俺様はフリードリヒ大帝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三話 「イゼルローン要塞攻略作戦」
前書き
ラインハルト初登場です。設定が原作とはずれています。ラインハルトが軍に入った理由が原作とは違います。
「第三話 イゼルローン要塞攻略作戦」
自由惑星同盟 首都ハイネセン 統合作戦本部ビル ヤン・ウェンリー准将
帝国からの情報を見ると帝国軍は二正面作戦を採用した。その事に同盟軍の将兵は安堵しているようだが正直喜べない。戦闘に勝利する諸原則に兵力分散と戦力の集結がある。敵が兵力を分散した時に分散した兵力を各個に撃破する。でも敵が分散した兵力を急速に集結させると負けるのはこちらだ。
「....先輩。ヤン先輩!!」
「ああすまないアッテンボロー。考えこんでしまった。」
「で、ヤン先輩は今回のフェザーン侵攻作戦をどう見ているんですか?」
「帝国はフェザーン・イゼルローン回廊での二正面作戦を考えているという事だろう。でもいまの同盟に2つの回廊を同時に攻める余力はない。それでもフェザーン回廊の同盟領の出口付近には基地と艦隊を配備せざるを得なくなってしまった。」
「帝国軍は艦艇数を増やしますかね」
「いや。常備軍の総兵力は全人口の1%であるべしという原則がある。1%以上にすると実体経済に悪影響がでるからね。同盟の経済悪化もこれが原因の一つだろう。帝国も同盟もこれ以上兵力を増やす事は無理だ。」
「なら帝国軍はどうやって2つの回廊を同時にまもるんでしょうかね。」
「そうだね。私ならフェザーン回廊に新しく要塞を建設して艦隊を常駐させるね。其の上で帝国領内に基地ネットワークを構築してイゼルローン要塞とフェザーン要塞を物資・艦隊の支援を受けやすいようにしておく。あえて兵力を分散させておいてイゼルローンかフェザーンで必要になっただけ分だけ直ちに兵力を動かす。無駄がなくていい。」
「なるほど。先輩がこれから提出する作戦もそれに備えるためののもなんですね。」
「まあね。帝国軍はあえて兵力分散をしたけどこちらもそれに合わせて兵力を分散せざるを得なくなった。フェザーン回廊からの帝国軍の侵攻に備えて艦隊と基地を用意せざるを得なくなったんだ。同盟の経済には打撃だよ。人口は帝国250億にたいして同盟は130億しかいない。だから兵力数も同盟の方が少ない。その少ない兵力で二正面作戦を強いられることになる。フリードリヒ4世はかなりの切れ者だろうね。」
『ヤン・ウェンリーは常に勤勉というわけではなかった。彼の興味は専ら戦史にありそれ以外のことにはお世辞にも勤勉とは言えなかった。しかしこの時のヤン・ウェンリーの予測が的中していた事を同盟軍首脳部が知るのは少し後のことである。』
自由惑星同盟 首都ハイネセン 統合作戦本部ビル シドニー・シトレ元帥
たった今フェザーン駐在武官から連絡があった。帝国艦隊がフェザーンに進駐したそうだ。フェザーン弁務官事務所は存続を認められた。その後ミュッケンベルガー元帥から今回の軍事行動の目的はフェザーン制圧であって同盟領侵攻ではない事が告げられた。最悪の事態は避けられた。しかしフェザーンに帝国艦隊が常駐するということはイゼルローン回廊を防衛する艦隊戦力が少なくなったことを意味する。帝国はイゼルローン・フェザーン方面の二正面作戦を採用したのだ。だが同盟軍もフェザーン方面軍を編成せざるを得なくなった。二正面作戦で困るのはこちらだ。ふう。
「閣下、ヤン准将がお見えです。」
副官が訪問者の到来を告げてきた。士官学校のワイドボーンとのシュミレーションを思い出す。ヤンはこの事態をどう見ているのか興味をそそられる。
「そうか。通せ。」
「ヤン准将であります。お呼びとか。」
「そうだ。君は今回の事態をどう見ている?敵の意図がこちらの兵力を分散させる事にるのは明白だ。長年恐れていた事が現実になってしまった。」
「はい。同盟の人口が帝国と同等になれば条件は帝国も同盟も同じですが人口少ないぶん同盟が不利です。フェザーン自治領を復活させなければ不利なのは同盟です。フェザーン市民は独立・自由の気風が強い。フェザーンの自治を望む商人は多いでしょう。そこにつけこんで同盟の軍事力でこれを支援する事が考えられます。」
「フェザーンを正式に独立国にすると言う事かね?」
「はい。非武装中立は軍事力があって始めて可能になります。したがってフェザーンが独立した場合は軍事力を持つでしょう。フェザーンの莫大な財力を持ってすれば恒星間の艦隊戦力を有することは可能です。艦隊の建造は同盟が請け負う必要がありますが。そして独自の軍事力を持てば帝国と同盟にたいして発言力が増します。フェザーンはこれまで通り帝国と同盟を戦わせれば良いのです。そしてフェザーンはイゼルローン回廊で戦闘が発生することを望むでしょう。」
「其の場合はフェザーンはどうやって帝国軍のフェザーン再侵攻を防ぐのかね?帝国から見ればフェザーンは裏切り者だ。」
「フェザーンは門閥貴族とも取引があります。帝国・フェザーン間の取引が全て停止すれば帝国経済は大打撃を受けます。軍事力を維持する経済基盤に直接ヒビが入るのです。帝国にフェザーンとの取引を認める代わりに帝国軍はフェザーンに再侵攻しない条約を結ぶのです。」
「なるほど。独立国フェザーンは帝国軍の侵攻を商取引で防ぐわけか。フェザーンらしいやり方だな。ただそのためにはフェザーン回廊付近でフェザーン独立戦争の勃発か。やれやれアタマが痛い。勝利すれば自由惑星同盟・フェザーン国の同盟関係が成立し帝国は窮地に立たされる。しかし我が軍が負ければ同盟軍は大打撃を受ける。少なくなった戦力でイゼルローン・フェザーンの二正面作戦を取らねばならなくなる。敗戦は必至か。」
「その通りです。だからフェザーン独立戦争は大きな賭けになります。起死回生の一手として戦争計画を練るのみにとどめておくのが無難でしょう。」
「そうだな。ならばどうする。フェザーンが占領された事で同盟経済は大打撃だ。レベロの悲鳴が聞こえるよ。」
「私はイゼルローン要塞攻略を進言します。」
「あの要塞は簡単には落ちない。だがもし要塞を手中に収める事ができればそれを餌に講和条約の締結を迫ってもよい。そういうことか。」
「はい。講和の代償としてイゼルローン要塞の返還を要求されるでしょうがそれしか同盟が生き残る道はありません。イゼルローン要塞内部に白兵戦部隊を潜入させて内部の核融合炉を奪取するか空調システムをハックして催眠ガスを流すかすればイゼルローン要塞を落とせます。」
「なるほどよくわかった。ヤン准将。貴官を第13艦隊初代司令官に任命する。貴官の任務はイゼルローン要塞の攻略だ。」
「微力を尽くします。」
銀河帝国 ノイエ・サンスーシ宮殿 フリードリヒ4世。
フェザーン制圧戦は成功裏に終わった。良かった。一安心。失敗したらシャレにならん所だった。フェザーン制圧が成功したことで
・皇帝直轄領フェザーンからの莫大な税収。
・同盟軍の戦力をフェザーン方面に分散させる事。
・帝国側の地球教勢力の壊滅
が可能になった。これで門閥貴族にも負けん。フェザーンの莫大な財力は門閥貴族を上回るからね。これかつるフヒヒヒ。
そして最も重要なのは講和条約の締結だ。こちらから申し出ることはできない。さすがに門閥貴族が大騒ぎするからね。帝国国内の軍需産業も敵に回してしまう。暗殺されるかもしれない。同盟が停戦を申し出ればなんとかなるかもしれん。同盟が生き残る為にはイゼルローンを落とすしかない。ヤンならそれができる。イゼルローン要塞を返還する代わりに停戦するという口実ができる。戦争のやりすぎなんだよ。この世界。長すぎる戦争のせいで社会全体がガタガタになってる。経済・政治・軍事全てね。だからしばらく停戦してお互いに国内政治に没頭ないと帝国・同盟が共倒れになる
同盟軍がフェザーン独立戦争を仕掛ける可能性は低いけど保険はかけないといけない。めんどいけどやるしかない。ガイエスブルグ要塞をフェザーン回廊に運ぶんだ!同盟もフェザーンも目を回すだろうね。クヒヒヒ。てことでいまはケーフェンヒラーとグリンメルスハウゼンとお話してます。まずは理論的・技術的に可能なのか調べさせないといけない。
「というわけだ。フェザーン回廊に新規に要塞を建設したいがすでに建設済みの要塞を運搬できれば其れに越したことはない。グリンメルスハウゼンは天体規模の物体をフェザーン回廊内部まで運搬できるかどうか調べさせよ。」
「承知しました。陛下。」
「ケーフェンヒラーよ。卿にはフェザーンを皇帝直轄領に編入させる計画を立案させていたがフェザーンから得られた詳細な情報を元に計画に修正を加えよ。」
「かしこまりました陛下。ただ帝国政府と門閥貴族からフェザーンからの税収を都合して欲しいとの要請が非公式ながら来ております。どのように都合しましょう。」
「門閥貴族のさらなる強大化・肥大化は避けたい。だが講和条約の締結を実施するには門閥貴族の協力は必須だ。」
「たしかに。では今回は門閥貴族を優遇することで講和条約締結への備えといたしましょうか?」
「やむをえんな。其れで良い」
グリンメルスハウゼン子爵
陛下がこれほどの御方だとは思わなんだ。ルドルフ大帝以来の大器かもしれん。お仕えのしがいがある。しかし宇宙艦隊に直接調査依頼をするわけにはいかんな。情報が漏れる。技術総監はフェザーンと後ろ暗い関係にある。ヤツにやらせるか。
クリストフ・フォン・ケーフェンヒラー大佐
さてこれで大ぴらに動ける。捕虜交換で帰国していらいずっと門閥貴族の目を気にしてきたからな。ようやくこのまどろっこしい状況ともおさらばだ。帝国は戦争をやり過ぎた。少しくらい休憩しても構わんだろう。
フェザーン 元・自治領主府 現・進駐軍総司令部 ミュッケンベルガー元帥
フェザーン占領はうまくいった。いまの所フェザーンには目立った混乱は見られない。フェザーン商人には経済にはできるだけ介入しないと約束したから協力的だ。フェザーン人は商人だ。フェザーン人としての独立・自由の気風か商取引かどちらを優先するかを両天秤にかけさせた結果だ。陛下のお陰でうまくいけば停戦できるかもしれん。イゼルローン要塞は一度犠牲にする必要があるが停戦が実現すれば安いものだ。私はしばらくフェザーンに滞在することになる。
戦艦ブリュンヒルト ラインハルト・フォン・ミューゼル大将
ミュッケンベルガー元帥の命令でしばらくはフェザーンに駐留することになった。当然だろう。いま叛徒の艦隊がフェザーンを取りくる可能性は低いが0ではない。3個艦隊もフェザーン回廊にいればそうやすやすとフェザーン攻略は実行できない。将来はフェザーンに要塞をおくのだろう。
フェザーン回廊の帝国側出口付近の星間航路の封鎖するために俺の艦隊にも出征命令が下ったのは去年の事だったな。まさか皇帝が停戦を望むとは思わなかった。最初にミュッケンベルガー元帥から一連の作戦を聞かされたときは驚愕するしかなかった。その作戦が皇帝の発案だと聞いたら尚更だった。
10年前、母上が皇帝と門閥貴族の乗った車にはねられてヴァルハラに召された。俺はそれが許せなかった。当時の皇帝オトフリートが崩御した時は腐敗しきったゴールデンバウム王朝を滅ぼしてやろうと決心したものだが現皇帝フリードリヒ4世は停戦と門閥貴族の弱体化を望んでいることがわかった。叛徒共と停戦してから国内の改革を実行するつもりらしい。それにしても姉上はあの件をどうするおつもりなのだろう。
ページ上へ戻る