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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第六話 一時の空白

オーブに無事たどり着いたミネルバクルーは僅かな休息の時を過ごしていた。ルナマリアやメイリンはショッピングをショーンやデイル、ヨウラン、ヴィーノ達はカラオケやボウリングといった娯楽施設に、そしてシンはマーレと共にドライブをしていた。

「なあ、シン」

「―――何ですか?」

シンはこの島に、オーブに来てから機嫌をずっと悪くしていた。その苛立ちが目に見えて明らかだったせいもあり、マーレ以外彼と共に行動しようと話しかけてきた人はいなかった。

「お前はさ、結局ここをどう思ってるんだ?」

マーレはシンのことを嫌ってはいない。寧ろ、個人的に気に入ってる。ナチュラルは抹殺されるべきだと思っているマーレだが、別にオーブを滅ぼそうとかそう考えてるわけじゃない。いや、内心では可能ならそうしたいという気持ちもあるが、だからと言って行動に移そうとは思わない。
そういう意味ではシンの故郷であるオーブに対し、シン自身はどういった感情を向けているのか気になるのだ。

「……理念だけの国さ―――」

そうはっきりと言う。シンは自身の感情の根底に子供っぽさを持っていることを自覚している。クラウがそういったことを時々指摘していたからだ。

「父さんも、母さんも、マユも……この国にいた人間は皆この国の理想を信じてた。他国を侵略せず、他国の侵略を許さず、如何なる状況にあっても中立を貫く―――立派なことだと思うよ、実際。でもさ、結局俺達はその理念と心中させられた。俺達みたいな国の人間よりもオーブは理念を重視したんだ。
だから俺は、もう失わないって、守るって決めたんだ。あんな悲劇をもう起こさせないために……」

悲痛な弱弱しい声でシンは自分の意見を主張する。マーレはその様子を見て、目を逸らす。ナチュラル嫌いの彼ではあるがシンの家族を嫌うほど非情ではない。死者を憎む気持ちはないし、生きていたとしても積極的に嫌うようなことはないだろうとすら思ってしまう。
そこから会話は無かった。マーレは黙って車を運転し、シンはその感情に静かに涙をこぼす。そしてドライブの目的地にたどり着く。シンが頼んだ場所。そこは慰霊碑と花が咲く波打ち際だった。

「ッ――――――」

かつてここに何があったのか。マーレは想像がついてしまう。戦火の爪痕が残っていたのだろう。シンが苦しんだ戦場だったのだろう。その名残はもうない。ただ、花が世界を誤魔化すかのように飾られているだけだ。
そこに一人の茶髪の青年がいた。柔らかな風貌と落ち着いた物腰。彼はそこで佇んでいた。

「慰霊碑ですか?」

シンがその青年に声を掛ける。

「うん、でもせっかく花が咲いたのに、波をかぶったからまた枯れちゃうね」

波打ち際の花はユニウスセブン落下の影響で潮を被ったのだろう。既に一部の草木は枯れ始めていた。それを見たシンは思わずつぶやく。

「ごまかせないってことかも……」

「え―――?」

「いくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす―――」

そう言って、そのまま振り返り、車に戻ろうとする。その言葉にどんな気持ちが込められていたのか、推測は出来ても理解は出来ない。マーレはその様子を見ながら車のエンジンをかけ、出られるようにしておく。

「―――もういいのか?」

「はい―――こんな偽善を、俺は見つめたくない」

そうして、彼らは一度目の邂逅をはたし、そして、物語の運命は進みだす。









プラントに無事辿り着き、俺は議長と(ようやく)別れることになり、ゲルググの開発部まで戻る。ミネルバで得たゲルググの実戦データは多く、充実したものとなった。これならば、ロールアウトまでの期間を短くすることも可能だろう。

「うん、いいね。ロールアウトはまだ先だけど、多少の先行配備は間に合うかな?」

先行配備予定の部隊、おそらくは特殊部隊だろう。上層部直々(議長かどうかは知らない)の命によって配備される予定のF型。機体数はそれほど多くはなく三機程度。F型は海戦仕様として造っていたのだが、特殊戦闘用に軽量化と運動性を高めさせてもいる。

「良いね、G型やJG型は間に合いそうにないけどデータを取れた他のタイプは大幅に縮められそうだ」

データを開き、その情報を元に機体のスペックを高めながら修正を入れていく。機体によってどの部分に負荷がかかるのか、どの機動データをOSに反映させるか。

「情報を獲得するにはやはり実戦が一番だな」

コーヒーを入れて口に含みながらそう言う。相変わらずここにあるのは不味いインスタントだと感じたのでミルクと砂糖を適当に入れながら、データを見ていくとある部分に目が留まる。

「このレイの戦闘データ―――最早これは先読みレベルか?」

デコイによって騙された時のレイ機の戦闘データをみて、そう思う。やはり彼は優れた空間認識能力を持っているのだろう。まるで後ろに目がついてたかのように、切りかかったダガーLの攻撃を半身で躱し、逆に見えないであろう位置から正確にコックピットを貫いている。しかもエグザスのガンバレルを回避しながらだ。

「NTクラスの空間認識……」

もしかしたら、この世界も人類の革新者としてNTが存在したのではないか?思わずそんな馬鹿馬鹿しい考えが浮かぶ。空間認識能力が高いだけじゃNTとは言えない。それに、彼の家系はもとよりその特殊性を備えていると言うだけの話だったはずだ。NTが家系で遺伝するのか、果たして?仮にそうだとしても、宇宙に殆ど出なかったフラガ家の人間がNTになるのか?

「馬鹿ことを考えた……疲れてるのかもしれないな。いったん休むか」

そう言って席を立ち、仮眠室まで行くことにする。コーヒー一杯飲んだところで眠気が覚めることもない性質なのでゆっくりと休めるだろう。
そう思いながら出ていき、起動したままのPCはこれまでのデータを基に、複数の機体のデータを修正している画面が立ち上がっている。様々な形容の機体。肩が大きくなっているものやゲルググとは似つかない形の機体も映っている。そんな中で一番上に映っている機体トップの部分にはシュトゥッツァーと、そう書かれていた。









プラントと連合の開戦はロゴスによって予定調和のなりを見せた。ユニウスセブンを落としたのはコーディネーターだったと。彼らは愚かにもこの地球の人間を滅ぼそうとしたのだと。だから今こそ地球に住む住人はプラントを討つべきだと。大義名分を手にコーディネーターを滅ぼすのではなく、プラントを打倒する。そう言う流れを作る事で地球圏の住民を一致団結させるのだ。
コーディネーターを滅ぼすと言えばオーブのようにナチュラルとコーディネーターが共存する国を取り込むのが難しくなる。ならまず最初にプラントを滅ぼせばいい。そして、その後に残った僅かなコーディネーターを滅ぼすのだ。ロゴスの頭首ともいえるロード・ジブリールはそう考えていた。
総ては自分の思惑通りに進んでいる。そう思い、愉悦ながらにワインで口を潤す。ユニウスセブンが落下した時、ジブリールは怒りを抑えきれなかった。世界の頂点に立つべき自分がなぜこのようなシェルターという穴倉に一時でも隠れ、怯えなければならないのか。
落下させようとしたコーディネーターのテロリスト共には今でも怒りが沸き起こるが、そのおかげで大義名分を得ることが出来た。

「さて、皆さん。これで我々は戦争への大義名分を得、敵を討つことが出来るのです。憎き空の化け物どもをね」

ロゴスのメンバーを集め、ユニウスセブン落下の原因たる証拠を見せた後、彼は高らかにそう宣言する。

『しかし、ジブリールよ。些か早計ではないかね?今、地上はユニウスセブン落下の影響で混乱しておる。だが、あのデュランダルの若造はこちらを支援するなどと抜かし、動いておるぞ。そんな状況で戦争を仕掛ければあの化け物どもは余計な事をしでかすんじゃないのか?』

「世界はね、システムなんです。だからつくり上げるものとそれを管理するものが必要だ。人が管理しなければ庭とて荒れる。誰だって自分の庭には好きな木を植え、芝を張り、きれいな花を咲かせたがるものでしょ……雑草は抜いて。ところかまわず好き放題に草を生えさせて、それを美しいといいますか?これぞ自由だと……。人は誰だってそういうものが好きなんですよ。きちんと管理された場所…物…安全をね…」

『むう……』

「今、空の化け物どもを討たねば、その庭は荒らされるのですよ。我々は教えてあげなければならないのです。何が雑草で、何が美しい花なのかを……」

消極的な意見を言ったロゴスの一人はジブリールの意見に押し黙る。別段、彼とてコーディネーターを生かしたいなどと思っていないので当然の反応だろう。

『だが、勝算はあるのかね?地球が荒らされた今、我々に長期戦は難しいぞ』

「勿論ですとも。直接プラントを討てばいいのですよ。核を使ってね―――」

その言葉にロゴスのメンバーが騒ぎ出す。使う事そのものに反対な訳ではない。報復を恐れているのだ。かつての二年前の戦争。あの時に使われたジェネシス。ロゴスのメンバーは空の化け物とコーディネーターのことを言うが、それは侮っているからではなく、恐れているからこそだ。

『無謀ではないのか、ジブリール?』

『そうだ、万が一失敗した時はどうする気だね』

口々に喚きたてられる反論、ジブリールは年を取った老害は自己保身だけは強くなってと思うが口に出すことはしない。いかにジブリールがロゴス内において最も権力を持つといっても、それはあくまでロゴス内による多数決で選ばれたからこそだ。
彼らにとって都合の悪い動きをジブリールがするようになれば、すぐさまこの席から降ろされ、別の誰かがこの席に座ることになるだろう。故に、彼は癇癪を起すように喚くのではなく、説得するのだ。

「皆さん、何を恐れる必要があると言うのです。今ここで討たねば寧ろ危険なのですよ。それにですね、仮に失敗したところで地上にいるザフトの数は少ない。一気に蹂躙できるんですよ。そうすれば少なくとも空に化け物を閉じ込めることが出来る」

『…時期を見てもいいんじゃないかね?』

「その考えが甘いのですよ。デュランダルは自らの同類が行った蛮行を別の誰かの罪に押し付け、まるで自分たちは悪くないと言い張る。そして、この母なる地球へ支援を行うと抜かすのです。
これを見逃せば、愚盲な民衆はこう思う事でしょう……コーディネーターは危険ではないと。
ユニウスセブンを落としたのは目の前に手を差し伸べようとしているコーディネーターにも関わらずですよ!まるでこれでは出来の悪いマッチポンプのようではないですか。
ですが、民衆とは愚かなのです。だからこそ、そのような事態に陥る前に我々が率いねばならない。彼らが差し伸べているその手は詐欺師の手なのだとね」

我々が率いる―――その言葉が琴線に触れたのか、気を良くしてロゴスの面々は賛同していく。ジブリールはその様子を見て馬鹿な奴らだと思うが、利用できる存在であることに変わりはなく、気分を良くし戦争を―――否、一方的な虐殺を始める準備に取り掛かった。




 
 

 
後書き
慰霊碑にはラクスもいるんですが、流石に冷静な状況のマーレが居たりしたらばれるんじゃないかなというわけで退場してもらいました。
そして、F型三機分の配備―――内一機は隊長機なのでFSなのですよ!希少過ぎて0083の段階じゃシーマ様位しか乗ってなかった、あの!そしてデータ上だけだけどクラウ機登場。早いとこ完成させて乗せたいです。
ジブリールの演説(笑)は個人的には気に入ってます。ある意味、彼って誰よりも子供っぽいですし(笑) 
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