八条学園怪異譚
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第三十五話 座敷わらしその七
「そうなのね」
「そうよ、不老不死って何千年かはあってもね」
「永遠じゃないのね」
「そうよ、永遠じゃないわよ」
そうだというのだ。
「妖怪もやっぱり何時か絶対に死ぬから」
「じゃああんたも」
「死ぬわよ、何時かね」
座敷わらしは愛実にも話す。
「その時にお別れになるから。人間のお友達もね」
「大人になってのお別れもなのね」
「そうよ、同じなのよね」
「しかも妖怪さんって長生きする分お別れの機会がやpっぱり」
「多いわよ」
そうだというのだ。
「それでそれはどうしようもないのよ」
「生きていると絶対に死ぬから」
「そう、だからね」
それ故にだと、座敷わらしは子供の顔だが大人びたものを出してそのうえで語る。
「皆が大人になって私が見えなくなっても受け入れるしかないのよね」
「あんたはいつもそうなのね」
「そうよ、ただ」
「ただって?」
「それでも再会は嬉しいわ」
茉莉也を見てあらためて言った言葉だ。
「茉莉也ちゃんと再会出来たのはね」
「私も、博士に眼鏡とヘッドホン作ってもらったから」
「今付けてるそれね」
「それで会えたのよ」
「博士ね、あの人はいつも私が見えているけれど」
「あの人の場合はまた違うわよね」
「ええ、いつもその眼鏡とかヘッドホン付けてないから」
だからだというのだ。
「童心があるからって言ってるわ」
「まああの博士は特別だからね」
「結構私達と同じになってると思うわ」
つまり妖怪化しているというのだ、座敷わらしの見立てではそうだ。
「あの人はね」
「仙人か錬金術師かも知れないけれどね」
「どっちにしても普通の人じゃないわよ」
このことは間違いないというのだ、博士は妖怪から見てもそういう人だ。
「あの人はね」
「そうね、それはね」
「とにかくあの人は私が見えるのよ」
身体的に大人であってもだというのだ。
「それで普通にお話も出来るのよ」
「あの人だけはなのね」
「見えてないって時もあるみたいだけれど」
「そういう場合もあるのね」
「その時の体調によるのかしら」
人間には体調というものがある、これによって調子が違うのは博士にしても同じであるらしい。やはり博士も人間ということか。
「そういう日もあるわよ」
「博士もあんたが見えない時があるのね」
「みたいね、まあとにかく今はね」
座敷わらしはここまで話した茉莉也にこうも言った。
「茉莉也ちゃんと再会できてね」
「そのことがなのね」
「ええ、嬉しいわ」
にこりと笑っての言葉だ。
「大きくなったわね」
「そうかしら」
「大きくなったじゃない」
茉莉也を見上げて笑顔で話す。
「あの頃はいつもクラスで一番前だったのに」
「今でも前の方よ」
茉莉也は座敷わらしの今の言葉に苦笑いで返した。
「前から三番目よ」
「一番前じゃないじゃない」
「いや、それでもこの通りね」
自分の背を自覚しての言葉だ。
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