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リリカルなのは~優しき狂王~

作者:レスト
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第四十四話~家族の役割~

 
前書き

更新遅れて、本当にスイマセン

祭りのスタッフとして四日間働き詰めだったり、実習で山の中で活動していたり全くしっぴつできませんでした。なので、今回は二話連続投稿です。
それと今回はいつものあとがきコーナー(?)は作る暇がなかった為お休みします。

自分としては今回かなりグダグダになっていると感じているので、あまり期待はしないでください。
では本編どうぞ 

 



機動六課・食堂


 ヴィヴィオが機動六課に来て、数日が経った。その数日の間にヴィヴィオは、はじめこそライ、もしくはなのはのどちらかにべったりであったが、今では2人が仕事をしている間はなのは達の部屋でザフィーラと共に留守番を出来るようになっていた。
 まぁ、ここでツッコミを入れるべきところは、一般人のライが六課の仕事の一部を平気な顔をしながらやっていることであるが、誰よりも早くて正確な書類仕事や、機械の整備の仕事も手際よくこなすことから、誰も文句を言わないのだ。それでいいのか機動六課?
 そんなある日。いつものように食堂にて皆で朝食を食べている時にライはあることに気付いた。

「ヴィヴィオ、ピーマン嫌い?」

 ライの視線の先にはヴィヴィオの分の朝食が盛られていた皿の上に残っていた、緑色の野菜であった。
 そのライの言葉にヴィヴィオは少し肩を震わせて反応を見せる。ライの方に顔を向けたヴィヴィオは眉根を寄せて素直な気持ちを口にした。

「にがいのやぁ~」

 そのヴィヴィオの言葉に食堂で朝食を食べていた一同は苦笑していた。

「食べたくない?」

 ライの質問に遠慮がちに頷くヴィヴィオ。

「う~ん、でもねヴィヴィオ。これを作ってくれた人はヴィヴィオに食べてもらえると嬉しいと思うよ」

「え?」

「この朝ごはんを作ってくれる人は、毎日僕たちが元気で頑張れるように考えて作ってくれているんだ。だから、ヴィヴィオがもしそれを残したら作ってくれた人は悲しむと思う。ヴィヴィオも悲しいのは嫌だよね?」

「うん…………(パク)」

 ライの言いたいことが理解できたのか、ヴィヴィオは思いきって皿の上に残っていたピーマンを口に入れた。モゴモゴと数回口を動かし飲み込む。それだけの動作だが、それをした本人はとても頑張りましたという表情を浮かべた。
 それを見ていたライは笑顔で頷き、一同はヴィヴィオに拍手を送った。

「……どうする?」

 ヴィヴィオの座るテーブルから少し離れたテーブルに付いていたエリオは、同じテーブルに付いていたキャロにそう尋ねた。
 彼女は自分の苦手な人参をエリオの皿に移そうとしていたのだが、ライとヴィヴィオの遣り取りを見てその動きを止めていた。

「……自分で食べます」

 それは年上であるからか、それともライの言葉で恥ずかしくなったのか、とにかく顔を朱色に染めながらキャロは、人参の送り先をエリオの皿から自分の口へと変更した。



機動六課・隊舎


 午前中の訓練が終了し、フォワード陣が揃って隊舎に向かう途中ふとスバルが思ったことを口にした。

「そう言えば、今朝のライさんとヴィヴィオのやり取りって本当に親子みたいだったね」

 いきなりの話題であるが、スバルの意見は最もだったので、その場にいる全員が揃って頷いていた。因みにこの場にいるのは新人メンバーとヴィータである。ライは今、ヴィヴィオと一緒に部屋にいて、病室で行っていた魔力制御の練習をしている。あれは見栄えがするので、ヴィヴィオが見ていて面白がるため、ライが昼間にヴィヴィオの面倒を見る際はいつもこれをしていた。

「でも、ライさんは年齢的に言えば親子というよりは兄妹になりませんか?」

 スバルの発言に対してエリオが自分の意見を返す。そしてエリオの発言にティアナがピクリと反応し、小声で「兄さん」と呟いていたが、その場にいる誰もその呟きには気付かなかった。

「でも、いつもライさんのことを『パパ』って呼んでいますし、やっぱり親子って言ったほうがピンときますよ」

 今度はキャロが発言する。その後しばらく、『ライとヴィヴィオの関係が親子か兄妹のどちらがしっくりくる関係か』という果てしなくどうでもいい議題を話し合っていると、ふとキャロがある疑問を口にした。

「パパがライさんなら、ママって誰でしょう?」

 この話題が後に大きな出来事の引き金であることを今は誰も知らなかった。



機動六課・食堂


 少し時間は早いが昼食を食べるために食堂に向かった一同は、そこでライとヴィヴィオを見つける。

「2人も昼飯か?」

 その2人にヴィータが代表するように声をかける。手を繋いでいた2人はヴィータ達の方に顔を向けてくる。

「スバルたちか。うん、ヴィヴィオがお腹空いたみたいで。皆も?」

「はい、それにしても―――」

「?どうかした、スバル?」

 こっちを見つめてくるスバルの視線が気になってライは尋ねる。

「いえ、さっきみんなと話してたんですけど、ライさんとヴィヴィオって本当に親子にみえるなぁ~って思って」

 自信満々にそう言うスバルの言葉にはからかうような含みはなく、純粋に仲の良い親子を評価する微笑ましさを感じさせるものが含まれていた。
 スバルの言葉を聞いていたヴィヴィオは不思議そうな表情をした後に口を開いた。

「パパはパパだよ?」

 自分にとってはそれがとても当たり前なことであるように言ってくるヴィヴィオに、その場にいる皆は一瞬面食らった顔をするがすぐに笑顔になる。
 その皆の反応が理解できなかったのか、ヴィヴィオは首をかしげていた。
 一旦笑い終わるとその場にいる全員で食事を食べることになった。それぞれ自分の昼食をトレイに載せて、テーブルについていく。
 因みにトレイを運ぶ際、スバルとエリオの特盛の昼食を興味深そうな目で見ていたヴィヴィオにライが「真似しちゃだめだよ」と、一言注意していた。
 昼食を食べ始め、ある程度経った時にキャロがそう言えばという表情をしてから口を開いた。

「さっき話していたことですけど皆さんはどう思います?」

「それって……親子か兄弟かって話?」

 ティアナが確認の意味を込めてそう尋ねるが、キャロは首を横に振った。

「その話ではなくて、ヴィヴィオのお父さんがライさんなら、お母さんは誰なのかなって」

 キャロがそう言った瞬間、テーブルの一角で大きな音が響いた。その場にいた全員が何事かと音のした方に顔を向けると、手を口で抑え、顔を真っ赤にして咳き込むライの姿があった。
 ライの手には水の入ったコップがあったので、飲んでいた水が気管支にでも入ったのだろうと皆は予想していた。
 なんとか咳き込むのを収めたライは早々に残っていた食事を食べきり、トレイを持って立ち上がった。

「皆、僕は先に失礼するよ」

 返事も待たずにライはトレイを返却すると、どこか逃げるように食堂を後にした。
 その一部始終を見ていた何人かは首を傾げる。ライが機動六課に来てからそれなりの日数が経っていたが、あそこまで分かりやすく動揺したところを見るのは初めてであったからだ。

「どうしたんだろ、ライさん?」

 初めにその疑問を口にしたのはスバルであった。

「えっと、噎せているところを見られたのが恥ずかしかったんじゃないですか?」

 エリオは自分の予想を口にしていたが、確信が持てていなかったためにどこか自信無さげになっていた。そしてキャロもわからなかったのか、首を傾げている。
 だが、ヴィータとティアナは気付いていた。キャロの質問を聞いたせいでライが動揺したのであると。その証拠というわけではないが、食堂から出て行くときライの耳が真っ赤であったのが、この2人には見えていた。
 さっきのキャロの質問は言い換えれば、『ライさんの伴侶は誰ですか?』と言っているようなものである。キャロ自身は意図して言ったことではなくても、そう捉えることができたのも事実である。

「そう言えば、ヴィヴィオ。ライを追いかけなくてもいいのか?」

 ライが一人で出て行った為、残されていたヴィヴィオはいいのか?と思っていたヴィータが尋ねていた。

「お昼からはお仕事があるから、ご飯の後はザフィーラといっしょにいてって言われたよ」



機動六課・部隊長室


 食堂から逃げるように出てきたライは、そのまま隊長室に向かっていた。今日ははやての部屋で書類仕事の手伝いと、その後に恒例のボードゲームをすることになっていたためである。
 目的地である部隊長室の前に来るとライは部屋をノックした。

「…………?」

 しかし、いつもならすぐに返ってくるはずの返事がいつまでたっても来ない。

(……留守かな?)

 そう思いながら、確認の為に扉を開けるためのコンソールに触れると扉は何の抵抗もなく開いた。
 その事に驚きながらも、部屋の中を確認するとライの中にあった疑問が氷解した。
 はやての机の上には以前と同じく紙の山があった。だが前と違うのはその紙に囲まれ、上半身を机に預けるようにして眠るはやての姿があることである。

(仕事が多いから、無理もない……かな?)

 机に重ねられている紙の束を見ながらライは苦笑いしていた。
 はやてを起こすのも忍びないと思い、自分にできることからやっていこうと考えたライは重ねられている書類に手を伸ばす。そして手にした書類から目を通していくとあることに気付いた。

「…………できてる」

 ライが手にした書類は完璧に仕上げられていた。まさかと思い確認すると、机の上にある書類の九割は仕上げられている状態であった。

(頑張ったんだ、はやて)

 そう思いながら、できていない全体の残り一割にも満たない書類を持つと、ライは隊長室にあるもう一つの机に座り作業を開始した。
 これまでと違い圧倒的に量の少ない作業は一時間程で終了し、ライは手持ち無沙汰になっていた。

(はやてを起こすわけにもいかないし…………どうしよう)

「ん………ライ君?」

 タイミングよくはやてが目を覚ましライの方に視線を向けてくる。起きたばかりで視界がはっきりしないのか、はやてはしきりに目を擦っていた。

「おはよう、はやて」

「うん…おはよう…………!」

 寝起きでぼんやりしていた頭がクリアになったのか、はやては慌てた顔をし始めた。

「今日は約束の日だったから、来たんだけど………大丈夫?」

「え、あ、あはははは、そうやったな、大丈夫、大丈夫」

 どこか自分を落ち着かせるようにそう言ってくるはやては、いそいそとチェスの道具の一式を取り出していた。
 そしてそれからすぐに2人は対局を始めていた。
 最近では、ライの予測した棋譜をそれなりに超えることが出来るようになってきたはやてとティアナは今では対局でライを負かすことが目標になっていた。
 と言っても、ライの予測を超えることができるのは、はやては三回に一回、ティアナは五回に一回という頻度で、その新しい目標も2人が密かに決めたことであり、ライ本人は知らなかった。その為、今でもライは対局の途中で棋譜を書く事をしている。

「チェックメイト」

「………あぅ~~、またまけてもうたぁ~~」

 机に突っ伏しながらそういうはやてにライは苦笑で返した。

「少し、休憩しよう」

「……そやね、またコーヒー入れてくるわ」

 そう言うとはやては初めてライが書類仕事を手伝った時のようにコーヒーを入れる。この部屋へ、仕事があるたびに飲むコーヒーの嗅ぎなれたその香りが部屋を満たす。
 カップに入れられ、運ばれたその液体をライは受け取り、2人はほぼ同時にそれを口に含んだ。

「……うん、やっぱり美味しい」

「これでも、料理は得意やから、結構優良物件やで?」

 いつものはやての軽口。この後、普段のライであったなら何気ない切り返しではやてを赤面させたりする(そのやり取りがはやては実は大好き)のだが、今日のライは事情が違った。

『お母さんは誰なのかなって』

 はやての言葉を聞いてライの脳裏の食堂での遣り取りが過ぎる。これまでは意識しなかった分、今目の前にいるはやてがとても魅力的に見えてライは赤面した。

「ぇ……ぁぅ……」

 そのいつもとは違うライの反応が心配だったのか、はやてが様子を見るためにライに近づく。

「どないしたん?」

 下から見上げるようにしながらはやてはライに問いかける。だがライは動揺していて、それどころではなかった。
 半ばパニック状態になっているライは、ごちゃごちゃになっていく思考を振り切ってある選択を下した。

「……………少し用事があるから僕はこれで」

 ライが選んだのは戦略的撤退であった。
 早口でいつもよりも声のトーンがおかしくなりながらも、一言はやてに断りを入れてからライは足早に隊長室から出て行った。混乱していても律儀なライであった。


機動六課・廊下


『変だおかしい何故?何が?誰を?』

 自分の心の中で浮かんでは消えていく疑問の数々。それについて一つ一つ回答することもできずに、ライは廊下を進んでいく。この時点でマルチタスクを使用することを思いつくことができないほどに、ライは動揺していた。
 それでも自分を落ち着かせようとしていたのか、ライは目を閉じて少しでも自分の処理する情報量を少なくしようとしていた。
 だが、それがまずかった。目を閉じ、自分の思考の海にドップリ浸かっているライは普段であれば、必ず気付いていた人の足音に気がつかなかった。
 ライが廊下の曲がり角に差し掛かった時、その曲がり角から2人の人影が現れる。その現れた2人も話し込んでいたのか、ライの存在に気付かなかった。

「え、うわっ――」

「「え、キャッ――」」

 お互いの存在に気付かなかった事と、ライがいつもよりも早く歩いていたためにそれなりのスピードが出ていたこともあり、3人はそのまま倒れこむ結果になった。正確にはライがその2人を押し倒すといった感じであるが。

「つぅ~~」

「いたたた」

「なんなの~?」

 三者三様の反応をしながら、各自自分が今どんな状況になっているのかを確認する。そしてライは今度こそ本当に何も考えられなくなる。

「………………え?」

「うん?」

「なにぃ?」

 ライが押し倒したのはなのはとフェイトの2人であった。しかも、ライは2人の胸に飛び込むような体勢になってしまっていた。
 ライは今、2人と密着した部分がとても柔らかく、心地よい温もりを感じることや、2人から香ってくる、女性特有の甘い匂い等で本当に焦っていた。違う言い方をすれば、いっぱいいっぱいであった。

「…………ぁぅ」

 そして思考がショートしたのか、ライは顔を真っ赤にして気絶した。

「え、あれ、ライ君?!どうしたの?!」

「ライ?!なんか頭から湯気が?!」

 目の前で気絶したライを見ていた2人はしばらくの間その場でパニックを起こしていた。因みにこの騒ぎは、シャマルが近くを通るまで続いた。



機動六課・食堂


 ライが気絶した日の夕方、六課の主要メンバーは昼食時にしていた話をヴィータ以外の隊長陣も含めて話をしていた。因みにライは今の医療室で寝ているため、ここにはいなかった。

「パパとママ、ね」

 はやてはその単語を口にし、お昼のライの様子を思い出していた。

「皆には言ってなかったけど、ヴィヴィオの保護責任者は私だよ」

 なのはは皆に説明するように話す。ヴィヴィオは言葉の意味が分からず首を傾げていたが、他の一同は納得の表情を見せていた。

「なに?」

 自分だけ理解できていないことを察したヴィヴィオは自分の隣に座るスバルに訪ねていた。

「え~~と、なのはさんがヴィヴィオのママってことになるんだよ」

 なぜかしたり顔でそういうスバルの言葉に、驚いた表情を見せたヴィヴィオはなのはの方に顔を向ける。

「なのはママ?」

「えっと……うん、ママでいいよ」

 自分に母親という存在ができたのが嬉しかったのか、そのなのはの一言でヴィヴィオは安心したような笑みを浮かべた。
 後日、この日のことをほとんど忘れていたライは、ヴィヴィオがなのはをママと呼ぶことや、六課を家族に見立てたスバルやエリオ、キャロがライのことを兄さんと読んでくることに驚いていた。





 
 

 
後書き

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