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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第七話 開戦の号砲

―――戦争が始まった。ユニウスセブン落下の犯人の引き渡しを口実として、連合はプラントへの宣戦を布告。既にテロリストは全員死んでいる以上、引き渡すことなど当然できず、戦争の回避は事実上不可能である。
さらに厄介なのは連合の引き渡しまでに要求する時間の少なさだ。これは最早戦争へと託けるための口実だとプラントの住民誰が見てもわかる事だった。
連合の艦隊は既に展開準備を完了している。月基地からの艦隊の大半なのだろう。その戦力は艦隊やMS、MAの数だけ見ても戦力的にはプラントを落とすことが可能かもしれない。
その戦力比でプラントの明暗を分けるのは、パイロットの技量、MSの性能だけ。
―――そして、おそらく連合は核を使う。戦い幕は上がろうとしていた。

「デュランダル議長、せめて脱出の準備を」

「脱出したところで我らに行くところなどないのだ。なんとしてもプラントを守り抜く」

ついに戦端が開かれ、戦闘が始まる。プラントの最付近に構える最終防衛ラインの艦隊と一隻だけ形容の違うNスタンピーダーナスカ、それらを護衛するMS部隊。
戦線の中核を担うであろうゴンドワナを中心とした艦隊の中層防衛線。

「そのような理屈でプラントを討つなど、我慢ならん!」

「絶対にプラントを討たせるな!」

そして、連合と真っ向からぶつかることとなる、MSや戦闘艦を中心とした最前線。この場にそぐわぬ様なマーシャンの火星製MSやジュール隊、ハイネ隊などの精鋭が次々と敵MSを打倒していく。

一方で連合はアルザッヘル基地より運び込んだ大艦隊。数では勝る連合。しかし、技量差や性能差から考え見るにほぼ五分の戦いに持ち込まれることとなっていた。だが、この状況でも連合側に焦りはない。
彼らにとって本命は、旗艦ネタニヤフを中心とした核による奇襲艦隊「クルセイダーズ」によるプラントへの核攻撃だったからだ。

「まもなく、クルセイダーズによるウィンダム部隊が動きます」

「よし、敵に発見はされていないな。これだけの主力部隊を囮として使っているんだ。失敗は許されんぞ」

アルザッヘルから来た部隊の最高司令官はプラントへの核攻撃の為に指示をする。そしてクルセイダーズの状況を確認し、オペレーターから報告を受ける。

「未だ敵、発見による動きなし。見つかっていないものかと」

「出撃させろ、青き清浄なる世界の為に、な」

「は、ウィンダム隊出撃!全機、プラントへの攻撃を開始せよ」

『『『青き清浄なる世界の為に!』』』

ついに核部隊が動き出す。戦線から離れていたこともあり、プラントへの接近は容易く進んでいく。

「あ、あれは!?」

一機の長距離強行偵察複座型ジンがウィンダム部隊を発見し、報告する。しかし、もう遅い。まともに迎撃するには距離が近すぎた。

「しまった!?」

「くそ、行くぞお前ら!」

ジュール隊やハイネ隊が必死に核を追う。しかし、ウィンダム部隊へは届かず、核は発射されてしまう。
イザークは思わず思い出す、かつてのヤキンドゥーエ戦の時のような状況だと。その時は二機のMSがプラントを救った。しかし、彼らは此処にいないし、来ることもない。
もう無理だと、思わず目を逸らしそうになったその時、Nスタンピーダーナスカが起動した。

「何だと!?」

次々と暴発していく核、それは安全装置がついていたはずの発射されていないウィンダムの核やネタニヤフごと爆発していく。

「どういうことだ!?」

連合側の指揮官が驚愕の表情で驚きを露わにする。Nスタンピーダーナスカ―――ニュートロンスタンピーダーを搭載し、それを放つことで中性子の運動を暴走させ強制的に核分裂を起こし、核を誘爆させるシステム。条件が厳しく、Nスタンピーダーナスカを運用することは出来ないが、これで核攻撃を防ぐことが出来た。

「ど、どうするので?」

連合の士官の一人が最高司令官に問いかける。ネタニヤフを中心としたクルセイダーズは既に壊滅状態に近く、他の部隊も核を持つものはほとんどいない。何より、これを連続して使用されればこちらの核を消耗させるだけだ。

「……クッ、止むを得ん。撤退するぞ」

こうして、後にフォックスノット・ノベンバーと呼ばれる戦いは紙一重でザフトの勝利に終わった。







開戦のきっかけにより連合と同盟を結ばざる得なくなったオーブ。ザフト所属のミネルバはオーブから出ていくしかない。

「すまないと思っている。ミネルバはユニウスセブン落下を防ぐ為に尽くしてくれたと言うのに、このような形で送りだすようなことになってしまって」

「いえ、仕方のない事でしょう。こちらとしても至らなかった点は多かったので」

カガリはミネルバに直接赴き、艦長室でタリアに対して謝罪していた。タリアはカガリのことを真っ直ぐな人間だが、だからこそ難しい人間だと思ってしまう。
正直に言ってしまえば、政治家に向いていないのではないのだろうかとも。とはいえ、そういったことを口に出すつもりもなく、国家元首が非公式とはいえ謝罪に赴いているので、タリア自身も礼節を欠かず、対応していた。
その後、カガリは退出し、道中でシン達と出会う。

「あ、その……」

カガリはシンを見て思わず言葉を詰まらせる。合わせる顔が無いとそういった感じだった。その様子を見たシンが先に言葉を放つ。

「それがアンタ達のやり方だって言うのかよ?」

「え―――」

「オーブの理想が如何とか言っといて、それで俺達を巻き込んで、そしたら今度はこれかよ!何がしたいんだよ、アンタ達は!」

その痛烈な言葉に思わずと言った風に顔を背けるカガリ。結局、ユウナ達に良いように言い包められ、自分では何もできなかったカガリは反論することも出来ない。
その様子を見たシンはますます怒りが込み上げて来て、そのままその場を去っていく。

「失礼します」

「シン、あんたちょっと失礼よ!」

レイとルナマリアも同様に(挨拶は一応行い)その場から離れていった。

「ま、でも流石に今回ばかりはちょっと失望したかも」

カガリと離れた後、ルナマリアはシン達に対してそう言う。

「国が残るために選択したというだけの話だ。元より他国の人間である俺達には関係あるまい」

レイはあまり興味がなく、会話も流す程度に話しているだけだった。そんな中でシンは思う。自分はこの国を捨てたのだと。正直、失望したのだ。オーブという国の在り方は嫌いだが、己の理想は貫いていた。そこに怒りはあれど、ある種の認めてはいたのだ。だけど、今のオーブはそれすらも捨てた。理想すらも失った国家。
もうこの国との因縁は断ち切った。シンはそう思い、歩いていった。








オーブから出て、すぐにコンディションレッドが発令される。

「一体なんだって言うんだ!?」

そう思っていると、艦内放送によって艦長から現状が告げられた。

『現在、本艦の前面には空母四隻を含む地球軍艦隊が―――そして、後方には自国の領海警護と思われるオーブ軍艦隊が展開中である。地球軍は本艦の出航をしり、網を張っていたものと思われ、またオーブは後方のドアを閉めている。我々には前方の地球軍艦隊突破のほかに活路はない。
これより開始される戦闘は、かつてないほどに厳しいものになると思われる。本艦はなんとしてもこれを突破しなければならない。
このミネルバクルーとしての誇りを持ち、最後まであきらめない各員の奮闘を期待する』

「なッ!?」

この報告を受け、艦内にいたクルーは全員驚愕する。連合の艦隊がどこで自分たちミネルバの事を知ったのか。言うまでもない、先程までいたオーブが自分たちを生贄に差し出したのだ。
怒りのあまり壁を叩き付けそうになりながらもそれを抑え込む。この怒りは目の前の連合艦隊にぶつければいいのだ。そう思い、コアスプレンダーに乗り込むと通信が開く。

『ほんと、どうしろってのよ。空母四隻よ?無茶苦茶じゃない』

『これが戦争だろーが。分かってたことだろ?』

ルナマリアが愚痴るように言い、マーレが暗に諦めろと言う。

『なんにせよ、突破できなければ俺達は此処で沈むだけだ。全力を尽くさねばなるまい』

「ああ、あいつ等全部、ぶっ斃してやるよ。シン・アスカコアスプレンダー出ます!」







「チッ、数だけは一丁前に揃えやがって!」

『ほんとにもう嫌になりそう!』

C型のマーレとルナマリアはミネルバの上に乗り砲撃で、A型のショーンとデイルは着地点を定めながらスラスターを使い水上を滑る要領で移動し、ライフルを撃ちながらウィンダムやダガーLを仕留めていく。オーブに退路を断たれ、前進するしかないミネルバは敵艦隊に砲撃を放ちながら敵のMSを近づけさせぬようマーレとルナマリアが迎撃し、ショーンとデイルは遊撃にあたる。

『というか、空飛べるとか狡すぎるだろ!?』

『ぼやくなぼやくな。俺たちの手の届かない所はシンがやってくれるさ!』

大気圏内で空戦を行える唯一の機体フォースシルエットのインパルスはウィンダムを撃ち落とし、切り倒すが数の差が圧倒的であった。

「レイの奴!まだ着かねえのか!?」

レイの機体であるゲルググだけはパックを換装し、F型となって水中に潜行していた。敵空母を落とす為にしっかりとこちらに目を付ける必要があった。
余談ではあるがレイやルナマリアと比べれば連携し難いであろうマーレがF型にしなかったのは、フルチューンをしているマーレ機では換装することによる性能の低下が避けられないためである。

「喰らいな!」

右肩のビームキャノンによって放たれたビームによって敵のウィンダムを二機撃破する。だが、次々と現れる敵MSの様子を見て、まるで数が減ったように感じられなかった。

『この、落ちろッ!』

インパルスに襲い掛かるウィンダム部隊は最も多い。空中で戦闘が可能な唯一の機体であり、一番の脅威でもあるからだ。
単機で襲い掛かればあっさりと落とされ、かと言って完全に無視をしてミネルバに向かえば後ろから撃たれる。結局、ウィンダムの殆どがインパルスに注意しながら戦闘を行う。その上でミネルバや艦に乗っている機体を狙うのだが、ミネルバや他のMSも手強く、ウィンダム部隊は苦戦していた。

『うおぉぉ―――!』

一機のウィンダムがシールドを構えながらビームサーベルを振り上げ、インパルスに突進する。それを見て、他のウィンダムも各々にミサイルやビームを撃ち、中には同様にビームサーベルをもって接近している機体もいた。

『やらせるかよ!』

しかし、インパルスはバックステップするかのように躱し、そのままビームサーベルで横薙ぎに切り払う。正面に来たビームをシールドで防ぎ、それ以外の方向から来る攻撃は避け、ミサイルをバルカンで迎撃する。
ミサイルが迎撃によって爆発し、視界を一瞬阻まれたウィンダムの一機が突っ込んできたインパルスにサーベルで切り落とされる。ジェットストライカーを装備しているダガーLもビームライフルを連射し続けるがインパルスに気を取られ過ぎて、ルナマリアのゲルググに撃ち抜かれる。








ようやくたどり着いた。レイはコックピットの中でそう呟く。F型に換装して海中を潜行していたレイは敵艦隊を射程距離に収めようとしていた。
勿論、連合艦隊も気づいてはいるし、魚雷やミサイル、レールガンの類で攻撃を仕掛けているものの、元々機動性を高めているレイ機に水中での機動力を損なわないように換装されたF型には当たらない。さらには特殊作戦用ということもあってかレーダーにも映り難く、艦隊から連絡を受け、空中から狙おうとしているウィンダムは中々狙いを定めることが出来ない。
とはいえ、逆に言えばこの機体は機動性の代わりにダメージには非常に弱い。直撃を受ければ一瞬で水圧に飲まれることになるだろう。

「悪いが、俺達も必死なんでな。沈めさせてもらう!」

水中でも使用可能な兵器、レーザーライフルを放つ。レーザーライフルの原理はザフト・連合両軍が使っている水中兵器のフォノンメーザー砲とあまり違いはない。特殊な音波や衝撃波を発生させ、その射角を認識するためにレーザーを放つ。
水中でも使える強力な兵器であり、PS装甲関連の防御も意味をなさない攻撃だ。それが巡洋艦の一隻に命中し破壊される。レイはそのまま移動を続け、巡洋艦の爆発に紛れ込むように身を隠す。これでこちらから一方的に狙い撃つことが出来ると。
このレーザーライフルの欠点は弾数が少ない事とチャージに時間が掛かることだ。威力こそ数ある兵器の中でも高い方に位置するが、連射が効かず、弾の補充も効き辛いことから、こういった水中戦でもない限り、あまり積極的に使用しようとは思わないだろう。
そうして、レイは敵空母に接近するために敵艦を掻い潜り、時には撃沈させていった。








「デイモン級、スヴャトスラフ撃沈!敵の水中用MSによるものと思われます!」

「ええい、厄介な!ディープフォビドゥンはまだ出んのか!」

連合側の母艦に乗る司令官が焦りを見せる。元々使う予定のなかった旧式のディープフォビドンを出す羽目になったのは遺憾だが敵が水中用の機体を用意していた以上、止む得ないことだろう。数も少なく、迎撃される可能性もあるが構いはしない。
先に艦さえ落とせば残った敵を蹴散らすことなど容易い。本命の準備は整いつつあるのだから。

「ザムザザーの発進準備はどうなっている?」

「はい、いつでも行けるとのことです!」

「ふふ、良し出撃させろ。MSなど最早時代遅れだと言うことを教えてやるがいい!」

この血に染まる海戦はこれからが本当の正念場となるのだろう。
 
 

 
後書き
ここでちょっとした補足説明を。
マーレ機はゲルググC型ですが、色々と改造しているので他のバックパックを取り付ける事は一応できますが、性能が低下するので余程のことがない限りつけません。
レイ機がF型になった理由は単純に消去法というのと実力が高いからです。F型は水中戦を可能としていますが、正直言って鉄の棺桶状態です。水中で直撃貰うと沈みます。
更にはA型のショーンやデイルでは出力が足らず、長期戦は不可能となります。C型のルナマリアは砲撃戦が可能なのでマーレ機と共にミネルバの上にいます。 
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