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過去
クエスト成功の証の品をギルドに収めたオレたちは一路をエリカの自宅へ向かう。なんでって、今オレは彼女に家に居候しているからだ。
初めて入ったときはびっくりしたね。壁一面の書籍類に刀剣類、部屋の片隅にクッションがうずたかく積んであるだけの部屋だった。どうも彼女が借りているこの部屋はギルドメンバー用に開放されている寮みたいなところらしい。
「ただいまー!」
「ただいま。」
前者がエリカ、後者がオレだ。
前までは彼女一人暮らしだったが今では俺もいるし二人暮らし、当然俺たち二人して出かけていたから「おかえりー。」の返事はない。
エリカはクローゼットの中から無造作に服を取り俺に渡してくる。みんなオレが生活するために彼女の私費から出して買ってもらったものだ。
「ほら、着替えて。」
「あ、はい。」
渡された服を持って一端居室から出て隣接するトイレに入ろうとする。が、
「こら、どこ行くの。」
「え?トイレで着替えようと。」
「何言ってるの、先にお風呂よ。」
は?お風呂?確かここのって共用のだったよね?そこそこ大きい大浴場があるのだが、そもそもここは女子寮なのだ。そりゃあもう初めてこの建物に入ったときは針のむしろで居心地は最悪だった。
「ほら、行くよ。」
「オレは逝きたくありません!」
いきなり捕縛魔法を使われ身動きできない状態にしてからオレを横抱きにして運んでいく。
途中ですれ違う女冒険者たちに奇異な目で見られながらだ。中には何かひそひそ陰口をたたいている奴も。陰口は陰でやってくれよ。
「はい、到着。」
「グフっ……。」
予告もなしに簀の子の上に投げられHPが減少した。
そして背後から布の摺れる音がする。ついでパサッとした音が続く。何をしているのか見たい気持ちだが、捕縛魔法で首も固められて動けない。しかし状況的にはアレしかない。
「ほぉら、君も脱ぐ。」
「ちょっ、やめ……。」
「わあ、細い腰ね。それにとってもきれいな肌。」
「何見てんすか!?」
あれよあれよと上半身が脱がされていく。器用に捕縛魔法をかいくぐって袖を抜いて完全に上半身が裸になる。
「さあ、次は下ねぇ。」
「ここだけは勘弁してください!」
「ダメよ、脱がないとお風呂に入れないから。」
「自分で脱ぎますから!」
「そんな事したら君、逃げちゃうじゃない。だから……。」
ベルトが緩められズボンと腰の隙間にエリカの指が入る。
「えい!」
「Nooooooooooo!!」
はい、どうも。カズヤです……。今はエリカさんと背中合わせで大きな湯船に浸かってます。はい、やられました。見られました。はっきりと、ええ、バッチリ見られましたよ。
「もう、お婿に行けません……。」
あれ、視界が曇っているな。そうだ、湯気のせいだ、きっとそうだ、ぅぅぅ……。
「いつまで泣いてるの、男らしくないな。」
「男らしくなくて結構です。」
「……意気地なし。襲いなさいよ。」
「オレの地位を完全に消すつもりですか?」
「だってつまんないもん。せっかく男の人と一緒に住んでいるのに何もないなんて。」
なんてことを言い出すんだこの人は。
「それに、ここにいる人はみんなそーゆーことを期待してるのよ?」
なんてこった。
「君ならなにされてもいいよ?」
「……と、いうと?」
「こんな事とか?」
一瞬背中から圧力が消えて、次の瞬間何か幸せな柔らかさを感じ耳に息がかかる。
「君なら、婿にもらってもいいよ。」
これは、喜ぶべきなのか?告白されたようなされてないような。でも、彼女の声がしんみりしている。
「君があの人に似ているから……。」
なんか重たそうな物を言ってますよ。でも、あの人って誰だろ。
その後は双方無言のままお風呂を楽しんだ。
そして「おやすみなさい」の挨拶まで言葉を交わさなかった。
後書き
前回の次回予告で期待した人、残念でした!
見落とした罠の誘惑
静かに手折られた花。
次回 事件
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