転生者拾いました。
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濁り銀
怯銀
前書き
思ったより長くなったので途中で切ります。切り所が悪いかもしれませんが。
ことは突然だった。
儀式部隊が魔法陣を展開中に襲撃を受け陣地深くに敵を招いてしまった。
お椀状の窪地の縁に援護射撃を行う魔術師をみたワタシは剣を抜いて切り込んだ。
「くっ!」
「あなたも我々の邪魔を。」
「そんなことはどうでもいいの!どうしてこっちに来るのよ。」
「如何に後方をたたくかが戦争だと存じますが?」
「戦争?違うわね、これはテロよ。」
「ではテロです。」
「なにが言いたいのよ。」
奇襲は失敗し鍔迫り合いに持ち込まれたが相手に反撃の機会は与えない。一合目で相手の力量を察し、適当な力加減で押して密着する。そうすれば、あの魔導師の女に魔法を受けることはなかろう。
「ゴルデ様がわたしを捨てた理由はあの男、カズヤ・クロサキ。」
「だれよ、ゴルデ様って。」
「ゴルデ様は今、死神と踊っておられます。」
アメリス程ではないがワタシにも或程度心を読むすべがある。とくにゴルデ様を卑下するような内容には敏感に反応できる。
「ゴルデ様をあれ呼ばわりするとは。やはりあなた達は害悪な存在。」
「よっぽどその胸の方が害悪よ!」
「悔しいですけどその通りです!」
なにが害悪なのかさっぱりわからないが、現状で一番の害悪な存在はこの二人。
剣士の女がフルスイングをしてワタシを剣ごと吹き飛ばした。さっきワタシの攻撃を受けたときはこんな力はなかったはず。
「ワタシのこと、忘れてませんか?」
「うん、忘れてた。」
「そうですか。では思い出させてあげましょう。
Magicae ex humo(土の魔法)、Impetum muppet(木偶の坊の強襲)。」
古代魔法を詠唱して地面から4体のゴーレムを精製する。
「やりなさい。」
口頭で命令する必要性はないが、パフォーマンスのためにわざわざ口頭で命令する。命令を受けたゴーレムは前進して二人に襲いかかる。
「な、なんて硬さよ……。」
「ナメて貰っては困るわ。潰せ。」
「きゃぁ!?」
一人は果敢にも剣を振るうが歯が立つわけがない。その間にもう一人を捕縛する。
「ぐぅ、うぅあぁああぁ!!」
「エリザ!うぐっ!?」
「あなたも潰れなさい。」
ハーフエルフの上げた悲鳴に気を取られた剣士を残っていたゴーレムが捕縛した。
「絶望の中で死になさい。」
「うぅ、ぐ…。カズ、ヤ……。」
ゴーレムの腕で二人を締めていると増援が来た。その増援はさっきまで本陣深くで暴れていた死神。ゴルデ様は無事だろうか。
死神が剣を振るってゴーレムに斬りかかるもゴーレムの腕には傷一つつかない。お返しに腕を振り回させて追い払う。
「なんて硬さだ。」
「お褒めいただきありがとうございます。」
「褒めてねーぞ!?」
今頃彼はどうやってこの子たちを片付けるか考えているはずだが、
「無駄よ、その子達は倒されない。」
「やらなきゃ分からないだろ?」
「そう……。なら、足掻きなさい。殺せ。」
『グオオォォォォ!!!!』
「行け。」
「くっ!」
粗野ながらも素早く動くゴーレムに翻弄されている死神は果敢に剣を振るう。
「それでもっ!オレはあきらめない!」
「そう……。なら、彼女たちが潰れるのを見ているといいわ。」
「いたいっ!いやぁぁっ!」
「うぁぁっ!」
「セリナ!エリザ!がっ!?」
彼女たちの苦痛の声に気をとられった死神はゴーレムの攻撃を受けそこね、剣を取り落とし地面に転がった。
止めを刺すために腰に差した短剣を抜いて近寄る。
「さよなら、死神さん。違う出会い方ならあなたを好いたかもしれない。」
「あきらめて、たまる、か!」
「まだ、足掻くの?いい加減……。」
「いや、だ。」
「っ!」
どうやらまだ動けるらしい。彼の喉に剣を突きつけて正確に喉元を狙う。
だが、突然死神からプレッシャーが放たれ持っていた短剣が弾き飛ばされた。一旦ゴーレムの後ろに飛び退き様子を見る。
後書き
死地に立たされた銀の女
策謀の兆しは静かに蠢く
次回 閃銀
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