ストライクウィッチーズ1995~時を越えた出会い~
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第十一話 夜間飛行②
前書き
アイエエエエ! ニンジャ!? ニンジャナンデ!?
・・・変なこと言ってスミマセンm(__)m
未だにルビの振り方がわからなくて困っていたりするヘタレです(´・ω・`;)
誰か教えてちょーだい・・・(泣)
「ネウロイを取り逃がした、だと?」
「間違いないのかしら?」
東の空が白み始める頃、引いては押し寄せる波のような眠気に襲われつつ、和音たち三人はロマーニャ基地へと帰還した。基地に辿り着いたその足で、まずは取り逃がしたネウロイの事を報告すべく司令室へとやって来たのだが、ミーナと坂本は三人がかりで一機のネウロイを取り逃がしたことが信じられない様子だった。
「間違いないんだな? サーニャ」
「はい……微弱でしたが、まだ反応があったと思います……」
「そうか……わかった。あとはこちらで考える。ご苦労だったな」
それっきり、坂本は腕組みをしたまま何やら難しげな表情をして黙り込んでしまう。
ともあれ、報告すべきことは報告したのだ。これで夜間哨戒は終わり、あとは自室に戻って休むだけである。もう何度目かわからない欠伸を噛み殺しながら、和音は司令室を出た。
「じゃ、わたしはサーニャと戻るからナ。お前もきっちり休んどけヨ」
「ふぁい……お疲れ様でした、エイラさん……」
立ったまま舩を漕ぐという器用な芸を披露しながらエイラと別れる和音。
早くベッドに倒れ込みたいが、いつもはなんてことのない自室への道のりが果てしなく遠い。
夜間哨戒とは斯くも過酷なものであったかと、サーニャとエイラに対する畏敬の念を覚えつつ、おぼつかない足取りで部屋に向かう和音。
(三つめの角を曲がって……そう、ここだったはず……)
寝ぼけ眼を擦りつつ、重い気の扉を押し開ける。薄暗い部屋の中だとは言え、ベッドの位置くらいは和音にもわかった。絨毯の上を歩きながら、和音はベッドまでたどり着くと乱暴に服を脱ぎ散らかし、文字通り倒れ込むようにして横になった。
(夕食までには、起きないとな……)
なぜか妙に柔らかくていい匂いのするベッドに体を沈み込ませながら、和音はあっという間に眠りに落ちていった。
ペリーヌ・クロステルマンの朝は早い。
貴族として、また誇り高いガリアのウィッチとして、一日の生活は規則正しくあらねばと思っているからだ。しかし、今朝に限ってはそんな規則正しい目覚めは迎えられそうになかった。
――ガチャリ……
突然、何の前触れもなくドアノブが回ったことに気がついたペリーヌは、サイドテーブルから眼鏡をとって扉の方を見ようとし、いきなり目の前に倒れ込んできた何かに押し倒されてベッドに逆戻りしてしまう。
「な、なんですの!?」
「んぁ……」
慌てたペリーヌが目を凝らすと、其処に居たのはなんと和音であった。
いったいなにをどうしたのか、部屋を間違えているらしい。
「起きなさい沖田さん! ここは私の部屋でしてよ。ああもう、それになんて格好ですの!?」
ペリーヌが怒るのももっともだ。なにしろ目の前でぐっすりと眠りこける和音は、下着にズボン一丁という裸同然の格好なのだ。見れば、部屋の床には乱暴に脱ぎ散らかされた扶桑空軍の制服が転がっている。
「これだから扶桑のウィッチは……」
押しても引いてもビクともしない和音に呆れるペリーヌ。おまけに枕か何かと勘違いしたのか、ペリーヌの体に抱き付いたまま離れようとしない。あまつさえは頬擦りを始める始末だ。これには流石にペリーヌも焦った。いろんな意味で。
「ちょ、何をなさいまして沖田さん!? あ、そこは……んっ……あぅ、どこを……触っていらっしゃいますの!?」
「うぇへへ……」
幸せそうな寝顔のままますます密着してくる和音。こんな細い体の一体どこにこんな力があるのかとペリーヌは不思議がる。
(さすがにまだ朝方は冷えますものね……仕方ありませんわ)
何かを悟ったような表情を浮かべたペリーヌは、空いた片手で毛布を手繰り寄せる。
そう言えば、昨夜は夜間哨戒に出ていたのではなかったか。ならば、多少のことは大目に見てやってもいいだろう、と。
依然として抱き着いたまま離れない和音を苦笑しながら見やるペリーヌは、自分と和音を包むようにそっと毛布を掛けてやった。
「まったく……今日だけでしてよ」
「ぅん……」
返事なのか寝言なのかわからない声を洩らしつつ、毛布の中で丸くなる和音。
ペリーヌは眼鏡をサイドテーブルに戻すと、自身もまた目をつむる。
(たまには二度寝くらい許されますわよね?)
そのまま再び眠りに落ちてゆくペリーヌ。
結局、いつまでたっても起きてこないことを心配した坂本に、和音と抱き合って眠っているところを見られてしまったというのはまた別の話である。
「……何事も程々にな、ペリーヌ」
「ち、違いますわ少佐! 待って、待ってください少佐~~!!」
「はっはっは!! なんだ、部屋を間違えただけだったのか。いやぁ、私はてっきりペリーヌと沖田がそちら側の世界の住人なのかと思ったぞ」
「し、少佐!! それは黙っていてくださいと何度も……!!」
夕食までには起きればいいと思っていた和音だが、体の方は正直なもので、空腹を感じた時にはちょうど昼食時だった。和音は、14年の人生の中でもっとも衝撃的な目覚めを迎えた後、つとめて冷静な風を装って食堂に降りてきたのだが、既に食堂に集まっていた皆から妙に生暖かい視線を浴びせられ、坂本によってネタばらしをされていたことを知ったのだった。
その時の恥ずかしさたるや、顔から火が出るだとかそんなチャチなものではなかった。
部屋を間違えただけならいざ知らず、同じベッドで抱き着いたまま眠っていたなどと……
「申し訳ありませんでした、ペリーヌさん!!!!」
光の速さで魂の土下座モードへ移行する和音。
昼食の味さえ判然とせず、ただただ申し訳なさだけが募るばかりである。
念のために言っておくと、和音は至ってノーマルな人間であり、決して百合の国の妖精さんではない。……まあ、中にはあの有名なカウハバのように、自分の部下をまとめてヴァルハラを築き上げる猛者もいないこともないのだが。
「ま、まあ、間違いは誰にでもある事ですわ。今度から、部屋を間違えないようにしてくださればよくってよ」
「肝に銘じておきます……」
昼ご飯の肉じゃがを口に運びつつ小さくなる和音。なぜかミーナは大変嬉しそうな表情をしているのだが、おそらく気にしてはいけないのだろう。
「さて、昼ご飯が終わって早速だが、今回のネウロイがまたやってこないとも限らない。そこで、夜間哨戒を強化しようと思う」
「割り当ては、サーニャさんとエイラさん、それから沖田さんの三人にお願いするわ。以上三名を、当面夜間専従班とします。いいわね?」
どうやら前もって考えてあったのだろう。搭乗割を手にしながら、ミーナと坂本はそう言った。ということは、今後も和音は夜間哨戒を続けることになるわけだ。
「夜間哨戒は負担が大きい。と、いうわけでだ」
パシィン、と竹刀で床を叩いて坂本が言う。
「お前たちは夜に備えて寝ろ。いいな? これは命令だ」
「え、ええ――――っ!!」
まだ起きたばっかりなのに、という和音のささやかな抵抗が却下されたことは言うまでもない。結局、かき込むようにして昼食を終えた和音は、そのまま自室に引き上げていったのであった。
「まだ起きたばっかりなのに……なにも一日中寝てなくたっていいのにな」
わざわざカーテンまで閉めた暗い部屋の中、ブスくれた和音は枕を抱きかかえてベッドに横になっていた。せっかく起きているのであれば、宮藤やリーネと一緒に手伝いをしていたかったし、ペリーヌとお喋りしていたかったのである。が、命令とあっては仕方がない。
「あーあ、退屈だなぁ」
「――だよナ。その気持ちはよく分かるゾ」
「ですよねぇ……って、ええ!?」
自分一人だけの筈の部屋から聞こえた声に、口から心臓が飛び出るほど驚く和音。
バサッと毛布をめくってみると、そこに居たのはキャミソール一枚のエイラだった。
「ななな、なんて格好してるんですかエイラさん! 服! 服着てください! 色々見えてますから!!」
「恥ずかしがるなヨ!! 女同士なんだから大丈夫だロ?」
「全っ然大丈夫じゃありません!!」
にじり寄ってくるエイラに、次第に壁際に追い詰められていく和音。……なぜか指をワキワキさせているのは、まあそう言う事なのだろう。というか、一体いつの間にこの部屋に侵入したというのだろうか。恐るべきスオムスのウィッチである。
「心配すんなっテ。ちょっと確かめるだけだからサ。……どれどれ、50年後の扶桑の魔女はどんぐらい育ってんダ?」
「や、ちょ、エイラさん……やめ……っ!! あっ……ぁぁ……うぅん……っくぅ!! どこを……触ってるんですかァ!!」
「あ゛~これだから扶桑のウィッチはやめられないんだよナ~」
エイラの魔手に全身をくまなく弄ばれた和音。肌蹴てしまった寝間着の襟元を正しながら、和音は顔を真っ赤にして毛布を頭からひっかぶる。
「……エイラさんて、本当にいやらしい人なんですね。わたし、知りませんでした」
「お、おい、そんなに怒るなっテ。ちょっとしたスキンシップじゃないカ」
ムスッとしてベッドの上で丸くなる和音に、今度はエイラが慌てた。先輩として、可愛い後輩を弄ってやれという悪戯心のなせる業だったのだが、ここまで不機嫌になるとは思っていなかったのだ。エイラにとって、新人の胸を揉むのは朝日が昇るのと同じくらい当然の事だったのである。
「じゃあ同じことをサーニャさんにもしてるんですか!?」
「エッ!? ば、馬鹿!! サーニャにそんなことできるわけないダロ!!」
「ほぉら出来ないんじゃないですか!!」
「そ、そんなことないゾ! 私だっていつかはサーニャの胸を……」
「――エイラ、その話、詳しく聞かせて頂戴」
「「――っ!?!?」」
なぜここでその声がするのか。ギョッとした二人が恐る恐る振り向くと、クローゼットの影からゆらりとサーニャが姿を現す。猫ペンギンのぬいぐるみを抱いたまま立つサーニャは、しかし一種異様な存在感を醸し出している。
「さ、サーニャ……いつからそこに居たんダ……?」
「エイラが沖田さんの胸を揉み始めたあたりから、ずっと」
「最初からいたんじゃないですかっ!!」
北欧のウィッチは不法侵入の技能を学んでいるのだろうか? いや、そんなはずはない。
「坂本少佐から、沖田さんの部屋が夜間専従班の待機部屋だって言われたから……」
「ああ、なるほど……」
力なく頷く和音。そう言う理屈なら仕方がない。
問題は、ガクガクと震えているエイラの方で――
「こ、これはその、違うんだサーニャ。ちゃんと、ゆっくり話し合えば分かるっテ……」
「――そうね、出撃まで時間はたっぷりあるわ。だから……」
ニッコリと微笑んだサーニャは、小さくなって震えるエイラに向けて言った。
「ゆっくり、お話しましょう?」
個性的なウィッチは世界に多くいるが、まさか頭に大きなタンコブを乗っけて空を飛んだことのあるウィッチなどそうはいないだろう。
スオムスが世界に誇るスーパーエース、エイラ・イルマタル・ユーティライネンは、今まさに特大のタンコブを乗っけて夜空を飛んでいるのだった。
「なあサーニャ。悪かったよ……だから機嫌なおしてくれっテ」
「………………」
「うぅ……さ、サーニャぁ……」
「………………」
夜間哨戒を開始してすでに一時間。終始この調子であり、そろそろエイラは涙目である。この間取り逃がしたネウロイが顕れる気配も一向になく、穏やかな(?)雰囲気のまま時間が過ぎていった。
(ほんとにエイラさんてサーニャさんにベッタリなんだなぁ……)
いっそ告白してしまえばいいのに、と思うのは、14歳という多感なお年頃の乙女ならではの思考回路であって、そもそも女所帯のウィッチ部隊では、そちら側の世界へと旅立つ人間も少なくないのだ。もちろん、和音は「自分はノーマル」であると自負している。
(今日は何事もなく終わりそうかな……)
夜間視の連続使用で疲れてきた目を擦りながら、和音はメモ帳に記録をつける。
と、その時だった。
「ん……?」
視界の隅に、何か一瞬煌めくようなものがあった。
遠距離視を発動させ、雲の切れ間を注視する。気のせいかと思って目を離しかけたその時、見間違えるはずもない赤い光が雲の合間を駆け抜けた。
「ネウロイ発見!! 距離3000! 雲の下にいます!!」
「なんだっテ!?」
「魔導針に反応はないのに……!」
三人の間に一気に緊張が走り、サーニャが魔導針に反応がないことを訝しむ。
(まさか、ステルス能力?)
あり得ない話ではない。が、もしそれが本当ならば、夜間戦におけるアドバンテージは完全に向こう側に渡ってしまう。魔導針が頼れない以上、目視による戦闘に切り替えるしかないが、それでは和音以外の二人が大きく不利になってしまう。
「相手はステルス能力持ちかも知れません。注意してください!!」
「クソ、隠れてないで出で来い!!」
いらだちと共にMG42を乱射するエイラ。しかし、中空に残影を刻む曳光弾は雲を貫くばかりでまるで手ごたえがない。
「ダメ、私には感知できないわ」
「そんな……サーニャさんでも無理だなんて……」
こと索敵能力にかけては501部隊でもサーニャは他の追従を許さない。
にもかかわらず、ネウロイ一匹探知できない。予想以上の強敵だった。
「サーニャさん、あの雲に向けてフリーガーハマーをありったけ撃ち込んでください。ネウロイをおびき出します!!」
「わかったわ。エイラ、沖田さんをお願い」
言うが早いかサーニャは雲に向けてロケット砲弾を容赦なく撃ち込む。凄まじい爆炎が辺りを照らし、視界を遮る雲を吹き飛ばす。その途端、遮蔽物を失ったネウロイが飛び出て来た。
「見えたゾ!」
「やっぱり、この間のエイ型ネウロイ!!」
「今よ、エイラ!」
如何なステルス能力持ちとはいえ、目視で捕捉してしまえば恐れることなど何もない。
急加速して距離を詰めた和音とエイラは、逃げ惑うネウロイに向けて容赦なく機銃を打ち込んだ。黒い体表面が弾け飛び、露出したコアが甲高い音を立てて砕け散る。今度こそ、確実にネウロイを仕留めることに成功したのだ。
「ネウロイの反応、完全に消滅……やったわ」
「ふぅ、危ないところだったゾ」
「そうですね、ミーナ隊長に報告するべきでしょう」
再び静まり返った空を、三人は基地に向けて飛行していく。
頭上にうかぶ満月が、その背中を優しく見守っていた――
後書き
ナイトウィッチだからね。部屋を間違えるのは仕方ないね。
・・・ところで北欧の国では同性婚を認めてるところが多いって知ってました?
(・x・;)<ナ、ナンダッテー!?
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