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SAO─戦士達の物語

作者:鳩麦
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キャリバー編
  百二十四話 パーティメンバー!

 
前書き
はい!どうもです!

今回はメンバー紹介と出発。
久々に登場する子も何人かいますので、ご期待をw

では、どうぞ!! 

 
それから一時間半と少し。キリト、リョウ、リーファは取り敢えず集まれそうなメンバー全員にメールやら電話やらを終えて、待ち合わせ場所。イグドラシル・シティの大通りと言うALOにおける一等地に看板を出している《リズベット武具店》に集まり、のんびり後のメンバーを待っていた。

「クラインさん、もうお正月休みなんですか?」
頭の上にピナを乗せながら、、サチの持ってきたバームクーヘンをマグマグと食ていたシリカが、クラインに聞いた。

「おう。昨日っからな。働きたくてもこの時期は荷が入ってこねぇのよ。だっつーのに社長のヤロー、年末年始に一週間も休みが有るんだからウチは超ホワイト企業だとか抜かしやがってよ」
言いながら景気づけの酒(無論、アルコールなど得られはしないが)を飲みながら文句を言うような、けれど決して険悪な雰囲気では無く、寧ろ何処か笑い話をするように言ったクラインに、リョウは内心ニヤリと笑った。
クラインの職業は、小規模輸入商社に勤める、所謂商社マンだ。

こんな感じの社長の愚痴をリョウやキリトもしょっちゅう聞いているが、しかしてその社長はSAOに囚われたクラインの面倒を二年間見てくれたどころか、生還後も即座に会社に復帰させてくれたと言うなんとも仁義ある人で、実際の所、クラインの話の所々を聞くに、社員を大切にする良い会社のようだ。

ちなみに、クライン自身恩義を感じているらしく、以前には《ザ・シード》とモバイルカメラを使った遠隔プレゼンシステムを構築したりする等、現在も真面目に勤めているらしい。ちなみにその際、ハード面にくわしいキリトがカメラの方の調整で散々手伝わされていたが、其処は御愛嬌である。

と、クラインがそのキリトのほうをじろっと見た。

「おうキリの字、お前このクエで上手く《エクスキャリバー》取れたらよ、お前ぇ俺様の為に《霊刀カグツチ》取りに行くの手伝えよ」
そう言ったクラインに、キリトは心底嫌そうに顔をしかめる。

「えぇ~、あのダンジョン糞熱ぃじゃん……」
「それ言うなら、今日行くヨツンヘイムは糞寒ぃだろが!!」
「っはっはっはっはっ!!!」
キリトに突っ込むクラインに、リョウが爆笑した。と、そんなリョウに、横から声がかかる。

「あ、じゃあ、リョウ兄ちゃんは私の手伝ってよ」
「はっはっ……は、あ?何を?」
横からそう言ってきたのは、水色の髪を持つ獣人だった。何時の間にやら、椅子に座って頭の後ろに手を組んでいたリョウの横に立ち、悪戯っぽく微笑んでリョウを見ている。
その水色の髪から覗くシャープなシルエットの三角形の耳は、シリカの人懐っこそうで可愛らしい印象の物よりも、より鋭く、キレ味の鋭そうなイメージを思わせる。
例えば他人の家にこんな感じの猫がいたら、少し撫でるのを躊躇してしまいそうな感じ。

「手伝うって……何かあったか?」
「うん。《光弓シェキナー》が欲しくて」
「おま……こっち来てまだ二週間だろうがよ、シェキナーって伝説級(レジェンダリィ)だぞ?てか今の弓じゃ何か問題なわけ?」
「うーん、リズの作ってくれた弓も良いんだけど……、やっぱり、もっと射程ほしい」
しれっとそんな事を言った猫少女に、リョウは頭痛を抑えるように額に手を当てる。
と、丁度二人の後ろでその弓の弦を張り替えていたリズが、苦笑気味に言った。

「あのねぇ、そもそもALOで弓って言ったら、魔法未満、剣以上の距離で使う武器なの!魔法よりロングレンジで使うのなんて、シノンだけだから!!」
「出来れば200は射程が欲しいんだけどね」
そう言いながら少女は肩をすくめる。
涼人としては最早苦笑するしかない。全く、我が妹分ながら飛んでもない少女だと思う、と言うのも、この少女……まぁ今更言うまでも無くシノンだが、彼女がGGOからの気分転換がてらALOに来たのは、リョウの言うように二週間前なのだが、その一日目で、シノンはALOに置いては使いやすいとは言い辛い弓の勘を掴んでしまった。

それどころか、通常シルフとショートボウで起動戦を展開するか、重装と腕力耐久に優れた種族でバリスタのような砲台になるのがセオリーなALOで、最も視力に優れた種族であるケットシーで、射程の長いロングボウを使うと言う聞いた事のない選択に出た。
キリトなどはその選択を聞いた際、まぁ無理だろうが、と苦笑してしたが、シノンが実際どの魔法も超えるレンジからMobが近寄るより前に一方的に矢を命中させるのを見て、唖然としていた。言うまでも無く、リョウも同様だ。
今まで幾つも無軌道無茶をくりかえしてきたこの二人が何故これほど驚くのか分かりやすく説明すると、ALOの弓にはシステム上のサポートを持って命中精度の高い、銃で言う所の“有効射程”と、実際に矢が飛ぶ限界の“最大射程”が有るのだが、この有効射程外の最大射程に矢を飛ばす場合、其処にシステムアシストは入らず、射手は弓の飛ぶうえでの重力や風の影響を、自身で調整して矢を打たねばならない。

本来そんな事は不可能と言うのがリョウ達の……と言うかALOプレイヤー全体の認識だったのだが、シノンはと言うと、それを苦もなくやってのけたのである。
まぁ、ある意味では当然とも言えよう。何しろシノンは同一の物理エンジンを使っている《ザ・シード》パッケージの一つ、GGOで、対物狙撃銃をつかって、まさしくその、風や重力の影響を調整しながら、実に2000メートル近い距離の長距離狙撃をずっとし続けていたのだから。
と……

「に、二百って……それもうエリア制限なしなら一方的にハリネズミですよね……」
「えぇ、そのつもり」
リョウの後ろに座っていたシルフの少年が、シノンに驚き半分、引き半分と言った様子で言った。以前はオカッパだった黄緑色の髪は今は少しさらっとしたショートヘアになっている、切りそろえも無くなり、それでいて人の良さそうな(半分泣きそうにも見える)顔がそのままなので、顔を見ると中々に好青年っぽい。
さらっと返したシノンに最早何も言えないと言うように、苦笑とも引きつり笑いとも取れぬ表情を浮かべると、少年は手に持っていたマグカップを一口飲んで言った。

「なんか僕、ホントに此処にいて良いのか疑問に……無茶苦茶な人しかいない気が……」
「おいおいレコン!俺ぁ普通だぜ!!?少なくともこいつ等ほど“バグ”じゃねぇや」
「「どう言う意味だコラ!」」
苦笑気味の少年……ALOの世界樹攻略をキリトやリョウと共に行った、レコンが言った言葉に、横からクラインが組みつきつつ言って、そこにリョウとキリトが突っ込む。やたらと仲が良いのでシノンは目をパチクリと瞬いている。

ALO事件以降、リョウ、キリトと時々クラインの三人と、レコンは実はかなりの量のクエストを共にこなしていた。
物理アタッカー二人(or三人)だけだと基本どうしてもバランス悪いので、複数属性の攻撃魔法を持つレコンは非常にバランスよく行ける要因だと言うのもあるし、男だけで気兼ねなくダンジョンを進みたいと言うのもある。
ちなみに、現在レコンはソロプレイヤーとして自己強化にまい進しているらしい。
世界樹攻略戦の折、自爆魔法の根性に目を付けたシルフ領主サクヤに目を付けられ、領主館のスタッフにとスカウトされたらしいが、それを丁重に断っての現在だと言うから、中々の物だと言えるだろう。

プレイスタイルとしてはダガーによるソードスキルとサポート、攻撃系の魔法を主体としたリーファよりも魔法寄りの魔法剣士だ。
さて、そんな風にじゃれていると店の扉が開き、外から二人の少女が入ってきた。

「こーんにーちわー!!」
「おじゃまするわよ」
一人はシルフ、背丈はリーファより低いが、そのリーファと同じくらいの胸部の大きさを誇る。腰は補足、所謂ボンっ、キュッ、ボンっである。
一般的言うならスレンダーと言う奴か、髪は金色のセミロングで、快活な声も相まって、エメラルドグリーンの瞳が眩しい輝きを放っていた。

もう一人は黒い髪に、シノンと同じくシャープなシルエットの耳と、細めの尻尾。瞳が売る毒、少しきつい性格に見えるのは、リョウの個人的印象の為か、あるいは、と言った所だ。

「って、何してんのアンタ達」
「あ、シノンだー、昨日ぶり~」
「わっ、ちょ、アイリ、離れなさいよ……」
入ってきた途端に、何やらギャーギャーやっている男たちにケットシーの少女は呆れ、シルフの少女はシノンにじゃれに行く。と、リョウが二人に気が付き片手を上げた。

「よぉ、遅かったなお前ら、あ、リズに武器預けて来いよ、今整備時間なんだわ」
ニヤリと笑って言ったリョウに、黒髪のケットシーはあきれ顔だ。

「整備時間って……このメンバー分全部しの……じゃなくて、リズ一人でやるの?」
聞くと、リズは苦笑気味ながら、何でもない。と言ったように手を振ってこたえた。

「心配しなくても大ジョーブですよ~。もう慣れてるし、まぁ今回はちょっと多いけど……ほら!アイリもシノンにくっついてないで武器出す出す!アウィンはクローだっけ?」
「えぇ。お願いね」
良いながら微笑んでアウィンと呼ばれた少女……GGOでは闇風と名乗っていた彼女はアイテムストレージから、手鋼と一体になったタイプの、三本の長い金属性のかぎ爪が付いた武器をリズに手渡す。
シノンにくっついてすりすりしていたシルフの少女……アイリは、「はーい」と満足したように身体を離すと、腰に付けていた長刀(ちょうとう)と、アイテムストレージから取り出した、小太刀二本をリズに手渡す。ちなみにシノンは疲れたようにぜーぜーやっているのを、アウィンがお疲れ。と背中を叩いて居る。

まぁ最早言うまでもあるまいが、闇風とアイリもまた、シノンと同じく此方ににやって来ていた。条件としてはシノンと同じ。GGOにはデータを残したまま、新たなアカウントでリスタートである。ただし、彼女達の場合はSAO時代のデータをもとにしているので通常の新規プレイヤーよりステータス自体は高い。ただし、容姿だけは此方のオリジナルである。彼女達の場合、余りリアばれはしたくないらしい。ま、彼女達も女子なのだ。当然の対応と言えよう。

というか寧ろリョウとしては何時ものメンバーが不注意過ぎやしないかとも思っているのだが……

と、そうこうしていると、再び店の扉が開き、今度も見慣れた顔が三人、中に入ってきた。

「たっだいまー!」
「お待たせー」
「ただいま」
入ってきたのはリーファ、アスナ、サチ。買い物に出ていた女子三人だ。どうやらストレージに入れずにアイテムを持ってきたらしく、三人は持っていたバスケットをテーブルの上に置くと次から次へと色とりどりの小瓶や木の実を取り出す。

「あ、リズ、これ砥石。スペクターさんサービスしてくれたよ~」
「あ、ありがと。えっと……これ、代金ね!」
「はい、確かに」
微笑みながら、アスナがリズから砥石の代金を受け取る。
そうそう、ALO時に御世話になったスペクターは、商売も上手く行ったらしく、今ではユグドラシルシティの中央市場ど真ん中に店を構える大商人プレイヤーだ。いつの間にかリズと仲が良くなったらしく、ちょくちょく取引をしている姿を見かける。

「あ、リョウ兄ちゃん、これ言われてたポーションね~」
「おう。Thanks.」
言いながらリーファに手渡された緑色のポーションを、リョウは浴衣の懐にぶちこむ。と……

「あれ?そっちの男の子は?」
極素朴な疑問であるように、彼女はリョウの後ろにいたレコンを見てそう聞いた。その奇妙な発言に、リョウとレコンは思わず首を傾げる。

「あ?」
「え?」
「……え?」
それに対し、奇異の視線を向けられたためか、リーファも戸惑ったような視線を返し、同時にレコンの顔をまじまじと見る。

「えーっと……あ」
「ぼ、僕、忘れられちゃったかな?」
あはは……とレコンは苦笑するがしかし、彼は気が付いて居ない。彼の顔を見て三秒でリーファが何かに気が付き、その後俯いて拳を握りしめている事に。

「あ、ん、た、はぁ……」
「……へ?」
「良くも今までアタシの事散々スルーしたわねこのバカァッ!!!!」
「むぎゅぅ!!?」
一瞬の早業だった。風のごときスピードでレコンの後ろに回ったリーファは即座にレコンの首に腕を回すとその首を締めあげる。

「ち、ちょちょ、ちょっと待ってリーファちゃん!?ぐるじ、な、何でぇ!?」
「何でじゃないわよ!!アンタ、世界樹攻略が終わってからアタシの事避けてたでしょ!」
「え、い、いやそれは……」
「しかもこっちが誘っても「ごめんちょっと」で毎回断っておきながら、お兄ちゃん達とはしょっちゅう狩り出てたって何よ!!人の事無視しておいてそれどうな訳!!?」
「いや、ちょ、まって……締まってる……」
「大体何よその髪型!そんな髪で久しぶりに顔見せられたら誰だって誰だか分かんなくなるわよ!!」
「ご、ごめんなさ……勘弁……あ、当たってる……」
「はぁ?」
凄まじい勢いでギャーギャー喚く二人(と言うか一人)の声が、不意に減衰した、レコンの言葉に、リーファが疑問の声を上げたからである。
しかしリョウにしてみると、何故にリーファが疑問を持つのかのほうが疑問だ。リーファは今レコンの後ろに回って密着した状態で彼の首を絞めているのである。そんな事をしたら自分の持つ豊満な胸が彼の後ろでどう言う事になるか分からない訳は無いし、そもそも圧迫感で気が付くだろうに。
まぁ、恐らくはそれ程に今リーファが怒っていると言う証だろうが。

しかしてさしものリーファも、少し冷静になれば自分が何をしているのかにも気が付いたらしい。自分の体勢を思い出したのか硬直するとカアァァッと一気に朱くなり……

「こんの……変っ態っ!!!」
「おぶあっ!!?」
レコンをそのまま思いっきり床に叩きつけた。
いや、それは流石に理不尽だろうとその場にいた誰もが思わずには居られなかったという。

────

「んも~……酷いよリーファちゃん……」
「知るか。しばらく話かけんなバカレコン」
「うぅ……前よりも辛辣な気がする……」
頭をさすりながらリーファに抗議するレコンを無視しつつ、リーファはぷりぷりと怒ったままだ。
まぁ、それは良いとしてこれで大体のメンバーは揃った。後は……

「彼奴、来んのかね?」
「?どうしたの?リョウ」
「ん?いや、ちょいと……」
と、丁度その時だった。
ガチャリと店の扉が開き、外から一人の少女が入ってきた。それはウンディーネだ。髪を頭の後ろで結っている……所謂、ポニーテールと、清楚そうな顔立ちが特徴的な少女だった。

「あの、失礼します。リズベット武具店と言うのは、此方で宜しいでしょうか?」
一番扉の近くにいたアスナが困ったように応対した。

「あぁ、はい……でも、その今日は……」
「あぁ、やっと来たな。おせぇぞお前」
「リョウコウさん」
その少女を目にしたリョウが片手を上げながら声を上げると、少女は少し安心したようにほぅ。と息を吐いた。

「リョウ、知ってる人?」
「あぁ、俺が呼んだ。こっち来いよ」
「はい」
呼ばれて、少女はリョウのそばに来ると、立ち上がったリョウに向けてぺこりと一礼した。

「申し訳ありません、かい……私用が長引きました」
「良いっての。間に合ったしな。アイテムとか大丈夫か?」
「はい十分にあります」
「結構」
淡々と会話をする二人に、他メンバーは少々呆気にとられたが、しかし不意に、クラインが声を上げた。

「って二人で話されてもこまらぁ!やいリョウ!そのお嬢は何処の誰だか説明しやがれ!」
「おぉ、そだったそだった。んじゃ紹介すらぁ。っつっても、実はリーファとキリトはもうあった事あんだけどな」
「え?」
「……ん?」
言われたキリトとリーファが首を傾げる。はてな?こんな顔のウンディーネに、知り合いはいたかな?と言った様子だ。そんな二人に、件のウンディーネは微笑みながら言った。

「思い出せないのも無理は有りません。この姿でお会いするのは初めてですから」
「そう言う事だ、此奴はヒョウセツ。さて、自己紹介頼むぜ」
「はい」
そう言うと、ヒョウセツと呼ばれた少女は一歩前に踏み出していった。

「ヒョウセツと申します。種族は御覧の通りウンディーネ。戦闘では今回は主に回復を、時折、遊撃も担当させていただきます。別のアカウントでは、“ホムラ”と名乗っておりました。どうぞ、よろしくお願いいたします」
ぺこり、と頭を下げて、少女はまた一歩下がった。

「……と言う訳で、要はホムラだ」
「え、えぇ!?ホムラさんって、あのサラマンダーのユージン将軍の部下?」
「はい。その説は失礼いたしました」
「あ、いや、別に失礼とかそんな事無いけど……」
やたら丁寧なヒョウセツの態度に戸惑ったようにリーファは手を振って答えた。と、キリトが意外そうに言う。

「しかし……驚いたな、まさかホムラさんが別アカ持ちだったなんてな……」
「はい。領民としてのプレイスタイルをしてみようと思い作ったのが、ホムラのアカウントです。此方のヒョウセツは、個人的なプレイを楽しもう作ったアカウントで、作ったのは、ヒョウセツの方が先なんですよ」
「へぇ……じゃあ、そっちのアカの方が強い?」
期待したように聞いたキリトに、ヒョウセツは微笑みながら返した。

「勿論戦闘の方式は違います、ホムラは準戦闘型ですから、火力だけならあちらの方が上かと。ですが今回は支援を重視して欲しいと言う事でしたので。支援ならば、パーティを組むことを想定しているヒョウセツの方が向いて居ます。お役には立てると思いますよ」
「おぉ、頼もしいな」
「だろ?俺の目に狂いなし!ってな」
はっはっは。と笑うリョウをヒョウセツは少々呆れ気味に見る、と、完全に蚊帳の外だった四人のメンバーの内、リズが少々焦ったような様子で聞いた。

「ちょ、ちょっと待った!」
「ん?」
「つまり結局、アンタ達四人はどう言う関係なわけ!?」
「あ、そりゃそうだな」
二人の驚く顔を見るのが楽しく、肝心な事を説明し忘れていたこの駄目男である。

────

「つまり……前にリョウさんとデュエルして、それ以来ライバル……ってことですか?」
「ま、そんなとこだな」
事情説明が終わり、そう聞いたシリカに、リョウがうむ。と頷いた。と同時に……突然、シリカの後ろではぅぅぅ……。と言う溜息が響く。

「サチ、大丈夫?」
「え?う、うん。大丈夫だよ」
アイリの心配する声に、サチがコクン。と頷いて椅子に座りこむ。と言うのも、見知らぬ女性が涼と親しげに話しているのを事情も分からず見ていた美幸は、正直なところ突き先程までがちがちだったのだ。
そんな一気に緊張の抜けた顔をするサチを見てリョウはと言うと……

「おいおい、初対面の相手ったっていい加減緊張しすぎだぞお前」
こんな的外れな事を言っていた。

────

「あ、そうですパパ!」
さて、話がひと段落つくと、不意にユイが大きな声を出した。
何事かと全員がキリトの頭の上に座るユイを見る。

「買い物がてらに、実は情報収集をしてきたのですが、現時点で、世界樹の根元に有るダンジョンに到達できたパーティは、未だ存在しないようです」
「そうなのか……?あれ?でもそれなら、何でエクスキャリバーのある場所が分かったんだろう?」
「?しらないの?エクスキャリバー取りに行くって言うからてっきり世界樹の根元で受けるってクエストに参加するんだと思ってたんだけど」
そう言ったのはアイリだ。コテンっと首を傾げて、不思議そうにキリトやリョウを見ている。

「アイリ、何か知ってるの?」
リズが聞くと、アイリはコクリと頷いた。

「うん。今ね、世界樹の根元に居るNPCが複数パーティにクエスト発注してるんだって。それで、その人がくれるクエストの報酬が……エクスキャリバーらしいの」
「だよね?」と聞くと、ユイはコクリと頷いた。

「はい、その通りです」
「でもそのクエスト、あんまり穏やかな感じじゃないんだよね……採集とかお使い系じゃなくて、スローター系のクエストなんだって」
「スローター?聖剣を得るってクエストの割には、随分ね」
リーファの言葉に、アウィンが眉をひそめて言った。
スローター系と言うのは、虐殺の名の通り、《~~と言うモンスターを~~体倒せ》や、《~~と言うモンスターが持つ~~と言うアイテムを~~こ集めろ》と言った、複数匹のモンスターを倒す事を前提にした系統のクエストの事だ。
ちなみにこの手のクエストは必然的に対象となるモンスターの取り合いになりやすいため、プレイヤー間の争いの種にもなるクエストでもある。

「けどよ、それっておかしくねぇ?」
と、酒瓶を飲み干したらしいクラインが言った。リョウが促す。

「お、クラインさんどうぞ」
「おう。だってよ、エクスキャリバーは世界樹の下のダンジョンのおっそろしい邪神連中がうじゃうじゃいる中のいっちゃん奥に有るンだろ?それがなんでNPCのクエの報酬になンだよ?」
「言われてみればそうですよね……ダンジョンへの行き方が報酬って言うなら分かりますけど……」
頭から降ろしたピナをモフりながら、シリカが言った。
うーん、と考える一同の中から、数秒して声が上がる。

「……ま、行ってみればわかるわよ」
「そうですね……情報は少ないですが、この際、現在他のパーティが何のクエストに挑んでいるかは余り問題ではないように思います」
「だね、私達は既にエクスキャリバーの在りかを知ってるって言う、絶対的なアドバンテージが有る訳だし」
シノン、ヒョウセツ、アスナが立て続けに言って、全員がそれに頷く。

「よーっし!!全武器フル回復ぅ!!」
「「「「「「「「「「「「「お疲れ様!!」」」」」」」」」」」」」
丁度、話しながらも作業を続けていたリズから声が上がり、メンバー全員でねぎらいの言葉を唱和する、それぞれの剣、刀、槍、爪、弓、杖を受け取り、各々のスタイルで装備すると、お次はポーションだ。
アスナのSAO直伝の作戦指揮能力で大量のポーションやその他アイテム類は必要な人物に必要な量が行くよう13分割され、それぞれ自分の量を受け取る。

さて、そうしてそろったフルメンバー13人。当然レイドパーティになる訳だが、内訳は以下の通りである。

Aパーティ
リーダー:キリト(剣士)
アスナ(治癒師(?))
リーファ(魔法剣士)
クライン(SAMURAI)
リズベット(重戦士)
シリカ(獣使い)
シノン(弓使い)

Bパーティ
リーダー:リョウコウ(戦士)
サチ(魔法使い)
レコン(魔法剣士(軽装備))
アイリ(剣士)
アウィン(軽戦士)
ヒョウセツ(治癒師(兼戦士))

基本的には、AパーティBパーティ友の物理攻撃能力主体のパーティだが、強いて言うなら、純メイジ型のサチ、バランス型のヒョウセツとレコンのいるBパーティは魔法能力も上手くそろえたバランスの良いメンバー構成になっている。
攻撃のAパーティ、遊撃のBパーティと言ったところか。まぁ、実際の所全体で戦うのだから余りそう言ったパーティのタイプに意味は無いが。

そんなこんなで準備の完了した十三人+一人+一匹の前に出て、それぞれのパーティリーダー、キリトとリョウが全体を見回す。

「皆、今日は急な呼び出し、応じてくれてありがとう!」
「テメェらへの個人的な礼は何時か精神的にするとして、今回の報酬には期待してろよ!」
「目標はこの世界最強の剣だ!だけど、きっとそれだけじゃない!!」
「あんだけデカイダンジョンだ、まっとうな冒険者を満足させてくれる宝くれェはきっとあらぁ!」
「それじゃ皆!楽しんで!!」
「気合い入れろよ!!」
「「いっちょ、頑張ろうぜ!!!」」
「「「「「「「「「「「「おぉーーーーー!!!」」」」」」」」」」」」
唱和した掛け声に、やや苦笑が混じっていた気がするのは恐らく気のせいだ。
キリトを先頭に、工房を開けたメンバーは、一路、世界樹の根元に有る地下への通路を目指した。
 
 

 
後書き
はい!いかがでしたか!?

と言うわけで総勢13人と言う大所帯になってしましましたw
うぅ、なるたけオリキャラは増やさないようにやってきたというのに、どうしてこうなった。

ちなみにレコンやホムラと言ったメンバーに、シノンを始めアイリ、アウィンも含めたメンバーにも、無論キャリバー編では活躍して頂きます。
勿論、シリカとリズもねw

さて、では次回は突入までのお話になるかな、と思います。

ではっ!

※ダンジョン募集はいまだ継続中です!
ご応募の方は二つ前の話のあとがきをご覧いただければと思います!
 
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