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万華鏡

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第三十三話 合宿の終わりその十

「だからね」
「じゃあ黒猫もなの」
「猫全体がね、物凄く殺されたのよ」
「酷い話ね」
「それで鼠を捕まえる猫がいなくなって」  
 話は魔女狩りに留まらなかった、話はそれだけで終わらない場合も多いがこの猫への迫害もまた然りであったのだ。
「それでね」
「どうなったの?」
「ペストが流行ったのよ」
「あっ、中学の社会の授業で習ったわ」
 歴史の授業でだ。
「黒死病っていうのよね」
「そう、その病気が流行ったのよ」
 ペストは鼠に寄生しているダニに噛まれることからなる病気だ、当時の欧州は街の道の端にゴミや汚物を捨てていたのでそこに鼠が徘徊していたのだ。
「天敵の猫がいなくなってね」
「怖い話ね」
「私も猫好きだし」
 里香も琴乃の横に来ている、それで彼女と同じ様に手を出しながら言うのだ。
「そうしたことってね」
「酷いと思うのね」
「猫はずっと傍にいて欲しいって思うわ」
 そこまで好きだというのだ。
「それこそ何十年もね」
「何十年って」
 景子は里香の今の言葉を聞いて苦笑いをした。
「それだけ生きたら凄いわよ」
「妖怪になるのよね」
「猫又にね」
 尻尾が二本あるこの妖怪にだというのだ。
「なるわよ」
「あれ本当にそうなるの?」
「そういう話は聞いたことがあるわ」
 景子にしてもだというのだ。
「この目で見たことはないけれど」
「猫又って本当に」
「妖怪自体がね」
 いるというのだ。
「うちの学校そういう話で一杯だし」
「猫又もひょっとしたら」
「いるかも」
「まさかと思うけれどね」
 流石に妖怪が普通にいるとは思えない、だがそれでもだった。
 景子は結構真剣な顔でこう四人に言った。
「いてもね」
「可能性は否定出来ないのね」
「やっぱり」
「学校には本当にそういう存在がいるから」
 だからだというのだ。
「私はそういう霊感とかないけれど」
「ある人はあるから」
「そういう人から聞けばなのね」
「学校の中に神社あるじゃない」
 仏教のお寺にキリスト教や天理教の教会もある。天理教は日本の宗教だがそうした施設は教会と呼ばれているのだ。
「あそこの娘さんだけれど」
「確か二年の人よね」
「凄い酒豪で女の子大好きなのよね」
「そう、あの人はかなり強い霊感があるから」
「あの人が言うのね」
「八条学園に妖怪や幽霊がいるって」
「そう、言ってるの」
 実際そうだというのだ。
「あの人がね」
「青木さんだったよな」
 美優が景子にその神社の二年の先輩の名前を問うた。 
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