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万華鏡

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第三十三話 合宿の終わりその十三

「八条清掃広島支社の人達がね」
「あっ、同じグループの人達がでるか」
「来てくれてなんですね」
「そうだよ、工場の中の掃除は僕達もしてるけれどね」
 おじさんはいかつい身体に顔だ、それは工場の古株に相応しいものだ。だがそれでもその口調は穏やかで一人称もこうだった。
「清掃の人達もいてくれてね」
「工場の敷地全体がでるか」
「清潔なんですね」
「トイレと厨房はね」
 特に汚れやすいこの二つの場所はというのだ。
「念入りに掃除してるよ」
「そこまで清潔にしてるんですか、この工場って」
「まずは整理整頓、清潔さだよ」
 この二つが大事だというのだ。
「それだよ」
「ですか、じゃあ」
「今から」
「バスに乗って」
 そうしてバスの中から見学するというのだ。
「ここは広いから歩いてだとちょっと辛いからね」
「あっ、線路もありますね」
 里香はそれも見つけた、あまり広い線路ではないが工場の敷地内にそれもあるのだ。
「あれも使ってですか」
「あれでは人はあまり移動しないけれどね」
「ものをですか」
「そう、大抵はものの運搬に使うんだよ」
 それがこの工場の中の線路の主な目的だというのだ。
「その為のものだよ」
「運搬用ですか」
「そういうのも見てね。じゃあ今から案内するよ」
 今は猫と別れてだった、そのうえで。
 琴乃達はバスの中から工場の中を見学した、多くの建物がありその中で多くの人が働いている。そして様々な設備が動いている。
 誰もが動き汗を流している、それを見て。
 琴乃はバスの横を通り過ぎたトラックも見て話した。
「ううん、本当に大きな工場で」
「活気も凄いわよね」
「ええ、そうよね」
 彩夏に応えて言う。
「この工場の中って」
「最近車売れてないっていうけれど」
「あっ、そんな話もあるわね」
「ここは違うのね」
「そうみたいね」
 こう話すのだった、そして彩夏はこうも言った。
「まあ確かに車の売り上げは減ってるみたいだけれど」
「車は必要よね」
「うちでもあるしね」
 琴乃の家にも一台ある、家庭用の乗用車だ。
「お父さんもお母さんも乗るわ」
「うちもよ、お兄ちゃんも何時かね」
「免許取るつもりなのね」
「やっぱり免許あった方がいいからって」
 その見解からだというのだ。
「取るって言ってるわ」
「そうよね、やっぱり車の免許も必要で」
「車自体もね」
 車だけでは動かせない、免許だけでは乗れないのだ。
「だからね」
「車は必要だから」
 このことを話すのだった、そうして。
 琴乃は工場の中をまた見てだ、彩夏にこうも言った。
「八条自動車っていい車作るのよね」
「それで評判いいわよ」
「トヨタとか三菱と同じ位売れてるっていうけれど」
 自動車業界全体がそうである様に全体的な売り上げは落ちていてもだというのだ。
「凄いっていうわね」
「八条グループの主力産業の一つよ」
 それだけにだというのだ。 
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