【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス
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役者は踊る
第二七幕 「理解できなくても納得すべし」
前書き
この話はねぇ・・・いま読み返しても何がしたかったのかよく分かんない回なんだぁ・・・
前回のあらすじ:担任と先輩が仲良く世紀末だった件
アンノウンが撃破された直後、アリーナのコントロールが戻ってきた。隔壁のロックも遮断バリアも解除され、無事全員が無傷で脱出を終えたのであった。
が、もちろんそこで話は終わらない。
「いいかお前たち。あの中で見たことは私の許可があるまで他人には口外するな。これは命令だ」
あの戦いに巻き込まれた全員を前に千冬はそう言った。理由は簡単、あのアンノウンの情報を世間に公開すれば社会の不安を不用に煽ることとなるからだ、と説明した。
実際にはこれにはもっと複雑な事情がある。
ISの要となるISコアは、現在アラスカ条約によりIS委員会が承認している467個しかない(・・・事になっている)。ISのコアはそれぞれが相互情報交換のためのデータ通信ネットワークを持っており、理屈の上では地上にある全てのISコアの状況を確かめることが出来る(・・・例外を除いて)。だがアンノウンのコア(2つあった)は未確認、未認証のコアが使われていた。千冬は今回のアンノウンを差し向けた人物に心当たりがあった。もしも彼女の予想が正しければ、この一件は発表するだけ無駄である。
全ては、あのアンノウンの残骸を調べてからだ。
その思考をいったん区切った千冬は表情を切り替え、険しい目つきで4人の生徒を睨む。そこからは明らかに怒気楽譜まれており、その4人の背筋が自然と伸びる。
「・・・さて、状況が状況とはいえ・・・残間弟、凰、更識・・・そして一夏」
「「「「・・・はい」」」」
「・・・この馬鹿者共がっ!!得体の知れない相手に正面から戦った挙句2度も油断して自分の命を危険に晒しおって・・・会場の人間の命を助けようとしたことが間違いだとは言わん。だがそれは実力が伴った人間がやるものだ!」
「「「「・・・すいません」」」」
千冬の怒声に4人は心を沈ませる。全く以て反論できないと自覚しているからだ。
事実、千冬とジョウが一夏と共にあの場に居なかったら、3人はどうなっていたか分からない。一夏も敵を倒したと油断したせいで余計な手を煩わせることとなったため、反論せずに素直にうなずいている。
「・・・分かればいい。今後無茶な行動は控えるように!それと、2日後までに4人とも反省文10枚を書いて私に提出しろ」
有無を言わさぬ態度でそう言い終えた千冬は、今度は佐藤さんの方に首を向ける。
「・・・そして佐藤」
「は、はいぃ!!」
佐藤さんはビクッと肩を揺らしながら千冬と向き合う。千冬の険しい顔に佐藤さんの顔色は悪くなり、ガチガチに体が固まる。精神年齢で四十路に届いている佐藤さんだが流石に天下のブリュンヒルデ相手では分が悪い。
―――やば・・・あのインカム持ってたせいで怪しまれた!?いやそれとも隠れずにぼっ立ちしてたのがまずかったか!?いやいやそれとも勝手に現場に口出ししたのが・・・結果的に簪ちゃん嗾けちゃったし!?
佐藤さんの脳裏に“これ良く考えたら問題行動だよね”という自分の行動リストが高速で流れていく。
改めて目の前の織斑先生を見る。
―――・・・プ、プレッシャーがパネェ。絶対怒られるわこれ。世界最強を怒らせた人間の末路は・・・うん、死しか見えないね。パトッてティウンしてフェイタルケーオーのアストラルフィニッシュな上にテーレッテーだね。
あっちの4人は物理的にそうせざるを得ない状況だから許されたけど(あとワンサマーによって身内補正が掛かったのかもしれない)、私はそうでもないから言い逃れできない。ヤメロー!シニタクナーイ!!
・・・あ、先生の黄金の右腕がゆっくり上に上がっていく。あれでビンタ喰らったら頭もげるかな?母さんゴメンなさい、貴方の愛娘の稔はもうだめかもわからんです・・・私が死んだら葬式では出棺の際にししょーの名曲「ロタティニオン」で送ってください・・・あ、遺書書き忘れた。
この間約2秒である。佐藤さんは次に襲いくるであろう衝撃に備え目を閉じた。・・・が、予想した衝撃は来ず、代わりに頭を撫でられるような温かい感触が広がる。何事かとゆっくり目を開けた佐藤さん。その目に映ったのは―――
「・・・よくやった。監視室が通信を送れない中、よく他の連中を支えてくれた。お前の指示や正確な情報伝達がなければ、この中から死者が出ていたかもしれん」
「・・・・・・ほぇ?あ、ありがとうございます」
あ、あれ?とても朗らかな笑顔をしていらっしゃる・・・まるで菩薩のようやでぇ・・・
これはヤバいねぇ、そんな顔で褒められたら女でも一発で落とせそうだ。普段ツンツンしてるだけあって、デレの破壊力が53万である。今だけ先生を様付で呼んでる子たちの心が理解できる。笑顔は一瞬だったが貴重な映像だったので脳内の永久保存フォルダに放り込んでおこう。(ちなみに家族以外で永久保存フォルダに入れた人物はベル君に続いて2人目だ)
「佐藤さんいーなー羨ましーなー!!」
「え、笑顔の千冬様にナデナデ・・・っ!!ブハァッ!!」
「鼻血吹いて失神した!?しっかりしろ、傷は浅いぞーー!!」
「私あのなでなでされたら多分一片の悔いも残らず死ねるわ!!」
「馬・・・鹿、な・・・馬鹿な馬鹿な!織斑先生がデレるなんてそんな馬鹿な事があるか!」
「あの千冬姉をデレさせるなんて・・・流石佐藤さん!俺達に出来ないことを平然とやってのける!!」
「そこにシビれて憧れるぅ!!佐藤さんパネェっす!!」
「・・・反省文の枚数を10倍に増やしてやろうか?」
「「「「すいません何でもないです」」」」
馬鹿数名の暴走があったもののこれにて無事に話は終了・・・
「じゃなーーーーーい!!」
「うお!?どうしたんですか山田先生!?」
さっきまでいなかった山田先生が現れ、異議を唱え始めた。眼鏡が若干ずれており、どうやら急いでこちらに来たようだ。
「私は一つ、どうしても納得いかない件がまだ残っていると思います!!」
「・・・なんかあったっけ?」
「・・・さあ?」
「・・・もしかして、合体攻撃の、件!?」
「違います!それも個人的にはひっじょーに気になりますがそれじゃありません!!」
若干涙目になりながら両腕をぶんぶん振り回す山田先生。腕を振るたびに胸元の戦闘能力の塊がブルンブルンと震えて周囲を戦慄させている。一夏はガン見しすぎてすぎて鈴に盛大に抓られているが。
「で、何が問題なんですか?」
「何って・・・ジョウ君ですよ!」
「ジョウさんが何か?」
「兄が何か?」
「俺がどうかしたか?」
「どうかしたかじゃないですよ!!何で生身で現場に赴いたんですか!あなた訓練機借りてたでしょ!?というか何で織斑先生は普通にジョウ君を連れて行ったんですか!?」
「「「「・・・あ、ああ!!」」」」
言われてみれば確かに。何がおかしいのかはイマイチ分からないが確かに何かがおかしい。
一つずつ整理してみると・・・
①先生、白式でバリアを突破するという方法を思いつく。
②打鉄のブレードをぶんどる。
③生身のまま自分が直々についていくと言い出す。
④何故かジョウを生身のまま連れて行く。
⑤未確認ISぶった切った。
「1つ目以外全部おかしくね!?」
「3番目に違和感覚えなかった私はおかしいのかな?」
「この際それは置いておいて、です!織斑先生は何故危険と分かる場所にわざわざ私たち教師ではなく生徒の一人であるジョウ君を連れて行ったんですか!!」
言われてみれば変な話である。千冬は生徒には平等に接することを信条としており、危険なことに生徒は関わるべきではないというスタンスを持っている。その千冬がなぜジョウを現場に連れて行き、しかも訓練機を持っているにもかかわらず装着させなかったのか。
「・・・まず、なぜ残間兄を現場に連れて行ったかだが」
「はい」
「冷静な風を装ってはいたが、あの時の残間は弟を助けに行きたくて爆発しそうな状態だった。置いていけば何をやらかすか分からんから連れて行った」
一同はあの中庭一騎打ち事件を思い出し、それのIS版を同時に思い浮かべた。・・・とてもではないが止められる気がしない。脳内再生余裕でした。制圧部隊相手に無双するとか本末転倒もいいところだ。
「・・・確かに。後から来ていた楯無会長も随分暴れたそうですし?」
「・・・・・・後で説教」
簪の中での会長の株価が急降下して地表に大激突(仲が改善してからは比較的よくあることになった)。顔を見せないと思ったらそういう事だったのかあの会長。捕縛はさぞ大変だったろう。
「そして何故ISを装着させなかったかだが・・・どうも打鉄が残間の身体能力についていけない、つまりデッドウェイトになっていたからだ」
「なるほど~・・・えっ」
ちょっと待てやコラ。この戦乙女、今なんつった。周囲の顔が思いっきり引き攣る。
インフィニット・ストラトスは現行最強の兵器とも称される飛行パワードスーツだ。しかも、視覚情報の処理速度を向上させる“脳波コントロールできる!!”と言われても納得なハイパーセンサーの採用によって、下手なPCよりも早く思考と判断ができ実行へと移せるという凄いシステムが積んである。
これは“ISの高すぎるポテンシャルを人間の尺度に合わせる”という重要な働きを持っている。そう、「人間に合わせる」のだ。重要な事なので2回言わせてもらった。ISは全てにおいて人間より性能が上なのだ、普通は。
さて、打鉄は2世代の訓練機とはいえバリバリ現役のISだ。いくらパイロットが優秀でも反応速度に機体が追い付かないなんてことは極一部の例外を除いて起こらない。例外とはすなわちモンドグロッソで部門優勝しちゃう「ヴァルキリー」と呼ばれるレベルの人外共である(総合優勝がブリュンヒルデの称号を得るのは説明するまでもない)。
「すみません。こんなことを聞くのは失礼かと思うんですが・・・残間君は本当に人間なんですか?」
「ふむ。DNA鑑定をしないとはっきりしないが、ひょっとして突然変異種かもしれんな?男、女、承章みたいな風に」
「ちょっと千冬先生?俺は天才ですけど人外になった覚えはねぇしニューハーフみたいな立ち位置になった覚えも・・・っていうかアンタも同じ穴のムジナだろ!」
「なるほど、これはWikiで変異パラメーターを再チェックする必要が・・・」
「ツルハシで上手く間引いたら誕生するんですねわかります!」
「おいコラ!俺はダンジョンに湧いて出る魔物か!人だよ!紛う事なき人だよ!!」
「・・・なるほど、実はジョウさんは特殊召喚された融合モンスターだったのか!」
「織斑君、それ禁止カードだから」
「お前らぁぁぁ!いい加減にしないと泣くぞ!?それ以上言われると流石の俺も泣いちゃうぞ!?俺の血の色はちゃんと赤だからな!?」
「・・・ハッ!!ユウ君の夢って兄を越える事だったよね!?」
ジョウの兄弟=ユウにも突然変異発生の可能性あり=ユウも人外化という方程式が組み上がったメンツの顔色が変わる。
「だ、駄目だよユウくん!無理に上を目指す必要はないよ!?」
「そうだよ!世界に一つだけのそのままのキミでいて!!」
「み、皆落ちつい・・・ちょっとぉ!?」
人外魔境へ旅立とうとするユウは説得する女子達にもみくちゃにされる。さり気なくお尻を触っている奴がいる辺りこの学園も末期かもしれない。
比較的まともながら戦闘ではちょっとアレな姿を見せるユウ。ジョウほどではないだろうが突然変異が起きている可能性は十分ある。これ以上の人外は必要ないと言わんばかりの光景にジョウは「弟にべたべた触れるのは兄の特権だー!!」と何気に危ない発言と共にユウの元へダイブしていった。
「・・・で、何を話してたんだっけ?」
「さぁな。だが忘れてしまったという事は大したことではなかったのだろう・・・さあ、暴れていないで解散だ!!」
あれだけの事件があろうと今日もIS学園は平常運転です。
なお、結局話は「千冬とジョウが生身でISを破壊した件も黙っておく」ということになった。ある意味こっちの方が大事件だし。
後書き
千冬さんが段々投げやりになる回でした
ヽFuFuHaHaHa!! /
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○」\
ノ|
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