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GANTZ   New life

作者:カトラ
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第三話  岸本恵

 
前書き

まだ戦闘ではありません 

 


「どっ、どーする? みんな消えちまったっ!」

 すっと黒い球体の前に座り、刻々と減っていくカウントダウンを指でなぞる。

「計ちゃんっ」

「あ」

「落ち着けまさるん。スーツはどこにやった?」

「え? あれ、どっかいっちまった……」

 加藤は頭から徐々に消えていく。
 西があわてずに消えていったのできっと害は無いだろう。胸まで消えてしまった加藤に銃を持たせる。数秒すると完全に消えてしまった。

「ちっくしょうそっか、時間あるか?」

「いや別に今着替えなくても」

「……あぁ、そっか」

 竜夜は銃を確認する。小さいので十分だろうと判断した竜夜は一つ手に取り、じっくりと見た。

「え、あれ? みんなは……?」

「あ、俺の番か」

 彼女が部屋に戻ってきた瞬間、黒野が消え始める。黒野はしっかりと銃とスーツを手に取り、消えていく。

「きゃ~~~!」

 また廊下の奥へ消えていく彼女。呼び止めようとしたが竜夜も消え始めていた。

「くそ、あの子のスーツはどれだ!?」

 頭まで完全に消えてしまった竜夜は、手探りで探していく。あの子はいなかったからケースが開いていなかったはずだ。

「これか!?」

 ぐっとケースを掴み、消えていく。

「大丈夫っすか?」

 視界に移るのは外だった。だが確実に家の近所とかではない。

「あぁ……間違えた……」

 スーツに書かれている文字は犬。あの子のと間違えたようだ。

「しょうがない、着せてやるか……おいで、犬!」

 少し手こずったが、何とか着せてやることに成功した。竜夜も塀に隠れて着替える。あいつと同じでスーツの上に服を着た。着替えてる途中であの子の声も聞こえたからもうここに現れたんだろう。

「あ、そうか」

 あの子、下着てないんだよな。俺にはスーツあるしちょっと格好悪いけどズボン貸してあげるか。


「おお、黒ちゃんも着替えたのか」

「……一応」

 加藤の後ろからあの子が顔を覗かせる。
 本当にまさるんはもてるんだな。

「さぁ自己紹介しようか。俺は朝比奈竜夜。よろしくー」

 なるべく怖がらせないために笑いながら話しかけたが、あんまり効果は無かったようだ。

「黒野……計……」

「黒ちゃん気持ちはわかるけど……」

「うっ、うるさい!」

 つい格好つけて自己紹介した黒野に突っ込んでしまった。

「俺は加藤勝。よろしく」

「はい……よろしくお願いします」

 なるほど、これはこれは。

「黒ちゃん、あきらめたほうがいいぜ?」

「……」

「あ、すみません。私は岸本(きしもと)(けい)です。よろしくお願いします」

「俺と同じ名前……」

 じっと加藤の顔を見続ける岸本。やはり黒野は望みが薄いようだ。
 そこで改めて俺がズボンを脱いでいる理由を思い出した。すっとズボンを岸本の前に差し出す。

「これはいてきな」

「え? でも……」

「ほら、俺これ(スーツ)着てるし。着てないと恥ずかしいでしょ?」

 尚も断り続ける岸本。どうやら根はかなりいい子みたいだ。

「ほら、着てきたほうがいいぜ?」

「……うん」

 加藤の一言で問題が片付いた。完全になつかれてしまったようだ。

「ふん。俺にはワンちゃんがいるもんね」

「何してんだよ……」

 足元にいたワンちゃんを撫で回す。あまり毛並みは良くなかったが何か癒してくれるものがそこにはあった。

「まさるん」

 着替える為に家と家の隙間に消えていった岸本をあごでさす。加藤は頷き、後をついていった。

「あ、俺も……」

「黒ちゃんはやめときぃ」

 がしっと首の所のスーツを掴む。なにやらすごい力が出た気がするが、気のせいだろうか?

「何すんだよ」

「黒ちゃんこそ何するつもりだ?」

「え? 加藤は覗きにいったんじゃないのか?」

「……」

「……」

 気持ちはわかるけどもとりあえずますます黒野を行かせるわけにはいかなくなってしまった。

「ジョセフィーヌ二号!」

「ワン!」

「ネーミングセンス皆無か!」

 ジョセフィーヌ二号ことワンちゃんが黒野の前に立ちふさがる。ついでに加藤にも黒野が行ったら止めておけといっておく。

「まったく、そんなことばっかしてるともてなくなるぜ?」

「……もうやんねぇよ」

 もう行く気がないようなので、ジョセフィーヌ二号を呼び寄せる。

「なんでジョセフィーヌ? なんで二号?」

「んー、なんかぴんときた」

「そいつオスだろ……」

「あ、そっか」

 俺の目には長いため息をついた黒野が目に入った。

「お、終わったようだな」

 少し遠くから歩いてくる男女二人。

「完全にできてるやん」

「……」

 黒野は黙ってうつむいた。



 
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