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吾輩は猫である

作者:古々
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外伝
  if sts編


ムシャムシャ……ん? どうもカオスです。
吾輩は今クラナガンでもっともホットでポピュラーな食べ放題のレストランにいる。
ここのスパゲティは絶品ということなので朝7時からずっといる。もうすでに9時を回ってるがそんなこと
を無視して食べ続けている。いや~、うまいね! 海鮮系も肉系うまい、プリプリのエビも最高だが程よい塩気の効いたベーコンもいい!


「お客様……」


ペペロチーノのうめぇぇぇぇぇぇ!! このにんにくがイイネ!


「お願いしますお客様……」


ん?
どっこからか声がするので辺りを見るが誰もいない。いったい何だったのだろうかと思いながら目の前にある皿に向き直し、フォークで全部巻きつけ一口で喰う。


「うぅ……」


またなんか聞こえたな。
そう考えながら机に積み上げられた皿を右の机に退かすと机の前で土下座をしてる店員がいた。
おおう、なんて綺麗な土下座なんだ。
そんな土下座をしてる店員に声をかける。


「あの~」

「!? は、はい!」


店員は驚きつつも笑顔で近づいてくる。うん、いい営業スマイルだ。
そんな笑顔の店員に告げた。


「このパスタ系全部2つずつお願いします」


店員が崩れた。
他の店員も同様に泣き崩れ、厨房からはシェフの泣きながら「もう材料が切れそうだ……」「もうだめだ……御終いだ……」という声がする。周りの客は唖然としながらこっちを眺めていた。


「パスタうめー」


なんだか分からんが、まぁ、いいや!





「うぅ……」

「ど、どうしたのスバル」


机に倒れ込んでる友人に声をかけた。
ここまで落ち込んでるスバルは結構珍しい。


「ん~? ああ、実はね……」


本当に元気がない。いったい何があったのだろう。誰かと喧嘩でもしたのだろうか、それとも、魔法の練習があまりうまくいってないのだろうか。


「今日、スパゲティが人気の食べ放題のレストランに行ったんだけど、なんか材料切れでお店が閉まってたんだよぉ~」


至極どうでもよかった。


「あんたそんなことで落ち込んでたの? 心配して損したじゃない……」

「だって~」


涙目になりながら食べたかった! っというような顔でこっちを見てくる。こっちみんな。


「レストランならまた明日行けばいいじゃない」


レストランならほぼ毎日やってるはずだ。それとも店内改装で当分の間休業でもあるのだろうか?
スバルから聞いた店はたしかに今テレビでよく紹介されてる味自慢の食べ放題店だ。儲けてるだろうし、リニューアルする可能性は高い。


「うんうん」


スバルは首を横に振った。


「実はお店のコックさん達が全員入院したらしんだよ」


一体厨房で何が起きたというのだ。


「そのコック達に何があったの? 厨房が爆発でもしたのかしら?」


スバルはまた首を横に振った。


「なんかすごい客が来て、店員とコックが疲労と腱鞘炎で倒れたらしいよ」


何をされたというのか。


「客って何人だったの? 20? 30?」


スバルみたいな大食いが20以上来たらさすがに倒れるわよね。


「1人」

「え」


私の耳が可笑しくなったのかしら……。最近練習のしすぎで疲れたのねきっと。


「スバル、もう一回言って」

「1人」


聞き間違いじゃなかった。
1人の客が従業員を全滅に追いやったのだろうか。そんな人間居てたまるもんですか。スバルでもさすがに無理だ。……まぁ、昔ケーキバイキングで店長に泣きつかれたことはあったが」


「他の客が撮った動画がよう○べに投稿されてたよ」


スバルは手慣れた手つきでデバイスを弄り、映像を見せてくる。その映像には――


『ハムッ ズルズルズルズルズルズルズルズルズルズルズルズルズルゴックン次!』

『ひぃ!?』


わぁーお。
積み上げられた皿で姿は見えないが食べる音と横から渡される皿の量から凄まじさが伺える。
食べる音からして一啜りで1皿を平らげてる。食べてものがスパゲティをそばみたいに食べるって……。
皿を持ってくる店員の顔なんてもう疲労と怯えが浮かんでるのが分かる。


「これを見てどう思う?」

「すごく……恐ろしいです……」


あまりの食べるのが早すぎて皿タワーから飛び出してくる手がスバルの家で見せてもらった千手観音みたいだわ……。


『おかわり! イカ墨スパゲティ! おかわり! たらこスパゲティ! おかわり! クリームスパゲティ! おかわり! アラビアータ! おかわり! ペペロンチーノ! おかわり! ナポリタン! おかわり! カルボナーラ! 吾輩のおかわりはまだまだ続くぞ!』

『やめて!? もう従業員と材料のライフは0よ!』


周りの客に突っ込まれながらも食べるのを止めない。
だがパスタ系が終わったのか疲れながらも安堵した表情の店員が1皿持ってきた。その1皿を変わらぬ早さで食べた男は爪楊枝を一本とって止まった。


『ふぅ~食った食った』


店員同士が泣きながら抱き合い、厨房からも歓声に近い声が聞こえる。


『次はステーキ系を2つずつね』

『』


その一言で店員が死んだ。


「ねえスバル、もし行く時は食欲を少し抑えときなさい……」

「……うん」


世界は広かった。そして、恐ろしかった。





ウプッ、あ~喰った。腹6分くらいは溜まったかな。


「ん? カオスじゃないか」


後ろから聞き覚えのある声が聞こえたので振り返る。そこには凛々しいピンク色のポニテ侍、シグナムがいた。


「久しぶりだな、いんp「あぁ?」すいませんでしたシグナム様」


こえーよこの辻斬り侍。デバイスを起動するなデバイスを、街中じゃ魔法使っちゃダメなんだろ。管理局員が法を破ろうとしてどうする。


「久しぶりと言うが昨日会っただろ」


はて? 何時会ったかな? ザフィーとは会ったが……。


「昨日会ったか?」

「お前な……ヴィータも居ただろう……」


ん~……あぁ!


「ああ、思い出した。そういやヴァルケンズ揃ってたな」


確かに居た。居たが……お通夜状態の女組とは全く会話してなかったから忘れてたな、てか近寄りたくなかった。


「お通夜状態のグループなんぞに混ざりたくなかったから無視してたわ。なんであんなに落ち込んでたんだ?」


女組があまりにも暗かったんで触れてなかったが何があったんだ?


「いや……」


シグナムが顔を顰め落ち込んでいく。おおう、ポニテも萎れてきた。


「実はな……主が」


はやてが……?


「婚姻届を偽造しようとしてたのだ……」

「oh」


それはそれは……。


「その他にも検挙した犯罪者の所持してた媚薬類を調べて買ってたんだ……」

「うわぁ……」


はやてそれはやばい、管理局員がしちゃいけないことや。
話してるうちにシグシグがどんどん落ち込んでいく、今にも地面に膝をついてORZみたいな体制になりそうだった。ここは男としてフォローせねば。


「大丈夫だシグナム、はやてはきっと何か考えて行動してるんだ。大事なお前たちを巻き込みたくなくって、隠してるのかもしれない」

「カオス……」


お、持ち直してきた。


「それにお前たちは家族だろ。家族であるお前たちがはやてを信じなくって何が家族だ! だから信じてやれ……はやてを……」

「……ああ、確かに私たちが主を信じなくってどうするんだ! 私たちは主を守る騎士であり家族でもあるんだ!」


ポニテもあった当初のハリとツヤに戻り始めた。あと少しで桃色ポニテ巨乳侍の復活だ。


「それに元々はやてにはその手の才能が有ったじゃないか!」

「」バタッ


あ、倒れた。
う~ん、完全に言葉を選び間違えたな。……(。・ ω<)ゞてへぺろ


「……ああ、主……あの頃の……純粋な主……うふふふ……」


巨乳侍が壊れた。
このままにしても通行人の邪魔だろうし、送ってくか。
地面で体育座りしてたシグナムをおんぶする。シグナムの大きな胸が背中に押し付けられ潰れる。


「……こりゃええな」


さて、走っていくか。






「主主主主主主あるじあるじあるじあるあるあるるあるるるるるるるるるるる」


怖いよ! 病んでるよ! 怖すぎて胸の感触が分からない、冷や汗と恐怖で吾輩のパンツがやばい。だんだんと魔力を込めながら首を絞めてきて吾輩の命がやばい。


「おおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおおお頑張れ吾輩の足! 吾輩の細胞!」


命の危機を感じ、足に魔力を集中させて走る。その速度はすでに音速を超えている。はやての家まであと少しだ、自分の体に感謝しながらひたすら走る。


「ああ、死にたい……」


今死にそうなのは吾輩じゃあ!?


走ること1分、音速で走ったためGでさらに絞まりが強くなったがなんとかなった。あんな状態でもGを緩和する障壁を出してたのはすごいと思う。贅沢をいえば吾輩にも掛けて欲しかったかな~なんて。
そう考えながらインターホンを鳴らす。


ピンポーン。


……………出ない。


ピンポーン。


……………………………反応がない。


ピンポピンポピンポピピピピピピピピンポーンピピピピピンピンポーンピンピンピピンポーンピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピンポーン!!


ふぅ……どうだこのリズムに乗った押しに強烈なインパクトを乗せた45連打の音色は! いくら寝ててもこれなら誰でも起きるだろう! たぶん!


「うっさいわ!? 人が気持ち良くヴィータを抱き枕にして寝てたのに起こしよって!」

「ぐぼへっ!?」


突然ドアが吹っ飛び吾輩に直撃した。


「ん? カオスやないの。どうしたん?」


さっきまだの怒りが嘘のように無くなり、いつも通りのはやてが話しかけてきた。


「お゛、お゛届けものどぇす……ゴフッ!」


未だ自分の世界から帰ってきてないシグナムを指差す。


「なんや、シグナムを送ってきてくれたんか。ありがとうなカオス」


体に鞭を打ち立ち上がる。


「そ、それじゃ」

「もう行くんか? お茶出すで」


帰ろうとする吾輩をはやてが引き止める。


「い、いや~眠いから早めに帰って寝たいかな~って」


さすがに今八神家にお邪魔する元気はないし、シグナムが怖いので断る。


「そうなんか~、またいつで来るとええで~」

「あいよ~」


話が終わってはやてはブツブツ言ってるシグナムを引きずっていく。ポニテを掴んで。


「痛ッ! 主はやて! イタイイタイ!! お願いしますはなしてくださアァァァァァァ……」


シグナムの抵抗も虚しく引きずられていく、その光景は戦ってる時のシグナムからは全く想像できない。
もっとも、戦ってないときはうっかり侍だが。
家の中に入っていく2人と入れ替わるようにザフィーが出てくる。ザフィーははやてが吹き飛ばしたドアを拾い、無言で直していく。その背中は哀愁が漂っていた。


「明日飲みに行こうぜザフィー……」

「……ああ」


相変わらず八神家のヒエラルキー最下位はザフィーみたいだった。




八神家から喰べ歩きながら自宅に戻る。


「ただいま~」


玄関で帰宅の挨拶をすると奥から返事が帰ってくる。


「おかえりなさいアナタ、今日はごはんにする? ライスにする? それともお・こ・め?」


全部米じゃないですかやだー。


「今日の料理は自信があるの」


それは楽しみだ。腹2分ほど残しておいて正解だったな。
玄関で話してるとリビングから小さな影が走ってくる。


「パパ~! お帰り~!」


娘である。可愛い可愛い娘である。
走って来た娘を受け止め、抱き上げる。


「えへへ~♪」


んひょぉぉぉぉぉかわええ!! なんて可愛いんだ吾輩の娘は!! 娘のためなら世界を敵に回せる!!
ああ、スリスリスリスリクンカクンカクンカスーハースーハーサイコウヤー!!


「ほら早くしないとご飯が冷めちゃうわよ」

「は~い」


料理を並べてた嫁に呼ばれ、娘と共に向かう。


「ああ、分かったよリニス」


吾輩は今とても幸せである。



















「ねえ、アナタ……このキスマークはなんですか?」ゴゴゴゴゴゴゴ


シグナムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!?


「待つんだリニス!? それはうっかり淫ピン侍の――」




アンギャァァァァァァアッァァァァァァァァアアァアァ!!!?


今回の食事

レストラン全メニュー
商店街の食べ物
リニスの手料理 
 

 
後書き
本編が詰まったので息抜きです。


リニスって既婚者が似合うと思うんですよね。
皆さんもそう思うでしょ? 異論は認めない。



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