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万華鏡

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第三十三話 合宿の終わりその九

「原爆資料館の周りなんか凄いのよ」
「ああ、あそこ公園だからね」
 彩夏が里香のその話に応えた。
「多いわよね、確かに」
「白い鳩じゃないけれどね」
 その公園にいるのはごく普通の鳩だ、尚餌も売っていてそれをやるとそれこそ何十羽も来てねだってくる。
「かなりいるわよ」
「それで白い鳩もかしら」
「そうかもね」
「縁起いいよな」 
 美優はその鳥を見ながら笑顔で言った、
「白い鳥ってな」
「そうそう、白い鳥は縁起いいのよね」
 景子は神社の娘として美優に笑顔で応えた。
「神道でもね、白い動物は神様の使いって言われてるし」
「白蛇とかだよな」
「白鹿とかね。白鳩もね」
「あれってあれだよな、つまりは」
「「そう、アルビノだけれどね」
 生物学的な言葉ではこうなる、所謂白子だ。
「たまにいるのよ。犬や猫だったら普通だけれど」
「白犬や白猫も縁起いいんだな」
「そうなるのよ、神道だとね」
「じゃあの鳥を見たこともか」
「縁起いいと思うわ。何かいいことがあればいいわね」
「そうだよな」
 美優は景子の話に笑顔のまま応えた、そしてだった。
 広島城の次は車工場だった、自動車で行き来する程の広い工場の中に入ると。
 黒猫がいた、丁度工場の脇で気持ちよさそうに寝そべっている。美優はその黒猫を見ても笑顔になった。
 それでだ、その笑顔で四人にこう言ったのだ。
「これもな」
「縁起いいわよね」
「黒猫もね」
「いいよな、商売繁盛でな」
 その寝ている猫を見ながら気持ちよさそうに言う。
「黒猫はさ」
「黒猫って佐賀じゃ嫌われるっていうけれど」
 琴乃は黒猫の傍に腰を屈めた、それで右手を出しながら話した。
「大阪だと違うからね」
「福を招くのよ」
 景子はここでも話した、今度は黒猫だった。
「具体的にはお金ね」
「そう言われてるわよね」
「そう、大阪ではそう言われてるのよ」
「だから私黒猫も好きだけれど」
 それでもだと、琴乃は黒猫が佐賀では嫌われていることについては残念そうな顔で言うのだった。
「化け猫とかってね」
「佐賀は化け猫の話があるからね」
「あれよね、鍋島家のよね」
「そう、それよ」
 それの話である、実際にあったかどうかは不明であるがだ。
「今はどうかわからないけれど昔はね」
「佐賀で黒猫は嫌われていたのね」
「そう聞いてるわ。私は佐賀には行ったことがないけれど」
 それでもだというのだ。
「その話は聞いたわ」
「縁起いいし可愛いのに」
 琴乃は残念そうに言った。
「おかしいわよね」
「欧州だと魔女の使い魔って言われてたしね」
「魔女ねえ」
「あそこは本当に魔女狩りとかしていたから」
 何十万も犠牲になったと言われている、その頃の欧州が暗黒時代と言われていたのはこのことと異端審問によるところが大きい。 
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