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DQ3 そして現実へ…  (リュカ伝その2)

作者:あちゃ
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お出でませ、魔の島

<魔の島>

町の嫌われ者を自主的に出て行かせたリュカは、サマンオサに次ぐ慕われ様で町民達に持て成され、惜しまれながら翌日出立をした。
そして一行はリムルダールより西に4日の距離にある、最も魔の島と近付く突端へ辿り着く。

「ルビス様…ここでよろしいのですか?」
アルルが懐から『虹の雫』を取り出し、ルビスへ確認をする。
「ええ、この場で虹の雫を天に掲げ、心より祈りを捧げれば虹の橋が架かり、魔の島へと渡る事が出来るでしょう」

ルビスの言葉を聞き、アルルは言われた通りに虹の雫を空高く掲げ、目を閉じて祈りを捧げる。
するとアルルを中心に七色の光が溢れ出し、美しい虹が目の前に現れた!
そして次の瞬間には虹が橋になり、魔の島への架け橋になっていた。

目の前で起きた出来事に驚き感動していると、そう言う事に慣れてしまったリュカ一家が、家長を先頭に勝手に橋を渡り出す。
「虹が橋になるなんてメルヘンチックで良いわねリュカ♡」
「うん、そうだね。愛し合う者同士で渡ると幸せになれるってジンクスを勝手に作っちゃおう!」
「父さん…これから敵の本拠地に赴く橋なのだから、そんなジンクス駄目でしょ!?」
「あら!?お兄様ちゃんはロマンがありませんですわ!男女に立ちはだかる困難…それに立ち向かう為、愛の絆を強くする!そう言う橋ですわ!」
一家揃って身勝手な会話で先へと進む…

「なるほど…じゃぁ僕はアルルと共に渡らないと………あれ?どうしたのアルル…渡らないの?」
勝手に作ったジンクスの為、愛するアルルと共に渡ろうと思ったティミーが振り返ると、呆然とするアルル達が佇んでいる。
「わ、渡るわよ!………はぁ~…やっぱりティミーもリュカ一族なのね…」
慌てて橋を渡り出すアルル…
「な、何でそんな失礼な事を言うの?」
自分の家族に対し、もっと失礼な事を言うティミー。

「だって…普通、虹で橋が出来上がったら驚いて直ぐに行動出来ないでしょ!……でもティミーはこう言う不思議な現象に慣れていて、驚きもしないじゃない!リュカ一族の血筋よね…」
「えぇ!!?そんな…だって…別に…ねぇ?」
足早にティミーの隣まできて、唇を尖らせ拗ねてみせるアルル…そんな彼女の行動に困り、父に目で助けを求めるティミー。

「何だ…もう破局したのか!?早いだろうなぁ~…とは思っていたが、これ程までとは…まぁいいんじゃねティミー。グランバニアに戻れば、王子様なお前は引く手数多だ!前向きに行こうよ(笑)」
助けるどころか別れる事を前提にしたリュカのコメントに、アルルは慌ててティミーの腕に抱き付き言い返す。
「は、破局なんてしてないわよ!私はティミーと一緒に感動を分かち合いたかっただけなの!ティミーを手放す訳ないでしょ!」

「…何だ…遂に息子の好色時代到来かと思ったのに…残念だなぁ。身に覚えある無しに拘わらず、多数の女性とその子供に囲まれて、家督相続問題で大混乱するティミーの姿を見たかったのになぁ………」
「変な願望持たないでください!例えアルルにフラれても、父さんの様に手当たり次第に子孫繁栄する事などありませんから!同系列で考えないでください!」
アルルと抱き締め合いながら、リュカの言葉にツッコミを入れるティミー…しかし、状況的には助けられたので、満面の笑みである。

「あらあら…リュカ君の家庭には大混乱の兆し有り?」
娘カップルを羨ましそうに眺めてたアメリアが、リュカの家庭を心配するフリをして、夫が不在なのを寂しがる。
「そうよ。どっちかつーとお父さんにこそ訪れそうなシチュエーションでしょ!」
「え?僕には訪れないよぉ~…だって欲しい人に家督はあげちゃうもん!先着順で欲しいと言った人にあげちゃうからね(笑)………マリー、要る?」
「いらな~い…お姫様という立場の方が気楽でいい」
屈託のない笑顔で完全拒絶するマリー。
「父さんの統治は完璧すぎるんです!跡を継いだら混乱を起こしそうで、怖くて継げませんよ」

「リュカはそんなに民に慕われる国王なのですか?」
目の前の異世界から来た王族の会話を見て、強制召還の一翼である女神ルビスが驚き尋ねる。
「そうなんですよルビス様♡ リュカが統治を初めて10年も経過(たっ)てないのに、国力は5倍以上に、人口はそれ以上に増大し、周辺諸国を圧倒的に追い越したんですよ!」
ビアンカは愛する夫の偉業を、異世界の女神に嬉々として語る。


そんな緩い会話を楽しみながら、アルル一行は全長10キロ程の橋を魔の島へ向かって渡りきる。
するとそこには、今まで見た事ないモンスター…『ヒドラ』が待ち構えていたかの様に現れ、不意を突いて攻撃をしてきた!
一番先頭を歩いていた為、ヒドラの吐く炎をまともに喰らいそうになったリュカは、思わず攻撃してしまい一瞬で(ヒドラ)を絶命させた。

《あ、しまった!ビアンカと共に歩くレインボーブリッジ(笑)がロマンチックで先頭を歩いていたけど、渡りきった途端攻撃されるなんて考えてなかったから、余計な事をしちゃったかも…》
心ならずも若者達の役目を奪ってしまい、そんな事を思いながらゆっくりとアルル達へ振り返る。

案の定…妻・子供を始めとし、旅の仲間達の羨望の眼差しがリュカの身体に突き刺さる。
「あ…こ、これからは気を引き締めて行こう!もうここは魔の島で、何時何処から攻撃されるとも限らない。…つーわけで、僕は最後尾を守らせてもらいますぅ~」
リュカは少しでも身を小さくし、アルル一行の後方へ就こうと動き出す。

「ちょっとリュカさん!こんなに強い敵が蔓延ってるのだから、リュカさんが先頭で活躍してくださいよ!」
「そうですよ父さん!今まではアルル達の成長を促す為に、あえて戦闘への参加をしなかったのでしょうが、大魔王を倒せばその必要は無くなります。今まで迷惑かけた分、これ以後は先頭で活躍してくださいよ!」
W勇者の正論攻撃に、屁理屈キングのリュカが立ち向かう。

「どうかなぁ~…魔王バラモスを倒したら大魔王ゾーマの存在を知る事になった…まだ上が居て、超大魔王ゾラモスとか真大魔王バーマとか要るんじゃね?それからでも良くね?」
無茶苦茶な理論で拒絶する最年長者…
しかし…
「そんな存在居りませんわ!大魔王ゾーマを倒したら、この世界は平和になります!」
(マリー)の力強い言葉に後押しされ、アルルやティミー以外も一斉にリュカ先頭論を叫び出す。
何故マリーがそんな事を言い切れるのかは取り敢えず置いといて…

「イヤだ!先頭なんて危険で疲れるじゃんか!実質僕には関係のない事なのだから、僕がそんな思いをしなきゃならない理由は無い!」
「何言ってるんですか!?ゾーマを倒さないとグランバニアに帰れないんですよ…それじゃ父さんはともかく、母さんが悲しむでしょう!」
危険地帯における長い問答を避ける為、ティミーが取り出したのは伝家の宝刀…ビアンカの為と言われてしまっては、流石のリュカも意固地になれない。

「う…ぐっ……卑怯な……」
「卑怯じゃありませんよ。ご自身でどう思っているのかは知りませんが、実力は間違いなくズバ抜けているのですから、最後くらいは皆に協力してくださいよ」
更に続くティミーの正論攻撃。
「なるほど…最後くらい……うん。そうだね、最後くらいは僕も戦闘に参加するよ!」
「ほ、本当ですか父さん!?あぁ…良かった…これで戦闘が楽になる!」
珍しく父を言い負かせたと思い、嬉しくなるティミー。

「うん。最後の大魔王戦だけは僕も戦うけど、それまでは後方で待機させてもらうよ」
そう言うとリュカは、何時もの定位置であるパーティー最後方に陣取り、笑顔を振りまき始めた。
「「「「「え?」」」」」
調子 ()いたティミーの『最後』と言う言葉を言質に取られ、結局ゾーマまではこれまで通りという結果に陥る事に…

本当は問答を続けようとしたのだが、
「おいおい…そんな事より敵さん登場だゾ!醜い贅肉まみれのモンスターが現れたゾ!」
と、後方のリュカに指摘され全員戦闘態勢に…

現れた『トロルキング』3匹を駆逐する為、問答は有耶無耶の彼方に飛び去った。
誰もが心に誓いを立てる…
大魔王戦はリュカに押し付けよう…と!



 
 

 
後書き
遂にゾーマの城へご乱入!
そんな中、思い悩むのは勇者アルル…
この世界の勇者である自分より、遙かに強い存在が側にいる為、自身の存在を不安に感じてしまうのだ…
だが、そんな愛しのアルルを救うのは彼氏である異世界の勇者ティミー!
彼女の為なら怪我する事を厭わないティミー!

果たしてアルルの心を救う事が出来るのか!?

次回、
『大魔王ゾーマの城』

彼女の為に胸を痛めるティミーにご注目!
 
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