郷が殴り飛ばそうとするが・・・キリトはその腕を掴んだ。

「お・・・?」

「システムログイン。ID《ヒースクリフ》!」

キリトが何かのパスワードを言い終えると、キリトは須郷を睨む。

「な・・・なに!?何だそのIDは!?」

須郷が飛び退り、メニューを開こうとするが・・・


「システムコマンド。管理者権限変更、ID《オベイロン》をレベル1に」


「な・・・ぼ、僕より高位のIDだと!?あり得ない!僕は支配者、創造主だぞ!この世界の王・・・神!」

「そうじゃないだろ」

「ぬ・・・!?」

「お前は盗んだんだ。世界を、そこの住人を。盗み出した玉座の上で一人踊っていた泥棒の王だ!」

キリトの言葉に須郷はわなわなと肩を震わせる。

「こ、このガキ・・・僕に・・・この僕に向かってそんな口を・・・システムコマンド!!オブジェクトID《エクスキャリバー》をジェネレート!!」

・・・だが、須郷の声は虚しく空間に響くだけだった。


「い、言うことを聞け、ポンコツが!神の・・・神の命令だぞ!!」

キリトがわたしの近くまで近づき、小声で言った。

「悪いな、サキ。・・・今度は俺に任せてくれ」

「キリト・・・」

「あの時は亮とお前に任せてしまったけれど・・・アスナだけは俺の手で助けたいんだ」

わたしは・・・笑った。

「妹に・・・それ言うかな・・・でも、いいよ。キリトになら・・・お姉ちゃんを、お願い・・・」

「・・・ああ」


わたしだってアスナを助けたいけど・・・今は、キリトに任せるしかなかった。そしてキリトはアスナを見る。アスナは微笑み、小さく頷く。キリトも頷き返し・・・叫んだ。

「システムコマンド!オブジェクトID《エクスキャリバー》をジェネレート!!」


するとキリトの目の前に黄金に輝く剣が現れた。

「コマンド一つで伝説の武器を召喚か・・・」

キリトはそれを・・・須郷に投げ渡した。そして自らの大剣を拾い上げ、突き付ける。

「決着をつける時だ。泥棒の王と鍍金の勇者の・・・・・・システムコマンド、ペイン・アブソーバをレベルゼロに」

「な・・・なに?」

「逃げるなよ。あの男は、どんな場面でも臆したことはなかったぞ。あの・・・茅場晶彦は!」

須郷がその名を聞くと顔を歪めた。

「か・・・かや・・・茅場ぁぁぁぁ!!そうか・・・あのIDは・・・なんで、なんで死んでまで僕の邪魔をするんだよっ!!アンタはいつもそうだぁ!何もかも悟ったような顔しやがってぇ!!僕の欲しいものを端から浚ってぇっ!!」

「須郷、お前の気持ちも解らなくはない。俺も・・・あの男に負けて家来になったからな。でも、俺はアイツになりたいと思ったことはないぜ。・・・お前と違ってな」



「この・・・ガキがぁぁぁ!!」

須郷は声を裏返しながらもキリトに斬りかかる。だがキリトはそれを容易く避け、浅く須郷の顔に剣をかすらせる。


「いたっ・・・!」

今、須郷にはさっきとは比にならないくらいの痛みがあるだろう。肉を斬られる痛みはわたし・・・俺はよく知っていた。

「痛いだ・・・?お前がアスナに与えた苦しみは、こんなもんじゃない!!」

キリトの一撃が須郷の剣を持つ腕を撥ね飛ばした。


「アアアァァァァ!!手が・・・僕の手がああぁぁああ!!」

キリトは更に須郷の胴を薙ぎ払う。

「グボァァァァ!!」

両断された胴が床に転がる。キリトは須郷の髪を掴み、持ち上げる。そして真上に投げ、剣を構えて・・・その顔目掛けて、突き出した。

「ギャアアアアア!!」


絶叫が響いた。須郷の体が白い炎に包まれ、消えた。


「・・・キリト」


「平気か?サキ」

キリトがわたしを抱き抱える・・・

「さっき、ヒースクリフって・・・」

「ああ・・・あの時、俺は茅場と・・・」

わたしはそこまで聞いて首を振った。

「ううん、今はそんなことや、わたしのことよりお姉ちゃんを・・・わたし、ログアウトして先に病院に向かうから・・・」

「・・・わかった」

キリトがわたしを起こしてからアスナに向かって走り出す。・・・ユイちゃんも無事だし・・・リパルもきっと・・・

「・・・」

ログアウトをする瞬間、見えたのはアスナを抱き締めるキリトと・・・こっちを見て微笑む白衣の男の姿だった・・・・・・・・・ 
 

 
後書き

「はぁ・・・」

早貴
「なんかなぁ・・・また暴走か」


「さて、じゃあ気分転換に恒例行くか」

早貴
「また作者からの無茶振り?」


「今回は・・・格ゲーの勝利台詞をやってみよう・・・だって」

早貴
「なんだそれ・・・前にやらなかったっけ?」


「さあ?今回は俺とお前だって。じゃあ行くか」







亮~

VS蓮華


「呉の誇り・・・感じたよ、蓮華」

「なんで蓮華と戦わなくちゃいけないんだ・・・!」


VS思春

「俺の勝ちだよね、師匠?」

「くそ、これで何度目なんだ・・・ごめん、思春」


VS亞莎

「・・・軍師ってさ、普通そんなに強くある必要ないよな・・・?」

「亞莎・・・まさか、闇の暴走・・・?」

VS明命

「よし、勝った!彼女に負ける彼氏じゃ格好悪いからね!」

「明命・・・ごめん、俺、明命を傷付けて・・・くっ」




「・・・あー、明るいのと暗いのね。なるほど」









咲~

VS霞

「っとと、どうやったら偃月刀でそんな素早い突きが出せんだよ・・・」

「・・・グァァァァ!邪魔をするなら、霞でも容赦はしない・・・!」


VS詠

「強くなったなぁ・・・月を守るのが物理的になるよな、それ」

「詠・・・俺は・・・俺は・・・!」



VS華雄


「つーかさ、武器の扱い以外記憶喪失って・・・どんだけ戦闘狂なんだよ・・・」

「力だけで、俺を止められると思うなよ、華雄・・・!!」

VS恋

「っしゃ、俺の勝ち!じゃあ約束通り昼飯はラーメンで・・・ってんな悲しそうな顔するな!明日は好きなとこに連れてくから!」


「恋・・・俺は、俺は取り返しのつかないことを・・・」












「・・・ええと、このキャラを対称にやって欲しい!や、前回のファイアーエムブレムの撤退&死亡も受け付けておりまーす」

早貴
「作者、シミュレーションと格ゲーとRPG好きだな・・・」


「最近ファイアーエムブレム覚醒ばっかやってるけどね。スパロボとテイルズの完全新作待ってるとか」

早貴
「あっそ・・・それじゃ、次回もよろしく!」

 
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