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俺と現実とファンタジー

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part20 英雄 そして 勧誘

「…………というわけだ、どうだろう? 俺たちの仲間にならないか?」
「……」

俺は今、制服の上に漢服を着た男、そしてその仲間達と向かい合っていた……





――遡ること、数分前――

俺はいつも通り適当な場所で特訓をしていた。……誰か走り寄ってくる……ってシャグリーンしかいねぇだろ、何考えてんだ俺……

「翔太、翔太よ! いい加減教えてくれんか? お主の能力がどうパワーアップしたのか気になるんじゃよ~!」

そう、俺の能力がパワーアップしたこと”だけ”はシャグリーンに教えたが、どうパワーアップしたのかは教えてないのだ。

「安心しろって、ちゃんとそっちの特訓もしてるからよ」
「うむ、そうか! それは何より……ってはぐらかそうとするでない!」

いや、今のではぐらかされかけたお前もどうかと思うんだが……

「今日という今日は教えてもらうぞ! もう気になってしょうがないのじゃ! 夜も眠れんほどに!」
「だから実戦でのお楽しみだっての」
「言葉で教えるぐらいはできるじゃろうが! それにいつ起きるかもわからない実践を待て……」

シャグリーンが喋るのを止め、虚空を向いた。 ……この行動が何を表すかぐらい俺だってわかる。

「どうやら実践の機会がきたようじゃのぉ……」
「……みたいだな」

俺たちは虚空を向き身構える。その瞬間、ファンタジーではよく見る魔法陣らしきものが現れ、光を放つ……そして、黒髪の漢服を着た男、白髪の優男、金髪の女、巨躯の男、まだ幼さが残る少年がいつの間にか現れていた。

「やぁどうも、俺の名は曹操、そう名乗っている。一応、三国志の曹操の子孫でもある。」

開口一番名乗りを上げた曹操という男を見て、俺は少し意外に思った。これまでのやつらが持っていた”油断”がこいつ……いや、こいつらにはなかったからだ。それに名乗りをあげたのも不思議だった。
今までは、こちらが聞けば向こうは一応教えてくれる、けどすぐ攻撃、という流ればかりだったからだ……だがこいつらは軽く身構えてはいるが、今すぐ攻撃という雰囲気ではない。
……そして男の口から、俺にとってはさらに驚くべき言葉が発せられた。

「おっと、もしかしたら誤解しているかもしれないから先に言っておく。俺は……俺たちは”人間”だ、悪魔や堕天使などの人外じゃない」

……この世界ではじめて転生者以外の”力がある人間”にあったからだ……





……男の話を簡単にまとめると、

・自分たちは『禍の団』(カオス・ブリゲード)という組織に所属しているということ

・その中でも曹操は、”英雄派”という派閥を纏めている者だということ

・自分たちの最終目的は『禍の団』のトップを『次元の狭間』という場所に帰れるようにする事だということ

・曹操は才能ある人間を探しており、その時に特異な力を持つ俺を偶然見つけたということ

・目的の為にテロ行為も行っているということ

・自分たちが動く理由は人間としてどこまでやれるかを試す為だということ

……といったところだ。まだまだ他にもあったが……

……実を言えば共感できる部分もいくつかある……特に『神器(セイクリッド・ギア)』のせいで迫害され、惨めな人生を送ってきた者たちに活躍の場を与えたい』……この言葉にはかなり共感できると思った。
……自分も似たような目にあったからだ……転生前も、転生後も……だが!

「断る」

その答えに、シャグリーンは安心してような顔をし、曹操は少し眉を下げた。

「翔太……」
「……その理由は?」

確かに俺も人間としてどこまでやっていけるか試したい気持ちもあるし、何より仲間だって欲しいと思った……それに俺は、主人公側の原作キャラには敵認識され、もう二度と”主人公側”には付けない所まで堕ちた……けどな

「俺は……テロリストにまで堕ちる気はねぇっての」
「君は人外に勝手に”悪人”だと決めつけられ、散々な目にあったと聞いたんだけどね……」

……だからなんだよ……

「あいつらのことは許す気はねぇ、むしろまだ憎んでいる……あいつら側につこうとも思わねぇ……だけどなぁ……

だからってテロリストになってまで復讐しようなんざ思ってねぇし、そもそも復讐なんて考えてもねぇっての!」


sideシャグリーン

ふう……ヒヤヒヤしたのじゃ……
まあ、同じ人間だからってこやつらが丁重に扱うとは思わなかったということもあるんじゃろうな。それにこやつらが仮にいい奴らだったとしても、組織は一枚岩では無い。ほかの派閥が人間をゴミ程度にしか思っていなかったら……何よりこやつらが”いい奴ら”ではなかったら……いや、テロ行為行っている時点でいい奴らでは無いか。

「力ずくは……まぁ別に嫌いじゃないからいいか。ジーク!」

「ああ!」

くっ! 結局、力尽くだろうがなんだろうが仲間にするつもりだったんじゃな!
白髪の優男がこちらを向き腰にさしてある剣のうち、一本を抜いた。

「この剣は『魔帝剣グラム』。最強の魔剣だよ」

そう言うやいなや走り出し、目の前からいきなり消えた。

「は、速い!? 翔太!」
「ああ、全然見えない……」

しかもあの剣は帯刀したのを抜いた……”無”から作り出された剣では無いということ。つまり、能力はなくなるが、普通の剣としては翔太に当たる。
おまけに、さっきも言った通りコイツの動きに翔太はつていけてない……結果、翔太は成すすべもなく斬られてしまう! 

「あれ? 灰色髪の子、ジーくんの動きについていけてないみたい……案外たいしたことないのかな?」
「そういやアイツ、人外としか戦ってないんだよな……もしかして、弱点は”同じ人間”か?」

しまった!? 弱点に気づかれてしもうた!?

「へぇ、なら怯える必要もないね」

どこからともなく声が聞こえる! ど……どうすればいいんじゃ!? このままでは翔太が!
……だが翔太の顔を見た瞬間、焦りが消えた……。翔太は目線のみこちらに向け……

……”笑っていた”、そして、

「シャグリーン、忘れてねぇか? 俺の能力はパワーアップしてんだって。それに……




俺の能力は『起こったことを転生前の世界で再現するとどうなるか』って力だぜ」



そういった次の瞬間、白髪の動きが”止まり”―――白髪の頬を翔太の拳が打ち抜いていた……

 
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