SeventhWrite
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一日目(2)
「……それで大樹はラブレターを書いたけど渡し損ねて、それに気づかずにここでその、唐橋さんを待っていたの?」
「はい、その通りでございます」
結局僕はあの後こずえを呼び止めて全てを話してしまっていた。ちきしょう、一体どこで間違えたんだ。ラッキーアイテムを持ち歩いてなかったからか!?
「プックク……」
「おまっ!笑ったな!笑いやがったな!!人の失敗を笑う奴なんて犬に噛まれて死んぢまえぇ!!!」
大激怒している僕の顔を見ながらこずえはおなかを抱えて笑い出した。
「ぷっくく、ふふふ、ご、ごめっ、ぷっあはははははっははははは、お腹…痛、…あははははははあははは……ごほっごほっ、十世一代だって、ふふふっ、く、くるし……ごほっごほ…だい…き…かお………まっか……」
「てめぇ!謝る気ねぇだろ!ってか笑いすぎだぁ!」
笑いすぎて過呼吸をおこしてるこずえに向かって怒鳴りつけた。顔が赤くなってしまったのは怒っているからです。決して恥ずかしいからではありません。勘違いすんなよ!!
~三分後~
「ふぅすっきりした」
笑いすぎて涙まで流しているこずえに対して僕は体操座りで地面にのの字を書きながらいじけていた。
この時間ここは完全に無人なので(だから告白や喧嘩などでよく使われる)人目を気にせずにいじける事が出来た。
「なんだってこんなミスをしちまったんだ僕は」
真剣に頭を抱える僕にまだニヤケ顔のこずえがボソッと言う。
「ま、大樹らしいっちゃらしいけど……」
何だそりゃ、いったいコヤツは僕にどんなイメージを持ってるんだ?
「僕らしいって何だよ!?」
その問いにこずえは余裕の表情で答える。
「レタスと白菜を間違えるのが貴方らしさよ」
「間違ッッッ……た…事もあるけど、それ五歳の時だろうが!!」
なんて昔の事を掘り返してくるんだ!恐るべし幼馴染!!
そんなツッコミに対してさらに昔を思い出すような表情になって
「懐かしいな…農場見学の時に一人『あれがレタスだよ』って自信満々で言って農家の人に白菜だって言われた時の大樹の顔……」
「やめてぇ!それ以上言わないで!!」
誰にも聞かれてないのに恥ずかしい!!超恥ずかしい!!!!!
「そんなアホらしさが、貴方なのよ」
少し芝居がかった言い方をするこずえを見て、少し頭が覚めた。
あぁ、またからかわれたよ……。
「どーせ僕はアホな子ですよーだ」
諦めて開き直った僕にこずえは、頭をポンポンと叩き優しく笑いながら
「やっと自覚できたんだね、お姉さん感激」
追い討ちをかけてきやがった。
「てめぇ!いい加減にしやがれ!」
凹んでいるのに追い討ちしてきたこずえの頭に置かれている手を強く掴んで立ち上がった。そしてそのまま自分のほうに引き寄せる。
「え?ちょ…まって…」
ふん、ざまぁみ……あれ?こずえってこんなにでかかったっけ、……しまった、こいつ、僕より背が高い、つまり
「ちょ…おま……倒れてくんなぁ!」
引き寄せたまま支えきれずに僕のほうに倒れてきた。
「引っ張ってんのそっちでしょー!」
どって~ん
とりあえず僕はこずえを地面にぶつけないよう自分が下敷きに(元々下だけど)なるように倒れた。
うぅ~めっちゃ背中痛いようぅ。
「痛ったぁ~…」
ん、何か顔に温かい空気が当たる、転んだ拍子できつく目を瞑っていた僕はゆっくりと目を開けた。
「………………………」
一寸先のこずえと目がバッチリ合いました。こずえは鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしている。
……ええとなんだっけ?こういう時はどうするんだっけ?……確かアメリカのドラマとかだと熱いキッ……
「っじゃなくて!近い!近いよこずえ!さっさと起きて!?」
慌てて起き上がろうとするけどこずえが邪魔で起き上がれない。と、その時破滅の声(エンジェルボイス)が聞こえた。
「こ、こんな所で!?なんて大胆なの?」
……ちょっと待てぇ、なんでだ!?なんで彼女がここに?なんだって唐橋さんがこんなタイミングで現れるんだよぉ!!神様ぁ!居るならでてきやがれぇ!!鼻っ面へし折ってやるぅ!
「ご、誤解だ唐橋さん!これは事故なんだぁ!」
僕の魂の叫びがどう伝わったのか分からないけど唐橋さんは何かを悟ったように一人でぶつぶつと呟きながら
「そうよね、最近は学校でするのも普通なんだね…」
と、しきりに納得していた。というか自己暗示していた。そんな慌てる姿も可愛いぜちきしょうぅ!そしてようやくこずえの下から這い出た僕はパニックをおこしている唐橋さんに突っ込みをいれる。
「唐橋さん、落ち着いて聞いてね、これは不慮の事故なんだよ!!僕は潔癖さ、なんたってこんな暴力デカ女に興味なんて……」
僕はやっと立ち上がったこずえを指差して身の潔白を訴えようとして数秒後、自分の失言に気付いた。
振り返ると…………般若が立っていました。
あ……死んだこれ
「大樹の………大樹の…………ッッバカァァァ!!!!」
ッパァァァァアン
鋭いビンタがとんで来ました。
……あれ?目の前が真っ白に………
夢を見ていた、そんな気がする。目を開けたら朝だった。窓からは光が差していて、外では小鳥がチュンチュンと小さな演奏会が聞こえる、自分の部屋なのだが何故かベッドではなく机に座っていて目の前に『唐橋さんへ』と書かれた新品の青い便箋と真っ白な手紙がある。部屋にはコミック等が詰まった本棚と衣装ケースやノートパソコンがある、いつもどおりの自分の部屋だった。
左手に違和感を感じて、見てみるとみると蚊に刺された痕があるだけだった。
ボリボリボリ(左手を掻く音)
えっと、つまり
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