とある星の力を使いし者
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第186話
前書き
コミケやら何やらでバタバタしてしまい、投稿が遅れてしまいました。
ですが、再開です!頑張ります!
HsAFH-11、通称『六枚羽』に搭載されている機銃とミサイルが愛穂達に向かって発射されても、あまりの常軌を逸した出来事に頭の処理が追いつかないでいた。
麻生だけは違った。
彼は右手の掌を窓に向けて突き出す。
能力を発動するのとミサイルが着弾するのとはほぼ同時だった。
爆発音が辺りに響き渡るが、爆炎と黒い煙が舞い上がる。
いくら耐爆仕様の窓ガラスでも近距離からの最新鋭のミサイルが直撃すれば、木端微塵に吹っ飛ぶのは目に見えている。
煙が晴れ、跡形もなく吹き飛んだ部屋の姿映ると思いきや、窓は破壊されておらずひび一つ入っていない。
ベランダは完全に破壊されているのを見る限り、着弾したのは間違いない。
能力で窓に干渉した麻生は窓ガラスを強化。
さらに爆発の衝撃をビルから辺り一帯に拡散させる事で、衝撃の影響をほぼゼロにした。
続けて両手を合わせ、握りしめる。
窓付近のカーペットがシャッターを閉めるかのように下から盛り上がり、窓を完全に塞ぐ。
能力で強化する事で外からの攻撃を防ぐ防壁を作ったのだ。
(これで何とか持つだろ。
後は・・・)
「き、恭介ッ!
今のは一体・・・・」
ようやく事態を呑み込み始めたのか震えるような声で愛穂は聞く。
突然の出来事にまだ麻生も答えが出ないでいたが、やる事は分かっていた。
「何が起こっているのかは俺にも分からない。
だが、一つ言える事はここに居たら危険だということだ。
最低限荷物を纏めろ、出るぞ。」
「もしかしてあの時の化け物を操る奴らが来たの?」
制理の発言に愛穂と桔梗はビクリ、と肩を揺らした。
思い出したのだろう。
ティンダロスの猟犬から発せられる狂気を。
「いや、違う。
もしあいつらならあんな露骨な兵器を使ってこない。」
ダゴン秘密教団ならあんなヘリを使うより、狂気と怨念の籠った化け物を使役して襲ってくるだろう。
レギンスならあの兵器を取り込み、武器として使用してくるかもしれないが、だとしたら星の力を使わずしてミサイルを防げはしない。
ダゴン秘密教団でなければ一体誰があんな物を使って襲ってくるのか?
思い当たる人物に心当たりがない。
「もしかしてミサカのせい?、ってミサカはミサカは恐る恐る聞いてみる。」
打ち止めは脅えながら、震える声で尋ねてきた。
実際に思い当たる節はある。
九月三〇日に猟犬部隊率いる木原数多が打ち止めを拉致した。
理由はミサカネットワークを総べる打ち止めにウィルスを注入して、AIM拡散力場を操るためだ。
ヒューズ=カザキリを召喚する為には少女の力が不可欠だからだ。
今回、あのヘリが攻撃してきたのも猟犬部隊の奴らが拉致しに来たのだと打ち止めは思った。
それを聞いた麻生は軽くため息を吐いて、しゃがむと打ち止めに軽くデコピンを与える。
「痛い!、ってミサカはミサカはおでこを押えながら言ってみる。」
「馬鹿かお前は。
ミサイルを撃ってきて、それが着弾したらお前も即死だろうが。」
あっ、と思わず言葉が出る打ち止め。
もし打ち止めの拉致が目的ならあんな雑な攻撃はしてこない。
複数の部隊を編成して、部屋を強襲する方が効率的で確実だ。
では、打ち止めでなければ何が目的なのだろうか?
(おそらくは俺だろうな。)
襲う原因は分からないが、何となく自分が原因だと麻生は悟った。
「考えるのは後だ。
早く荷物を纏めて、ここを出るぞ。」
原因は不明だが危険な状況である事を理解した愛穂と桔梗は頷き合い、制理と打ち止めの手を取って部屋に入り、荷物を纏める。
こういう時に慌てず迅速に行動できるのも、警備員での経験で、桔梗は裏の世界を知っているからだろう。
その間に麻生は神経を尖らせながら、ゆっくりと部屋の扉を開けて、廊下を様子を窺う。
廊下には誰もおらず気配も感じない。
ひとまずは襲撃の心配はないだろう。
廊下を出て、すぐ隣の部屋のドアノブを回す。
鍵はしておらず、扉は開き中に入る。
最近まで生活していたという痕跡はあるが、人はいない。
さっきの食事の時に愛穂は毎朝会う隣人とは出会わなかった、と言っていたのを思い出す。
既に今日の朝から始まっていたのだ。
今から思い出せば奇妙な点はいくつかあった。
朝にしては付近の人影が極端に少ないなど、気づけるタイミングが幾らでもあった。
(ちっ、完全に平和ボケしているな。)
もっとしっかりしていれば再び彼女達を巻き込む事はなかったかもしれない。
だが、今は悔やんでいる時間はない。
一刻も早くここを出て、かつ彼女達を傷一つ負わせることなく脱出する。
部屋を出ると、愛穂達もボストンバッグに必要な物を詰めて出てきた。
愛穂と桔梗の手にはそれぞれ一丁の拳銃が握られている。
「お守りは持ったか?」
「ちゃんと持っているわよ。」
桔梗は首から下げている『護』と書かれたお守りを見せる。
制理や愛穂も同様に首から下げているようだ。
「ずるい!
ミサカだけ持ってない、ってミサカはミサカはジタバタしながら怒鳴ってみる!」
「言うと思ったよ。
ほら。」
いつの間にか麻生の手には愛穂達が持っているのと同じお守りが握られており、それを打ち止めに投げ渡す。
危ない手つきで受け取った打ち止めは満足そうな笑みを浮かべる。
あまりの能天気さに呆れる麻生だが、いつもと変わらない打ち止めに愛穂達は小さく笑う。
「肌身離さず持っていろよ。」
「離す訳ないじゃん。
これ凄いご利益あるし。」
これを持っていれば怪我をするのが目に見えて少なくなった。
危機的状況に陥った時はこのお守りが守ってくれたりと本当にご利益がある。
少し廊下を歩くと先頭を歩く麻生はしゃがみ込んだ。
右手には音叉と呼ばれる金属楽器が握られていた。
腕の部分を軽く地面に叩く。
キーン、という甲高い鼓膜を揺らす音が響き渡る。
音はどこまでも反響し、ビル全体に響き渡るように感じた。
眼を閉じていた麻生だが、音が鳴りやむと同時に舌打ちをした。
「三二人、武装した集団が階段からこの階に向かって来ている。」
その言葉に愛穂達は眼を見開く。
三二人という数もさることあがら、武装しているという点も驚いた。
ヘリの攻撃もそうだが、完全にこちらを殺しに来ているのが分かる。
「ど、どうするの。」
殺伐とした雰囲気に慣れていない制理は顔を青ざめながら聞く。
麻生は冷静だった。
元からこのマンションに何十、何百人来ようが問題ないからだ。
「言わなかったが、このマンションは密かに俺が改造したんだ。」
そう言いながら、近くの壁に手を当てる。
すると巨大な魔方陣が浮かび上がり、紫色の光を発する。
呼応し廊下、いやビル全体にびっしりと魔方陣が浮かび上がった。
「対襲撃用に備えてある。
後は魔力を注ぐだけだ。」
瞬間、複数の断末魔が麻生達の耳に届いた。
一度だけではない。
最初に聞こえた断末魔の後に続いて、何度も断末魔が聞こえ、二分も経つと声すら聞こえなくなった。
麻生は壁から手を離して、エレベータに向かう。
「何をしたの?」
険しい表情を浮かべながら桔梗は問いかける。
「そんな眼をしなくても殺してはない。
このビルの壁と一時的に融合させただけに過ぎない。
数時間もすれば解放されるよ。」
「や、やりすぎなんじゃあ・・・・」
「相手は俺達を殺しに来ているんだ。
これくらいの報復は覚悟しているだろ。」
制理の素直な感想を否定しつつ、エレベーターのボタンを押して、この階に来るのを待つ。
彼が殺していないのなら殺していないのだろう。
その言葉を信じて、愛穂と桔梗は脱出するの優先させる。
エレベーターがもうすぐ一三階に到達する。
「ここを出てどうするの?」
「まだ決めていないがひとまず適当な所で考える必要が」
桔梗の質問に答えていた麻生だが、答えを最後まで聞く事ができなかった。
エレベーターが着き、扉が開いた瞬間、麻生の顔面に向かって金属の拳が襲い掛かったからだ。
防御する間すらなく、愛穂達が立っている位置とは反対側に吹き飛ばされ壁に激突する。
突然の事に、四人は呆気にとられていた。
「き、恭介ぇぇぇ!!」
正気に戻った制理が悲痛な叫びをあげて、駆け寄ろうとするが桔梗が肩を押える。
エレベーター内から現れたのは、全身を金属の装甲で覆われた全長二メートルの人型機械だ。
白い装甲に凹凸のあるフォルム。
銃火器のような武装が見当たらないが、間違いなく学園都市製。
警備員の愛穂ですら初見である兵器。
機動鎧。
駆動鎧と対をなす、機動型兵器。
一見すれば駆動鎧のように見えるが、中には人はおらず人口AIで動いている。
ビルに描かれた魔方陣の索敵は無機物も反応するが、麻生は生命反応だけをサーチしたために、この機械を見逃していた。
麻生が吹き飛んで冷静さを失っている制理を桔梗は必死に抑える。
彼女自身すぐに駆け付けたいが、機動鎧がそれを許すはずがない。
機動鎧は愛穂達に身体を向ける。
愛穂は躊躇わず銃口を向け、発砲するが対物ライフルを防ぐ装甲に傷一つ付かない。
「機械相手ならミサカが相手を」
「駄目じゃん!
子供は下がって!」
打ち止めは発電系能力者であり強能力者。
機動鎧相手なら戦えるかもしれないが、警備員として、何より大人としてこんな少女に戦わせたくない。
機動鎧はゆっくりと近づき、愛穂も無駄と分かっていても拳銃を撃ち続ける。
エレベーターや階段は反対側にあり、機動鎧の脇を通らないといけない。
最悪、制理と打ち止めを逃がさないといけない。
自分が囮になる覚悟を決めかけた時。
突如、機動鎧の背後から紅い槍が内側から飛び出した。
機動鎧の武装・・・ではなく背後から何者かが槍で刺し貫通させたのだ。
「いってぇな、このクソ野郎。」
悪態を吐きながら、機動鎧の影から麻生の姿が現れた。
「恭介ッ!」
眼の端に涙を溜めながら、制理が思わず麻生に抱き着いた。
実は麻生もあのお守りを持っていた。
ふとした油断から奇襲を喰らい、一撃で絶命する可能性を考え所持していたのだ。
結果、機動鎧の拳を喰らっても何とか生き残り、刺し穿つ死棘の槍を創ったのだ。
既に身体は能力で治癒している。
「心配かけたのは分かったからそろそろ離れてくれないか?」
「はっ!?」
正気に戻ったのか顔を真っ赤にしながら物凄い勢いで愛穂の影に移動する。
それを見て、愛穂と桔梗はニヤニヤ、といやらしい笑みを浮かべ、打ち止めは何が分からず首を傾げている。
「さっさと出るぞ。
長居した所で良い事はないんだからな。」
麻生達はエレベーターに乗り込み、下を目指す。
この騒動が何が原因かを確かめるために。
後書き
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