ソードアート・オンライン ~生きる少年~
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序章 僕の選択
第四話 デスゲーム化!?
前書き
やっぱり上下じゃ無理でした...。
『より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、ナーヴギア本体のロック解除または分解または破壊の試み――以上のいずれかの条件によって、脳破壊シークエンスが実行される。この条件は、すでに外部世界での当局及びマスコミを通して告知されている。ちなみに現時点で、プレイヤーの家族友人等が警告を無視してナーヴギアの強制除装を試みた件が少なからずあり、その結果....』
すると、茅場晶彦は一呼吸入れ、
「...残念ながら、すでに二百十三名が、アインクラッドおよび現実世界からも永久退場している』
二百十三人も死んだ!?
一瞬で膝が笑い、その場で尻もちつきそうになるが、こらえる。
と、横から、ドスン、と音が聞こえる。
みると、クラインさんが虚脱した顔で尻もちついていた。
「信じねえ...信じねえぞ俺は...」
石畳に座り込んだまま、クラインさんがしゃがれた声で言った。
「ただの脅しだろ。できるわけねぇそんなこと。くだらねえことグダグダ言ってねえでとっとと出しやがれってんだ。いつまでもこんなイベントにつきあってられるほど、ヒマじゃねえんだ。そうだよ...イベントだろ、全部。オープニングの演出なんだろ。そうだろ」
クラインさんが震えた口調で言う。
僕も内心、そうであってくれ、とずっと願い続けているが、僕たちを含む全プレイヤーのなぎ払うかのように、あくまでも、実務的な茅場晶彦のアナウンスが再開された。
『諸君が、置いてきた肉体の心配をする必要はない。現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、多数の死者が出ていることも含め、繰り返し報道している。諸君のナーヴギアが除装される可能性は低くなっていると言ってよかろう。今後、諸君の現実の体は、ナーヴギアを装着したまま二時間の回線切断猶予時間に病院、その他の施設へと搬送され、厳重な介護体制の中に置かれるはずだ。諸君には安心して...ゲーム攻略に励んでほしい。
「な...!」
そこで、キリトの口から鋭い叫び声が上がった。
「何を言ってるんだ!ゲームを攻略しろだと!?ログアウト不能の状況で、呑気に遊べってのか!?こんなの、もうゲームでもなんでもないだろうが!!」
ちなみに、僕も同意見だ。
同意見なんだけど...あの茅場晶彦が、このまま遊べ、と言うようには思えないんだよね...。
と、キリトの声が聞こえたかのように、茅場晶彦が穏やかに告げた。
『しかし、十分に留意してもらいたい。諸君にとって《ソードアート・オンライン》は、すでにただのゲームではない。もうひとつの現実と言うべき存在だ。...今後、ゲームに置いて、あらゆる蘇生手段は機能しない。HPがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、同時に』
その瞬間に頭にとある妄想が浮かぶ。
...そう。この考えは妄想じゃなくちゃいけないんだ。
予想じゃなくて...!
『諸君の脳はナーヴギアによって破壊される』
瞬間、胃から強烈な不快感が上がってくるが、それをどうにか抑えて自分の視界左上を見る。
そこにはHPの青いバーがあり、その上に、348/348という数字が表示される。
これがゼロになったとき...僕は...死ぬ。ナーヴギアに脳を焼かれて。
僕はβテスト時、軽く八十回は死んだ。そして広場の北に見える《黒鉄宮》という建物の中で、蘇生され、また戦場に戻った。
でも、RPG...特にこういうゲームはそうやって成長していくものじゃないの!?
でも、それができない...!?一度死んだら、現実でも死んじゃう?
その上、ゲームプレイをやめることもできない...?
「...バカバカしい...」
隣でキリトが呟いた。
...確かに馬鹿馬鹿しい。そんなの、全員、この《始まりの町》を出ないに決まってる。
しかし、僕ら...もしかしたらみんなの思考を読み続けているかのように、次の言葉を発した。
『諸君がこのゲームから解放される条件は、たった一つ。先に述べたようにアインクラッド最上部、第百層までたどり着き、そこに待つ最終ボスを倒してゲームをクリアすればよい。その瞬間、生き残ったプレイヤー全員が安全にログアウトされることを保証しよう』
しん、と約一万人のプレイヤーが黙った。
...城って、このアインクラッドのことだったのか...。
「クリア...第百層だとぉ!?」
突然、隣にいたクラインさんが喚きだした。ガバッと立ち上がり、右拳を頭上に向かって突き出す。
「で、できるわきゃねぇだろが!!βじゃろくに上がれなかったって聞いたぞ!!」
...真実だけど、そう言われてるとなぁ...少し面目無いような...。
千人のプレイヤーが参加したSAOのβテストでは、二か月の期間でクリアされたのは第六層までなのだ。
今の正式サービスは約一万人が集まってるけど、この人数でもクリアにどのくらいかかってしまうのか...。
そこで、茅場晶彦が、右の白手袋をひらりと動かし、一切感情を感じさせない声で告げた。
『それでは最後に、諸君にとってこの世界が唯一の現実と言う証拠を見せよう。諸君のアイテムストレージに、私からのプレゼントが用意してある。確認してくれたまえ』
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