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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第九十六話




「……此処までのようだな曹操」

 俺は左脇腹に突き刺さった絶を抜き取り、吹き飛ばされて尻から床についた曹操に刀を向けた。

「……私の負けよ曹徳。首を跳ねなさい」

 頭から血を流した曹操は観念したようにそう言ったが俺は……。

「……断る」

「何故ッ!? 貴方が恨む人物が目の前にいるのよッ!!」

 曹操はそう叫ぶが俺はそれを無視して刀を納刀して曹操と向き合う。

「曹操……いや姉さん」

「ッ!?」

 俺の言葉に曹操が驚く。

「貴女はまだ時が貴女を必要としている。此処で死んではならない。貴女を必要とする人がたくさんいる」

 俺はそう言って曹操に手を伸ばした。

「行こう……姉さん」

「……分かったわ」

 曹操は俺の手を取った。その時、船がゆっくりと傾き始めた。

「……このままだと船は沈むな。歩けるか曹操?」

「……今は無理ね」

 ちぃ、仕方ない。非常時だから……。

「ちょっと失礼するぞッ!!」

「きゃッ!? ちょ、ちょっと何を……」

「急ぐぞッ!! 舌を噛むから喋るなよッ!!」

 俺は曹操をお姫様だっこをして走り出した。両太股が痛いが我慢だ我慢。

「曹操がちいさいし、軽いから走りやすいなッ!!」

「ど、どういう事よそれッ!?」

「そのままの意味だッ!!」

 俺と曹操は喚きながら何とか出口の扉を開けて甲板に出た。

「長門ッ!!」

「華琳様ッ!!」

 甲板ではまだ三人が戦っていた。

「……何だその格好は?」

 思春がギロリとお姫様だっこをしている俺と曹操を睨んだ。お、怒るなよ……。

「非常時だから仕方ないんだよ。それより全員退船するぞッ!! 船が沈むッ!!」

 俺の叫びに仲軍は動き出して曹操の旗船から逃げていく。

「華琳様ッ!! 我々は……」

「……便乗しましょう」

「宜しいのですか?」

「構わないわ」

 曹操の表情に夏候惇は何かを感じて退船の指示を出した。

 そして全員が退船してから数分後に曹操の旗船は烏林湾に沈むのであった。

「……さて曹操。この軍船に乗り込んだという事は……」

「……そうね。我々、魏は仲に降伏するわ」

 曹操以下、魏軍は仲に降伏するのであった。仲軍の死傷者は約二千名、魏軍の死傷者は約五万名弱であった。

 戦闘が終わり俺達は美羽達がいる巴丘へと向かった。

「華琳様ッ!!」

 美羽の天幕に向かうと、先に捕らえていた旬イク達が曹操達を出迎えた。

「あぁ華琳様。御無事で何よりです」

「心配かけたわね皆」

 曹操はそう言って美羽に視線を向けた。

「袁術、私の負けよ。策は貴女が上だったわね」

「いや……妾のは運が良かったに過ぎないのじゃ。全体的に上は貴女じゃ曹操」

 美羽は曹操にそう言っておいた。

「安心なされ。貴女以下、魏軍の命は尊重致すのじゃ」

「それは安心したわ。そして貴女は代わりに対価を求める……違うかしら?」

「ハハハ、バレたのなら仕方ない。妾の下とは言わぬ。妾に力を貸してほしいのじゃ」

「理由は?」

「……漢朝の再興……ではなく、新しく王朝を建国したいのじゃ」

「へぇ……」

「劉協陛下と話し合ったのじゃが……やはり国は必要じゃからな。まぁその分、劉協陛下には王の役割をやってもらうのじゃが……」

「そのために私が必要だと?」

「そうじゃ」

「……フフ、大層な妄想ね」

「長門が描いておるいやらしい妄想よりかはマシじゃな」

「ちょッ!?」

 美羽のまさかの言葉に俺が驚く。そして夏候淵は何故俺を睨むんだ?

「でもね袁術……そんな妄想も悪くはないと思うわよ」

 曹操は立ち上がって美羽に手を差し出した。

「良いわ。協力してあげましょう」

「うむ、ありがとうなのじゃ曹操」

 そして両者は握手をするのであった。

「……問題は他にもあるのじゃがな……」

「……蜀の事かしら?」

「うむ、あやつらは何を企んでいるか分からないのじゃ」

 両者はそのような話をしていたが、取りあえずは健業へ帰還する事になった……のだが……。

「ゴホゴホッ!!」

「ど、どうした七乃?」

「どうしたんですか桜花様?」

「霞様どうしたの?」

 帰還途中、七乃と桜花、霞の三人が体調を崩したのだ。

 三人とも吐き気や嘔吐、匂いに敏感らしいのだけど……これまでまさか……。



――健業、玉座――

「美羽様」

「おぉ、どうじゃな体調は?」

 七乃達三人が玉座に皆を集めていた。ちなみに曹操達もいる。

「はい、今のところは大丈夫です」

「しかし……体調を崩したのは何だったんだ?」

 焔耶はそう呟くが……俺はとても嫌な予感をしていた。

「えぇ。つわりだったので」

『……はい?』

 七乃の言葉に玉座にいた全員が同じ言葉を発した。

「実はですね……私達、妊娠していました♪」

『……何ィィィーーーッ!?』

 七乃の言葉に皆が叫んだ。

「に、に、に、に、妊娠……」

「あら~♪おめでたい事ね。これは飲むべきね」

「私も同伴しましょう」

「さ、三人も……」

「と、取りあえず相手は誰なの?」

 皆が思い思いに言葉を呟く中、蓮華が七乃に聞いてきた。

「そ・れ・は・で・す・ね~♪」

 七乃はそう言って俺に視線を向けて三人が俺に抱きついた。

「「「相手は長門です♪(だ♪)〈や♪〉」」」

『……エエエェェェェェェーーーッ!!!』

 玉座に皆の声が響いた。

 ……やっぱり俺だったのか……。


 
 

 
後書き
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