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とある星の力を使いし者

作者:wawa
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第74話

玉入れの競技場に向かっている途中だった。
携帯電話を片手に走っている上条を見かけた。
何やら面倒な出来事が目の前に迫っている気がした。
しかし、この競技場には運営委員の仕事で制理が来ている。
もし何かあっては遅いので、上条の後を着いて行くことにした。
正門には参加する生徒達で溢れている所を見た上条は裏門に向かって走り出す。
その後を麻生は歩いてついていく。
裏門につくと様子を窺っている。
傍から見たら不審者以外の何者でもないだろう。
離れた位置で見ていると、上条の後ろから土御門もやってきた。
役者も揃ったので、麻生も上条達に近づいていき話しかける。

「お前達、こんな所で何をしている?」

麻生が話しかけるとゆっくりと二人は振り向く。
上条は少しだけ驚いており、土御門の方は何やら思いつたいのかニヤリ、と笑みを浮かべている。

「そういうキョウやんもどうして此処にいるんだにゃー?
 次の競技は中学生の種目だぜい。」

「暇だったからな。
 制理に聞いて退屈しのぎの出来る競技を教えて貰って観戦にしに来ただけだ。
 それでお前達は何でここにいるんだ?
 俺と同じように競技を観戦しに来たとは思えないが。」

「それはだな・・・・・」

上条と土御門から事情を聞く。
二人の魔術師が「刺突杭剣(スタブソード)」の受け渡しをしようとしている事。
その魔術師の一人であるオリアナ=トムソンという魔術師が「速記原典(ショートハンド)」がこの競技のどこかに設置されていて一般生徒に危険がある事を教えた。
それを聞いた麻生はため息を吐いてまた面倒事が始まってやがる、と思った。

「それでキョウやんはどうするんだにゃー?
 無理に協力する必要はないぜい。
 一応、さっきまでカミやんと二人での作戦を考えていたところだし、キョウやんが加勢する必要性はないにゃー。」

「いや、今回だけは手伝おう。」

「本当か、恭介!」

「ああ、だがこれが終わったら協力は終わりだ。
 魔術師達はお前達で追え。」

「それでも充分だぜい。
 そんじゃあよろしく頼むぜい、キョウやん。
 さっそくだが、あそこからどうやって侵入するか考えないといけないぜい。
 なんせ、競技開始までもう数分しか残っていないからにゃー。」

「手段を選んでいる暇はない。
 俺に任せてついて来い。」

そう言って麻生は馬鹿正直に裏門に近づいて行く。
上条は止めようとしたが土御門がそれを防ぐ。

「まぁ、キョウやんも馬鹿じゃない。
 何か考えがあるんだろうしとりあえずついて行ってみるぜい。」

本当に大丈夫なのか、と不安になる上条。
裏門に麻生達が近づいてくるのを見て、警備員(アンチスキル)は声をかける。

「おい、その体操服は高校生だろう。
 運営委員か関係者でなければ此処を通す事は出来ない。
 応援がしたければ、応援席にでも行ってくるんだな。」

警備員(アンチスキル)の一人が麻生に言う。
しかし、その言葉を聞いても麻生は真っ直ぐこちらに向かってくる。

「おい、聞いているのか。
 聞いているのならへんじ・・・・・を・・・」

一人の警備員(アンチスキル)が麻生の眼を見た瞬間、言葉が続かなかった。
他の二人の警備員(アンチスキル)も様子が変な事に気づきこちらにやってくる。

「おい、どうした。
 何があった?
 貴様、一体なに・・・・を・・・」

他の二人も麻生の眼を見ると言葉が続かなかった。
上条と土御門は警備員(アンチスキル)の様子の変化に首を傾げる。
そんな事を気にせずに麻生は三人の警備員(アンチスキル)に言う。

「これから俺達三人は此処を通るが気にしないでくれ。
 俺達を見逃していつも通り警備をしてくれ。
 あと、この会話は完全に忘れるんだ、いいな?」

「「「はい、分かりました。」」」

色のない瞳のまま三人の警備員(アンチスキル)はまるで機械のように予め決められたかのように言葉を言った。
そのまま麻生は裏門を通っていく。
上条と土御門は何が起こっているのか分からないが麻生についていき、どうなっているのか聞く。

「おい、恭介。
 あの警備員(アンチスキル)に何をしたんだ?」

「暗示をかけただけだ。
 内容はさっきも言ったが俺達を見逃して、その事を忘れる。
 簡単に説明すると軽い洗脳だと思ってくれればいい。」

麻生の説明を受けて上条は驚きを隠せてない。
対する土御門はヒュ~、と口笛を軽く吹いて、言った。

「あの数秒の間で三人も暗示をかけるなんてさすがだぜい。
 どうやったんだにゃ~?」

「俺の能力で自分の眼を魔眼に変えただけだ。」

「本当に麻生の能力は不思議で一杯だにゃ~。
 そんなに簡単に自分の眼を魔眼に変える事なんてできないぜよ。」

「できてしまうのだから仕方がないだろ。」

それだけ言うと、麻生は近くにいる男子中学生の姿を注意深く観察する。
次の瞬間、麻生の左手にはその男子中学生が着ているのと同じ体操服を持っていた。
麻生は乱暴に上条と土御門にその制服を投げ渡す。

「それに着替えろ。
 中学生になりすまして、紛れ込むぞ。
 その服だと目立つからな。」

そう言いながら麻生は指を鳴らすと自分の着ている体操服が一瞬でさっきの男子生徒の体操服と同じ体操服に変わる。
麻生の能力で作った筈なのに、上条の右手が触れても何も起こらない。
上条は自分の右手の能力である幻想殺し(イマジンブレイカー)は分からない事が多い。
記憶喪失の事もあるが、それでもまだ分からない部分が多い。
だが、それでも麻生の能力はそれ以上に謎が多すぎる。
一体どんな能力なんだと、考えながらもう一つの体操服に着替える。
結局、幾ら考えた所で分かる訳がなかった。
競技開始まで残り三分弱。





御坂美琴は土できた校庭に立っていた。
最新鋭の設備を持つ常盤台中学に慣れている身としては、不規則な凸凹があり、衝撃の吸収効率も場所によって異なる土の競技場というのは逆に新鮮だ。
少し風が吹くだけで砂埃が舞う、こんな西部劇みたいな場所で、果たして精密な能力測定などできるのだろうか、と思う。
あるいは、不規則な地形を想定した実戦的な訓練所かもしれない。
大覇星祭は表向きは祭りのように感じられるが、裏ではきっちりと一人一人の生徒の能力を測定している。
どんな状況でも能力を発揮できるのかなど理由は様々だ。
常盤台の生徒数は二〇〇人弱と少なく、しかも生粋のお嬢様という常盤台中学の陣営は、見た目には華奢を通り越して可憐にすら映る。
観戦席にカメラの数が多いのも、その実力よりも、単に華になるという意図が強い。
しかし、それは学園都市の「外」から見た意見。
学園都市の「中」から見た意見は、全くの逆だ。
常盤台中学のお嬢様が戦うというのは、つまり最低でも強能力者(レベル3)が、最高では超能力者(レベル5)までが参戦する事を意味している。
いかに数や体格に差があっても、笑顔でイージス艦を沈めかねないほどの令嬢軍団相手に楽観などできる筈もない。
事実、土の校庭の向こう側・・・玉入れ用の、ポールのついた籠を挟んだ反対側にいる対戦相手の中学校は生徒総数二〇〇〇人を超えていたが、何やら悲壮な覚悟にも似た異様な雰囲気に包まれているのが遠目にも分かる。
美琴はその二〇〇〇人を超える生徒の中で見覚えのある顔を見かけ、両手を腰に当て、前髪から全身からバチバチと青白い火花を散らしている。

(・・・・・・一体何なのよ。)

見覚えのある顔の人物はご丁寧にも相手中校の体操と同じ物を着ていた。
勝負に関してはやる気がないと思っていた。
あの棒倒しでもどうせ気まぐれなのだと思っていた。

「うん?・・・・もしや、あそこにいらっしゃるのは麻生さんではありませんか?」

と、他の常盤台の生徒が麻生の顔を見かけたのかそう言った。

「何をおっしゃっていますの。
 麻生さんは高校生、相手は同じ中学生ですわよ。
 麻生さんがいらっしゃる訳がありませんわ。」

「おかしいですわね・・・・見間違える筈はないのですが。」

「あらあら、お顔を見間違えにならないくらいに麻生さんの顔を見ていたのですわね。」

「う、うるさいですわよ!!」

「でも、麻生さんに似た人物ならわたくしも見ましたわよ。
 わたくしは目が良くないので確実とは言えませんが。」

「もしかしたら麻生さんがわたくし達を応援する為に、わざわざ中学生になりすましてきたのかもしれませんわ!!」

と、何やら楽しそうに話をしている。
その話し声を聞いた美琴は周りがどうしたのか?と思うくらいに電撃を散らすのだった。 
 

 
後書き
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