カンピオーネ!5人”の”神殺し
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進むとはなんだったのか・・・
そもそも。
まつろうとかまつろわないとかそれ以前に、そもそもナイアーラトテップは『邪神』である。
人を騙し、人を陥れ、人を狂わせる。世界滅亡の鍵になってしまうかもしれないような核兵器の開発すらも扇動し、人間と神々を嘲笑い続けているという、まさに『悪神』の代表格と言ってもいい。
彼女がナイアーラトテップという『邪神』である以上、彼女が人を傷つける行為をするのは、最初から決まっていたことであり、通常ならばそこに疑問を持つこと自体が可笑しい話なのである。
・・・が、現実問題として、実際に彼女は疑問を持っている。己の持つ力に。『彼を傷つけたくない』と考え、『どうにかして彼を救いたい』とすら思っている。しかし、『まつろわぬ性』というものは本当に厄介なもので、心では傷つけたくないと思っていても、どうしても破壊衝動を抑える事が出来なかった。もし、記憶と神性を取り戻し『まつろわぬナイアーラトテップ』として覚醒を果たした今の自分の前に彼が現れたら、自分は彼を殺してしまうだろう。
もし、今この場所にいるのが自分だけならば、自分がこの島から去ればよかった。彼の持つ神器に権能を簒奪されたままだが、いくら神器とはいえ、それ程長い期間神々の権能を保ち続けることなど不可能な筈。時間が経てば、奪われた権能は、自然に彼女の元へ戻ってくるハズだった。
しかし、この状況で彼女がこの島からいなくなるのは悪手である。
何故なら、彼女の宿敵であり天敵である、『まつろわぬクトゥグア』がこの島に存在しているからだった。彼女は、彼のことをなんとも思っていない。あの時見逃したことすら、彼女の気まぐれが起こした奇跡に近いのだ。殺したいほど憎んでいるナイアーラトテップが居なくなれば、その怒りと恨みをこの島に向ける事も、十分に考えられる事だった。もしそうなれば、この島は原型を留めない程に焼け焦げて、地図の上から消失してしまうだろう。
ならば、彼を守る為にはどうすれば良いのか?
彼女が出した答えは、守りではなく攻め。
どうせ彼には、ナイアーラトテップとクトゥグアの精神汚染の権能は効かない。ナイアーラトテップから奪い取った権能が、その効果を中和し、打ち消してくれるからだ。ナイアーラトテップが覚醒したことにより、神器が奪い取った権能も効果を発揮しているはずなので、怪我は修復しているだろう。後は、彼が安全な場所で隠れてくれているのを信じるだけだった。
(でも、そこまで心配はしなくてもいいですよね?今回のことで、まつろわぬ神がどれほど危険な存在か分かったでしょうし。態々自分から危険に飛び込むはずが有りません)
まぁ、この推理には穴があるのだが。
そもそも、何度も言うが、護堂はただの一般人である。よって、『まつろわぬ神』などというオカルトのことは、何一つ知らなかった。しかも、本当ならば怪我が治った時点で、記憶の操作などをされていても可笑しく無かったのだ。記憶の操作をされなかったのは、エリカが彼に対して誠実に応対し、本来ならば隠すべき世界の裏の事柄を話したからに過ぎない。一般的な魔術師ならば、記憶を操作して放り出して終了だっただろう。
この場合だと、護堂は自分が死にかけるような怪我をしたことすら忘れて、島の危険な場所をウロウロしていたかもしれない。
(まつろわぬ神は危険なんです。彼の近くにいるべきではない。・・・だから、あのクトゥグアを撃退することに成功したら、すぐに私もここを離れるべきでしょうね。・・・そうすれば、彼は日常に戻れる)
そう思考した瞬間、チクリと胸を何かが刺したような感覚がした。―――が、すぐに気のせいだと思い直す。
―――否。気のせいだと思いたいのだ、彼女は。
だから、この数十分後、彼女の前に彼らが現れた時、彼女は酷く苦悩していた。
もう一度出会えて嬉しい気持ちと、まつろわぬ性によって、彼を殺さなければならぬ悲しみに揺れ動いていたのだ。
後書き
何で、『邪神』であるナイアーラトテップに感情があるのか?
そもそも、この作品に出てくる彼女は、この世界の日本でも連載されている、這いよれ!ニャル子さん!という作品のニャル子さんと、原作のナイアーラトテップがいい感じに融合された存在、という設定です。
まつろわぬ神は、物語の中核を成す神話が改変されると、姿形に加えて、性格まで変化するという特徴があります。(原作のアーサー王など)
そして、そもそもクトゥルフ神話自体が、シェアードワールド、つまり、複数の話によって構成された体系です。つまり、ここにニャル子さんが追加されても、全く変じゃないってことなんだよ~!!!
・・・つまり、あの作品のラブコメ要素を取り入れた結果、『邪神』のくせに、人間的な考え方も出来るようになったという言い訳。苦しいのは理解していますが、そういうことにしておいてください。
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