季節の変わり目
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和谷とヒカル
「え、ネット碁?お前まだやってたんだ」
「ああ、そんでそいつまだ院生レベルだけど、どんどん強くなってきてるんだ」
「へえ、じゃあ院生じゃねえの?」
「そうかもなあ、ま、今度会う約束したし、その時分かるさ」
手合いの昼休みの間を縫って、進藤ヒカルと和谷義高は、近くのラーメン屋のカウンター席に腰を下ろしていた。ヒカルの強引な誘いの甲斐あってなのか、カツ丼派の和谷はついに折れてしまった。今回合わせて、これで連続3回もヒカルの主張を受け入れた気がする。溜め息でもつきたいもんだ。
「はあ!?お前、誰なのかも知らねえネットの相手と会うってのかよ!」
店内は中年の会社員や家族連れで賑わっていて、ヒカルのその声はそんなに響かなかった。
「なんだよ、悪いかよ。それに相手は高校生だし、大丈夫だってば」
ラーメンから口を離して、和谷に噛みつくヒカル。
「おまっ、最近は年齢詐称とかあんだからな」
「お前がそんなに用心深いって意外だな」
和谷はヒカルならそんなことは気にもせず、ラーメンを頬張り続けるかと思っていたのだ。
「常識。そんなんじゃいつか騙されるぞ」
氷だけになったグラスに水を汲んで、そのまま一気にヒカルは飲み干した。そんなヒカルを見て、和谷はふと思いつく。
「じゃあさ、進藤も来ればいいじゃん。それなら安心だろ?」
「はあ?」
冗談だろ、そう思った。こいつはいつも突拍子がない。俺を見る目は何か自信に満ち溢れている。断ろうと思った手前、こう言われた。
「おれ、カツ丼が食べたかったんだよな」
「・・・」
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