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八条学園怪異譚

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第三十四話 眼鏡とヘッドホンその十

「一緒にね」
「あの、先輩」
 聖花は茉莉也の今の早飲みと早食いには如何なものかという顔になって突っ込みを入れた。
「今のはちょっと」
「どうしたの?」
「あまり急いで飲んだり食べたりするのは」
「身体に悪いっていうのね」
「はい、よくないですよ」
「消化によくないかわよね」
「気をつけて下さいね、よく噛んでゆっくりとが基本ですから」
 いささか小姑の様に言う。
「本当に」
「わかったわ、そこはね」
「お願いしますね」
 こうしたやり取りも経てだった、三人は境内から出て大学の博士の研究室に向かった、そして研究室に入ると。
 挨拶をしてからだった、茉莉也が博士に尋ねた。
「あの、座敷わらしですけれど」
「あの娘か」
「私達には見えないですよね」
「この学園にいる座敷わらしはそうじゃ」
 その通りだとだ、博士も答える。
「見えんぞ」
「そうですよね、やっぱり」
「それで座敷わらしにまた会いたいのじゃな」
「姿も見えないし声も聞こえないですから」
 どちらも無理だというのだ、博士にこのことも話したのである。
「今度この娘達と保育園の泉の候補地に行こうって思ってますけれど」
「座敷わらしに会えなくてはな」
「寂しいですから」
 茉莉也は実際にそうした顔になって博士に述べた。
「やっぱり」
「それでじゃ、実はじゃ」
「実は?」
「以前から考えておったものがある」
 茉莉也だけでなく愛実と聖花に対しても述べる。
「君達がここに来るまでにな」
「そうだったんですか」
「雨からだったんですか」
「うむ、そうじゃ」
 二人にも述べる。
「丁度いいところに来たのう」
「ううん、いいタイミングだったんですね私達って」
「そうだったんですね」
「そうじゃ、運がいいのう」
 三人に顔を向けても言う。
「では今から出すぞ」
「それってどんなものですか?」
 ここで茉莉也はその博士に尋ねた。
「飲みものですか?飲んだら目と耳が刺激されて見られる様になるとか」
「いや、薬ではない」
 博士は茉莉也の今の言葉は否定した。
「薬は副作用の危険があるから相当な時間を置いて実験を繰り返して開発するものじゃ」
「副作用ですか」
「どんな薬にも副作用の危険はある」
 博士は薬学の権威でもある、だからこうしたこともわかっているのだ。
「だからすぐに開発出来ないからのう」
「すぐにはですか」
「そうじゃ、そうした薬は作っておらん」
 そうだというのだ。
「また別のものじゃよ」
「じゃあその別のものってどんなのですか?」
 茉莉也は愛実と聖花を後ろに置いて博士に訪ねった。
「お薬じゃないっていうと」
「二つある」
「二つですか」
「どっちも身に着けるものじゃ」
「身に?」
「視ることと聴くことじゃ」
 この二つの感覚を使うものだというのだ、つまり視覚と聴覚である。 
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