少年は魔人になるようです
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第41話 魔人は戦い、少年が動くようです
Side ネギ
「『ヘヴンズフィスト』!!」
「ッ!『風花・風障壁』!!」
愁磨さんが赤く光って技を使うと、僕の頭上にいきなり巨大な機械の拳が出現して、落ちてくる。
咄嗟に『風花・風障壁』を使って防ぐけど、嫌な予感がして全力で後ろに飛ぶ。
ゴォウ!!
「うわあああああああああああ!!」
数瞬後、10tトラックの突撃でも防げる魔法の風盾を無いかのように破り、
機械拳が落ちて地面との接触で台風みたいな衝撃波が生まれ、飛ばされる。
「(あ、危なかった……!下がってなかったら潰されてた!)」
「第六感はやはり、驚愕に値するだけの数値だな。じゃあこれはどうだ?『シューティングスター』!!」
やっぱり、どこからともなく大砲を出して、弾が連射される。けれど、全部明後日の方向に飛んで行く。
「良く分かんないけど、チャン――!?」
「さぁ、間に合うか?」
チャンスかと思った瞬間、全ての弾が方向転換して僕に向かってくる。
期待が外れてしまい、思考が一瞬止まり対処が遅れてしまう。
「(先に当てれば・・・!)風精召喚 『剣を執る戦友!!迎え撃て』!!」
風の中位精霊12体を、僕を囲むように召喚して弾を迎撃させる。
けれど、迎撃する毎に爆発が起きて愁磨さんを見失ってしまう。
「しまっ「『ワイルドチャージ』」―――!」
後ろを振り向くと、爆発が晴れると同時に片腕が機械化した愁磨さんがロケットのように突っ込んで来る。
間に合わないと思った僕は、纏っていた魔力を全て使い無理矢理魔法を完成させる。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「『穿つ聖天』!!」
突撃槍のような僕の魔法と愁磨さんの腕がぶつかり、拮抗する。
さっきのように一瞬防ぐのではなく、既に3秒もぶつかり合っている。
「(この魔法は、悪魔に有効・・・。まさか、愁磨さんも悪魔なんですか・・・!?)だとしたら――」
「何を迷った!ネギ・スプリングフィールド!!」
「ガッ、フぅぁぁぁぁああ!?!」
『何故悪魔が父さんと』その疑問が頭を過った本当に一瞬、魔法が右に少しだけ逸れる。
愁磨さんはそれを見逃さず、機械腕で魔法を受け流す。
そして、残った突進力のまま僕は殴られ10mも飛んでいく。
「それで、と聞く必要はないな……。迷いも疑問も鬱積も、全く晴れていないようだな。
……装着"グレイソード"。」
左手に顔のついたオレンジの機械腕と剣を装備した愁磨さんが、飛ばされた10mを音も無く詰め、
僕の首に剣を突き付ける。
「……のであれば、ここで……。」
「ぅ、え………?」
「………じゃあな。先に逝ってナギとエルザさんを待つと良い。」
愁磨さんが最初何を言ったか聞こえなくて聞き返そうとしたけれど、
殴られた衝撃で喋れなかった。そして剣が振り被られて、僕の首を撥ね――――
――カロン
「フォッフォッフォ。あまりオイタが過ぎやせんかのう、愁磨殿。」
「クク、老体に鞭打って登場とはご苦労な事だ。」
ずに、下駄の音をたてて現れた学園長先生の指二本に止められていた。
学園長先生は、言葉はいつもと変わらないけど・・・雰囲気がいつもと全然違う。
「学園長!!」
「ネギ!!」 「アニキー!」
続いて、見た事のない魔法先生10人くらいと、明日菜さんとカモ君が来た。
「おやおや、随分連れて来たな。」
「………勝手について来ただけじゃ、危害を加えんでくれんかのう。」
「ウフフ、そんなの無理に決まっているでしょう?」
「・・・・・・・・・・。うにゅ・・・・・。」
更に、いつの間にか僕の後ろにノワールさんとアリアさんが来ている。
二人だけだったのに、一瞬で大人数になってしまった。
学園長先生が来てくれなかったら、僕は死んでた・・・けど!これじゃ父さんの事も、僕の事も分からない!
「明日菜ちゃんと……オコジョ君。ネギ君を連れて離れておるのじゃ。」
「ハ、ハイ!!ほら、行くわよネギ!!」
先生達は構えているけれど、愁磨さんもノワールさんも何もせず、明日菜さん達を通してくれた。
僕は明日菜さんの肩を借りて立ち上がり、離れて行く。
クソッ!僕に、僕にもっと力があれば・・・・・!!
「さて、代わりに楽しませてくれ。雑魚諸君?」
愁磨さんの尊大な言葉を最後に、僕の意識は落ちた。
Side out
Side ノワール
シュウが居ないので(と言うか戦っているから)寝付かないアリアを連れて
坊やと戦ってる広場に来たのだけれど、そこには隣学区の魔法使い達と、近衛門が居た。
ホントは坊やを焚きつけて、ちょっとだけ強化を進める予定だったのだけれど・・・。
悪魔との連戦は結構経験になってたみたいで、予想以上に強くなってたのを
シュウがついつい楽しんじゃった見たい。
「いくら可愛い顔してても、やっぱり男の子なのね~。困るわよねアリア。」
「・・・・・。」(コックリ
無言で肯定するアリア。でも、その動きが眠気に拍車を掛けたみたいで、何度もコックリコックリしてる。
ああ、いいわ。やっぱりかわいいわぁ~。
ドガァァン!! ドォン!
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!」
「フォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォフォ!!」
アリアを愛でていたら、シュウと近衛門が戦い始めた。
拳で拳をそれぞれ迎撃しながら、空に上がっていく二人。
シュウは≪Alucard≫しか使っていないとは言え、近衛門も負けてないわね。
戦う所を見るのは初めてだけど・・・軽く身体強化したシュウと素のままで打ち合ってるわね。
「あれに、身体強化と具現魔法が組み合わさるのかしら?フフ、凄く楽しそうね~。
後で私も遊びたいくらいだわ~。」
「んー・・・・先に・・・寝るのぉ・・。」
「フフ、そうね。ごめんねアリア~。
【シュウ~そろそろ帰ってきて~。アリアがとっくにおねむよ。】」
「【おお!?まぁ、こっちはいいか……。分かった。】と言う訳だジジイ。今日はここまでな。」
「フォッフォ!つくづく娘に甘いのう。まぁええじゃろ、久々に楽しめたわい。」
ザン!と200mくらい落ちてきて、それぞれこっちと教員の方へ行く。
ああ、やっぱりギャイギャイうるさいわね・・・。
「アリア、ごめんな?すぐに帰って寝ような。」
「・・・・んー・・・。んー・・・すぅ・・・すぅ・・・。」
シュウに頭を撫でられた途端、アリアは安心してか寝てしまう。
・・・私とシュウが逆でも、寝ないで待っててくれるのかしらね。
って、いけないわね。いつまで経っても、三人の事だけは不安になっちゃうわ。
「フフフ………安心しろって。」(ナデナデ
「……な、なにかしら?」
「いや、何でもないよ。……ホラ。」
シュウが目で差すアリアは―――
「・・・ん・・ママぁ・・・。」
幸せそうにちょっとだけ笑って、すり寄ってきた。
・・・ホントにずるいわね。なにがずるいって、愛しいのもあるけれど、
分かってる風なシュウが一番ずるいわ。
「愁磨殿。すまんが明日の朝は学園長室へ寄ってくれんかの。」
「……………………………別に構わんけどさ?」
「ええ、そうね。」
「「空気くらい読めよな(読んでよね)。」」
Side out
―――寮、ネギ達の部屋、木乃香は刹那の部屋へお泊り。
Side 明日菜
「ネギ、ネギ!しっかりしなさいよ!」
「ぅ、うう……?あすな、さん………?」
あの後、気を失ったネギを大急ぎで部屋まで連れて来た。
嫌な予感がして探しに行ったんだけど、まさか愁磨先生とやりあってるなんて。
「アンタバカじゃないの!?学園長が助けてなかったら死んでたわよ!!」
「ハイ……。でも、僕は……、ああしないと進めない気がしたんです……。
結局、中途半端で終わってしまいましたけど……
愁磨さんは、僕が一番欲しかったモノをくれました。」
ネギの一番欲しいもの・・・?それって、ネギのお父さんの居場所?
でも・・・・・ネギのお父さんは、死んだんじゃないの?
「アニキ。アニキが父親を見つけてぇってんなら、こんな無茶しちゃいけねぇ。
頼りにはなんねぇだろうが、俺っちがついてヤス!だから、一人で行かんで下せぇ!」
「か、カモ君……!!」
え、このオコジョ、変な物でも食べたのかしら!?
言ってる事が感動できるほどまともなんだけど!!
「それに、なんだかんだ言っても、姐さんもいやす!」
「ぅええ!?あたしも!?」
「ア、明日菜さん………?」
ネギが妙にキラキラした目でこっちを見て来る。
い、く、悔しいけど、確かにその通りよ・・・!なんか放っとけないのよ!
「ま、まぁ、色々縁もある事だし!?目の届くとこで死なれても寝覚めが悪いだけよ!
み、みんなだってアンタが居なくなると寂しいだろうし!!それだけよ!?」
「ククク、姐さん……。それは噂に聞くツンデレってやつですかい?」
「ち、違うわよこのエロ白淫獣!!」
「つ、つんでれ?って何ですか、あすnわぁぁぁぁあ!?カモ君!?」
オコジョの首を絞めてたら、いつの間にか紫色になってた。
あ、あぶないあぶない・・・。
「ゲフゲフ……。し、死ぬかと思いやした…。
で、アニキ。今後の方針を固めるべきでさぁ!アーカード軍を崩すのは大変ですぜ!」
「しゅ、愁磨さん達を崩す……って、それは、その、愁磨さんを倒すしか……。」
「そうよね。皆が皆を想ってはいるけど、愁磨先生が中心よね、あの集団は。
問題は……。」
いいつつ、二人を見まわす。
こっちには中途半端に強いガキ魔法使い、ちょっと体育が得意な女子中学生、
あとはエロいだけのオコジョ・・・。
「…………………や、闇討ちするしかねェ!!」
「ごめん、闇討ち出来たとしても、もみじさんか木乃香さん……くらいだよ……。」
「う、うう~~ん……。どっちも気が引けるわね。」
まさか木乃香に怪我させる訳にはいかないし、もみじさんだってクラスメイトだし。
それにあの子、この上なく攻撃し難い容姿……。
「分かりました……。
明日の朝、学園長先生にお話を聞きます!!話はそれからにしましょう!」
「これ以上は喋ってても仕方ないしね。今日は寝ましょうか……。」
でも、あの人頼るとロクな事が無い気がするのよね・・・・・・。
Side out
―――翌朝、学園長室前
Side 近衛門
「―――と、言う訳じゃ。隣学区どころか全学区の学園長から文句を言われてしもうたわい。」
「うわぁ……。絶対に行きたくないわ、ンな所。」
「人間って、本当におバカさんなのね?
近衛門一人にすら勝てないでしょうに。無知は罪ってよく言ったものよね~。」
全学園中最高の権力をもっとるワシの所で好き勝手されとると、
学園全体の権威が落ちる・・・と言うのが気に食わんと。
それで、今一度最高権力者を決定しようじゃないか、と話があった訳じゃ。
まぁ、やる訳がないがの。
「つまんねぇな~。力見せてやりゃ黙る…………とも限らんか。」
「そうじゃの。での、あちらが何か仕掛けて来るじゃろうが、
なるべく……なるべくでよい、穏便に済ませてくれんかの。」
「分かったわ。まぁ、再起不能にしなきゃいいでしょ?」
・・・要するに決定戦・・・そう、決定戦。魔法側の先生と生徒の総力戦をするのじゃが・・・
この二人どちらかだけでも殲滅出来るからの。
「そう言う訳じゃ、頼むぞい。」
「りょうっかーい。じゃ、授業してくらぁ。」
そう言って出ていく二人。
話を聞いてくれ、まだ人間的である分感謝せんといかんのう。
―――コンコン
「ホッ、誰かの?」
『………ネギ・スプリングフィールドです。』
「(ネギ君・・・?妙に気配が薄かったので気付かんかったわい。)
おお、ネギ君か。入ってよいぞい。」
「失礼します。」
おうおう、何やら思いつめとるのう・・・。
どうせ愁磨殿がらみなんじゃろうなぁ。そうなると大分しつこくなるのう。
「学園長先生………お願いがあるんです。
その、神多羅木先生と瀬流彦先生には悪いと思ってるんです。」
「……ほ?」
すっごく面倒な予感がするのじゃが・・・・?
「僕を……僕を弟子にしてくれませんか!?」
Side out
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